Column
オフショアリングに負けないITプロフェッショナルになるために!
最近のフォードの例のように、従業員のレイオフや業務のオフショアリングを行う企業が増えている。コラムニストのジェームズ・チャンピー氏が、どうすれば会社の競争力に貢献できるかをITプロフェッショナルにアドバイスする。
米国の雇用喪失の元凶は低コストな海外労働力を利用するオフショアリングだと見る向きもあるがそうではない。先ごろ3万人のレイオフを敢行したフォードなどの米国メーカーは、品質、価格、製品の面で競争力の維持に失敗したにすぎないのだ。フォードは1908年にT型フォードを市場に出して以来、単一製品を軸にした戦略に頑固に固執してきた。顧客が最上の製品とサービスを求めて世界中のメーカーと付き合う今日、こうした誤った戦略に固執することは致命的なミスとなる。
ITプロフェッショナルは、このように以前よりオープンで激しい競争の犠牲になっていると感じているかもしれない。しかし、構造的かつ経済的な激しい変化に対する防衛策を立てようとするのは間違いだろう。ITプロフェッショナルは、どうすれば自社のビジネス競争に役立つことができるかを、これまで以上に追求しなければならない。
フォードモーターが先ごろ3万人の従業員の追加レイオフを発表したことで、多くの米国企業の間に懸念が広がった。フォードでさえ雇用が不安定なら、自分の職も危ういのではと労働者は心配になった。IT部門では、こうした心配は多くの場合、業務がアウトソーシングやオフショアリングの対象になるのかどうかをめぐって生じる。
低コストな海外労働力を利用するオフショアリングは、米国の雇用喪失の元凶と見られることが多い。だが米国企業の雇用削減は、ほかの国のコストが低いことによるものではなく、企業の競争力にかかわる問題だ。フォードの苦境の原因は、海外の安価な労働力ではない。フォードなどの米国メーカーは、品質、価格、製品の面で競争力の維持に失敗したにすぎない。フォードは1908年にT型フォードを市場に出して以来、単一製品を軸にした戦略に頑固に固執してきた。同社の今のビジネスはSUVが頼りだ。だが、ガソリン価格の高騰でこの製品は苦戦している。
一方、GMは常に逆の間違いを犯してきた。製品が多過ぎるのだ。GMはアルフレッド・スローン氏によって20世紀の前半に導入されたビジネスモデルに執着している。あらゆる嗜好(しこう)層や収入層向けに多様なモデルをラインアップすれば、顧客を獲得できるというものだ。だが残念ながら、競争が激しくなり、こうした多大なコストが掛かる戦略は通用しなくなった。顧客は最上の製品とサービスを求めて、世界のどの国のどのメーカーとも付き合う。
ITプロフェッショナルは、以前よりオープンで激しい競争の犠牲になっていると感じているかもしれない。熟練度の高い労働力、とりわけIT分野のそうした労働力の新しい供給源が登場し、どこにあるどの企業でも利用することが可能になっている。しかし、構造的かつ経済的な激しい変化に対する防衛策を立てようとするのは間違いだろう。自分の身が本当に守られるかどうかは、競争力と、会社がこの壁のない“フラットな世界”の中でスタンスをどのように見直すかにのみかかっている。となると、IT部門も自らのスタンスを見直さなければならない。そして、どうすれば自社のビジネス競争に役立つことができるかを、これまで以上に追求しなければならない。たとえ現在は内向きの業務が中心で、自社の顧客との距離が遠いと感じているとしてもだ。
また一方では、個人としては仕事で優れた実績を上げていたとしても、会社の業績が芳しくなければ、職が危うくなってしまうという厳しい現実もある。では、どうすれば自社の競争力に貢献できるのか。
まず、競争力には価格と価値という2つの側面があることを認識しよう。IT部門はしばしば、技術の活用による効率向上とコスト削減にのみ力を入れるという誤りを犯す。彼らが価値――顧客から見た価値――の創造に力を入れることはめったにない。
また、IT部門は、社内の人々や部門を自らの「顧客」と考えるという誤りも犯す。企業の本当の顧客は、社外にしか存在しない。ITプロフェッショナルは、ITリソースが自社の販売する商品やサービスの品質や価値をどれだけ高めているかに注意を払うべきだ。本当の顧客が体験する価値と品質を高めることが、自社の競争力に貢献することになる。
現在、ITプロフェッショナルの仕事は、顧客体験と自社の商品やサービスの価値をこれまで以上に左右するようになっている。ほとんどの顧客は購入プロセスのどこかで何らかの電子トランザクションを行うからだ。わたしが経験した例では、ワシントンミューチュアル銀行でアパートのローンを借り換えたとき、ジェットブルー航空を利用したとき、アマゾンで書籍を検索したとき、遠くのオークション会社に絵画について問い合わせたとき、といった具合だ。わたしが利用したシステムや手続きはどれも洗練されたもので、優れた顧客体験を提供していた。これらのトランザクションではいずれも価値が実現されていて、わたしはこれらの会社は、今日のグローバル経済の中で生き残り、成長する準備が整った本物の競争者だと思った。
ITプロフェッショナルが自社の競争力を高めるためにできることを1つ挙げるとすれば、それは自社と顧客との電子的インタフェースの品質を高めることだ。今では、顧客はこれを通して企業と向き合い、やりとりをする。このため、市場での自社の差別化につながらないレガシーシステムの保守に投入しているリソースの一部を、顧客と接するこうした電子窓口に振り向けなければならない。顧客との電子的なやりとりをどのようなものにするかは、競争力向上のために新たな工夫を加える余地のある数少ないことの1つかもしれない。
フォードは、誤った戦略に固執することは、雇用を維持する道ではないという悲しい教訓を教えてくれる。雇用を守り、創出するのは、変革と競争力なのである。
本稿筆者のジェームズ・チャンピー氏は、ペロー・システムズのコンサルティング部門会長兼同社戦略責任者。また、ベストセラーの『Reengineering the Corporation』(邦訳:リエンジニアリング革命―企業を根本から変える業務革新/日本経済新聞社)、『Reengineering Management』(邦訳:限界なき企業革新―経営リエンジニアリングの衝撃/ダイヤモンド社)、『The Arc of Ambition』、『X-Engineering the Corporation』の著者でもある。
(この記事は2006年1月31日に掲載されたものを翻訳しました。)
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