Column
SOA環境に欠かせない「データマッピング」とは?
手作業でのマッピング作業では把握し切れないほど複雑化した企業のシステム環境。こうした環境での複雑なアプリケーションやその関連コンポーネント間の関係を自動的に監視し、表示する「データマッピング」について解説する。
サービス指向アーキテクチャ(SOA)によってITリソースの柔軟性は高まったものの、一方で大量の複合アプリケーションが生み出された。また、サーバクラスタにより、1つのアプリケーションの提供に使用するサーバの台数が増え、仮想マシンのプロビジョニングにより、ハードウェアの境界ははっきりしなくなってきている。
こうした環境での複雑なアプリケーションやその関連コンポーネント間の関係を自動的に監視し、表示するのがデータマッピングツールだ。
ここでは、データマッピングとはどういうものか、どんな提供ベンダーがあるのか、どう活用されており、そのメリットは何かを解説する。
最近では、複雑なアプリケーションやその関連コンポーネント間の関係を自動的に監視し、表示するソフトウェア(アプリケーション相互依存関係マッピングと呼ばれる)が、IT管理者にとって必須のダッシュボード機能となりつつある。
データマッピングとは何か?
かつて、アプリケーションのマッピング作業はマイクロソフトのVisioのようなグラフィックツールを使ったダイアグラムやドラッグ&ドロップ式のネットワークマップを介して、手作業で行われていた。だが最近では、各種の複雑な新技術の登場に伴い、アプリケーションとITリソースとの関係を記録する作業は徐々に難しいものになってきている。
また、サービス指向アーキテクチャ(SOA)によってITリソースの柔軟性は高まったものの、SOAはその一方で大量の複合アプリケーション――ハードウェア、アプリケーション、ミドルウェアが複数層にわたって組み合わされた共有アーキテクチャに依存するプログラム――を生み出した。また、サーバクラスタにより、1つのアプリケーションの提供に使用するサーバの台数が増え、仮想マシンのプロビジョニングにより、ハードウェアの境界は曖昧になってきている。
新興の管理ソリューションベンダー、インテグリーンのアル・アイサイアンCEOによると、システム管理で重要なのは適用範囲だ。「鎖全体の強度は最ももろいつなぎ目の強度以上にはならない。当社のソリューションでは、顧客のシステムがどのようになっているか、つまりそのシステムの相互依存性を示せる。企業は自社のシステムのさまざまな要素が各層間をどのように行き来しているかを把握する必要がある」
データマッピングを提供しているベンダーは?
ITリソースマッピングソフトウェアの分野は新興の専門企業のほか、大手システムベンダーの参入により、急速な成長を続けている。
IBMは最近、コレーションを買収し、アプリケーションマッピング市場に参入した。コレーションのツールを使えば、ITスタッフは変更の影響(セキュリティパッチをあてることで不測の問題の「ドミノ効果」が生じる可能性など)をより的確に把握でき、問題を発見して修正するまでの時間を短縮できる。
データのディスカバリとマッピングにフォーカスした製品を提供しているのは、コレーションだけではない。BMCソフトウェア、コンピュータアソシエイツ、レリコア、タイドウェイシステムズ、インテグリーンなどの企業が同様の製品を提供している。
パンディットリサーチの主任アナリスト、チャールズ・キング氏によれば、大規模なIT部門を抱えるデータセンターの管理者は今後、こうした小規模企業のいずれかが提供するアプリケーション管理ソフトウェアを既存のシステム管理インフラに実装するためのリソースと専門知識を備えることになる。
「自分の車を修理するための工具を買うようなものだ。また、IBMやHP、サンなどのシステムベンダーにとっては、企業顧客の手間を軽減させるための重要なツールセットになる」と同氏。
ITプロたちはどう利用しているのか?
キング氏によれば、この技術を最も必要としているのは、複雑なシステムを備え、新技術への投資を行っている大企業のITプロフェッショナルだ。移動体通信技術大手クアルコムの大規模な事業部門の1つでチーフアーキテクトを務めるアービン・ギドワニ氏も、そうしたITプロフェッショナルの1人と言える。
ギドワニ氏によれば、同氏が率いるIT部門でこの市場のベンダー数社の製品をレビューした結果、インテグリーンの迅速な導入と使い勝手の良さに引かれたという。
「われわれはダッシュボード機能のほか、すべてのアプリケーションにわたる相互依存マッピングを必要としていた。われわれのところには、既製アプリケーションにサポートされたコアなビジネスプロセスが75~80種類程度あり、そのすべてが各種のハードウェア上で動作している。なかには、当社のインフラの外部で動作しているものもある。われわれは、こうした動きを全層にわたって追跡する必要があった」と同氏は語っている。
ギドワニ氏によれば、これは現在多くの企業が直面している問題だ。同氏の部門には、サーバ、ストレージ、ネットワーキングデバイスなど、同氏の事業部門のすべてのハードウェアを管理する責任がある。そして、同氏の顧客、つまりクアルコム社内のITユーザーに対するサービスレベル契約を追跡するためには、エンタープライズモニタリングツールが重要となる。
「われわれはTivoli、Concord、Openview、Topazなどのシステム管理ツールを使っており、そのすべてにニッチな守備範囲がある。だがわれわれには、エンタープライズの概要を提供してくれるダッシュボードが必要だった。われわれはConcordを使って物理システムに情報をのせていたが、このツールでは、システムが稼働していることは把握できても、アプリケーション層の中を見ることはできなかった。状況が悪化したことは分かっても、その理由を把握することはできなかった」とギドワニ氏。
ギドワニ氏はインテグリーンのソリューションに感心し、この製品をテストから導入段階へと移行するつもりでいるが、その前にまだ、オラクル製品とのより緊密な統合など、インテグリーンに確認すべき項目が幾つか残っているという。ただし同氏は、特に同氏の組織の規模を考えれば、インテグリーンが彼の優先項目を満たしてくれるものと期待している。
「わたしは妥協を許さないマネジャーだ。要求も非常にシビアだ。ITベンダー各社が売り込みにきても、30秒後には退散していくのが常だった。だが、インテグリーンには見込みがあった。同社の製品は明確な情報を与えてくれる」とギドワニ氏は語っている。
メリットは?
アイサイアン氏によれば、今日のIT環境には動的要素が多数含まれているため、手作業での処理が難しい。アプリケーションやサービスは非常に多数のコンポーネントに依存しているため、信頼性に欠け、問題の追跡に何時間もかかる場合が少なくない。
また、各種のミドルウェア、ソフトウェア、ハードウェアが大量に存在し、すべてが同一の重要なITサービスにかかわっている。だがIT部門は、相互依存を自動的にマッピングすれば、時間を節約し、そうしたシステムのバックアップと稼働を容易に行える。
さらには、疎結合のアプリケーション間で機能が衝突し、相互に悪影響を及ぼす場合もある。また、OSやソフトウェアのアップグレードがITシステムに影響を及ぼす可能性もあるが、そうした問題は得てして分析が非常に難しい。
多くのITプロフェッショナルが管理が難しいと感じているアプリケーションの1つにCitrixがある。Webを介してWindowsアプリケーションを実行するプログラムだ。
例えば、Citrixを使っている企業は、インテグリーンが「ブラックホール問題」と呼んでいる状況に直面する場合がある。ユーザーがCitrixを介してアプリケーションにログインしようとすると、負荷分散装置はそのリクエストを、未処理の呼び出し要求の数が最も少ないCitrixシステムに割り当てる。だが、そのシステムはデッドアプリケーションの場合もある。インテグリーンによると、アプリケーションマッピングツールを使わなければ、こうした問題を見つけるのに何時間もかかる場合もあるという。
「わたしは管理が難しいからとCitrixに難癖を付けるつもりはない。問題は、その上に置かれているアプリケーションだ。システム要件にかかわらず、ヘビーなトランザクションレベルのアプリケーションを稼働させている人が非常に多い。当社では3000人のユーザーがCitrixを利用し、問題は発生する都度解消している。ただし、自分が実装しようとしている技術については理解しておくことが重要だ。さもなければ、後々、問題を抱えることになるだろう」とギドワニ氏。
IT企業にとってもう1つ問題となるのは、自らのリソースに対して以前ほどコントロールが利かなくなっている点だ。
「もはや、あなたの組織のデータセンターはあなたの組織のデータセンターとはいえない。ファイアウォールの外部にある要素にも依存しているからだ。例えば、顧客は3年前に退職したコンサルタントが開発したアプリケーションで問題を抱えているかもしれない。そのアプリケーションにさらにハードウェアを追加するわけにはいかない」とアイサイアン氏は語っている。
(この記事は2006年1月3日に掲載されたものを翻訳しました。)
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