LotusDay 2006:基調講演速報
SOAが変える、リッチクライアントが変える、Lotusが変える企業の未来
7月12日から28日、全国6都市で「LotusDay 2006」が開催された。このイベントは、IBMのLotus製品に関するもので、スポンサー17社と共に、さまざまな展示やセッションが行われた。イノベーションを実現するには何が必要なのか、変化のためのSOAがなぜ有効なのかなど、興味深いテーマが並んだ。
半数近いシェアを持つLotus製品がさらに増加中
7月12日から28日にかけて、全国6都市の会場で開催された「LotusDay 2006」。今回は「SOAが変える、リッチクライアントが変える、Lotusが変える企業の未来」と題して、Lotus、Domino製品やこれらを活用したビジネスパートナーによるソリューションが展示やセッションなどで紹介された。基調講演は、日本アイ・ビー・エムのLotus事業部長である澤田 千尋氏、テクニカル・セールス・サポート技術理事である関 孝則氏が登場した。今回は基調講演速報として、澤田氏の講演内容を紹介する。
澤田氏はまず、Lotus NotesおよびDominoのビジネスが世界的に好調であることを説明した。NotesおよびDominoは3期連続で2桁の成長を続けており、マーケットシェアも拡大している。世界で1億2,500万以上、日本では約1割となる1,200万以上のユーザーが利用している。最近の傾向で特に顕著なのは、他社競合製品からの乗り換えで、2005年の1年間で1,319件がNotesおよびDominoに移行したという。
日本でのシェアは、「もっとも現実に近いと思われる数値」として富士キメラ総研の「2005年グループウェアの国内シェア」の資料を掲出した。これによると、日本アイ・ビー・エムのシェアが45.1%となっており、マイクロソフトが24.4%、サイボウズが12.1%となっている。NotesおよびDominoの特徴として、1,000名から3,000名規模の大手顧客の割合が多く、70~80%のシェアを占めているという。一方、100名以下からSOHOといった中小規模のシェアは高くなく、全体の平均で50%弱のシェアになっているとしている。
他社競合製品からNotesおよびDominoに乗り換えた顧客には、6,000名規模から300名規模までと幅広く、業種も製造業から楽器、電子機器、日用品メーカー、地方自治体、商社、金融業などと多岐に渡っている。また、バージョンアップを行っているユーザーが多いことも特徴で、300万以上のユーザーがバージョン7にアップグレード済みであり、90%以上のユーザーが6.xを導入済みだという。
イノベーションを現実化するためのSOA
かつては「eビジネス」を戦略に打ち立て、ハードウェア中心のビジネスから、顧客視点に立ったソリューション提案型、つまりサービス・ソフトウェアを複合したソリューション提供企業へと方針を変更したIBM。結果、「eビジネス」という言葉は広く一般に浸透した。また近年では「オンデマンド」を戦略にビジネスを推進してきた。そして今回、IBMが打ち出した戦略は「イノベーション」である。「イノベーション」は一般の人だけでなく、小泉首相を始め、さまざまなトップに位置する人々からよく聞かれるようになった言葉だ。
IBMの会長兼最高経営責任者であるサム・パルミサーノ氏も、「イノベーションについて熱く語るCEOがますます増えている」と語っている。また、世界の900名のCEOを対象に実施された調査でも、企業の成長に必要な要素として半数以上がイノベーションと答えており、「有能な人材(30%弱)」、「グローバルな組織運営(20%弱)」を大きく引き離す結果となっている。
別の調査では、87%のCEOが「イノベーションを現実化するために、次の2年で根本的な変化が必要だと確信している」と答えている。イノベーションを実現するには、社内外とのコラボレーション、ビジネスモデルおよびプロセスの変革、ビジネス最適化のための情報活用が必要だと澤田氏は言う。イノベーションとは変化することであり、その変化を容易にするためにSOAが有効であるとしている。
現在、ビジネスの柔軟性や再利用性を妨げるものとして、澤田氏は「ビジネスプロセスの欠如および統合のための標準仕様の欠如」「アーキテクチャに関するポリシーの徹底力不足」「LOBのニーズに都度、対応するポイントごとのアプリケーション買い」「ロードマップなしのインフラ構築」を挙げている。これは、仕方のないことでもあるが、決まった目標に向けて企業のプロセスやアーキテクチャを構築していくのではなく、その都度最適なものを組み込んできたため、システムが非常に複雑で統一性にないものになっている。
そこで有効な対策となるのがSOAの導入であるが、IBMでは「人」「プロセス」「情報」の3つの組み合わせが基本であるという見解を示している。「人」では、人とプロセスの相互作用により、一定のサービスレベルを保つこと、「プロセス」では、ビジネスモデル・イノベーションによる効率と実効性の向上、「情報」では、イノベーションを実現するためにビジネス・コンテキストにおける信頼できる情報を提供することととらえている。
この3つの要素に、さらに「接続性」と「再利用」を組み合わせることで、ビジネス中心でもIT重視でも対応できるSOAとなるとしている。そして、SOAを導入する際には「人」の側面から始めていくのが最適であり、そこで有効なのが「Workplace」製品である。
SOAに最適なWorkplace環境と導入事例
Workplaceは、プロセス、人、情報を活用するフロントエンド統合環境であり、業務における状況、役割、目的に合った情報、コラボレーション環境の提供により、さまざまな業務での素早い意思決定とアクションのための環境を提供するもの。自然でシンプルな情報蓄積ができ、これらを共有できる。また、柔軟なチームワーク環境の提供と個人の生産性の向上を実現するコラボレーションが用意されている。さらに、既存のIT資産を徹底して生かしたシステムの最適化、TCOの徹底した削減と利用者の生産性向上の両立が可能となるといった、まさにSOAに最適な製品ファミリーだ。
IBMが提唱するSOAではLotus Notes / Domino、そしてPortal / Workplaceが管理基盤として中核をなす。これらの管理基盤がクライアント、Webブラウザ、モバイル端末をインタフェースに「人」をつないでフロントエンド環境を統合し、さらにモニタリングやモデリング、ワークフロー、アプリケーション、ビジネス統合といった「プロセス」、コンテンツやデータを統合し検索、分析が行える「情報」などのバックエンド環境を統合する。
このWorkplace環境を実現するには、いくつかのアプローチが存在する。例えば、現在すでにLotus Notes / Dominoを使用している場合には、今後登場する「Hannover」や「Domino Next」などシリーズのバージョンアップによって実現していくことになる。また、現在パッケージのアプリケーションやWebベースのアプリケーションを使用している場合には、「WebSphere Potal」や「Workplace Collaboration Services」などによってプロセス統合とコラボレーション環境を実現するというアプローチとなり、さらに両社を統合するケースもあり得る。
ここで、Workplaceの導入事例が紹介された。金融関係の企業である「プルデンシャル・フィナンシャル」では、これまでコールセンターで顧客の相談を受け付け、顧客の商品購入に対し情報を提供していた。しかし、常に同じオペレーターが対応するとは限らず、その都度同じ内容を確認するような手間が発生していた。また、顧客にとっては必要な情報にたどり着くまでに時間がかかっていた。そこでWorkplaceの導入により、顧客ごとのポータルを作成し、関連性の高い情報を集めるようにした。顧客は求める情報に素早くアクセスできるようになり、企業側はコールセンター処理を大幅に削減でき、オペレータは営業など別の業務に注力できるようになった。
また、フロリダ州ブロワード郡の教育委員会での導入事例も紹介された。この地区では貧富の差から教育における「子供の置き去り」が問題になっていた。そこで各学校へIBM On-Demand Workplace」を導入し、教師、両親、生徒、そしてシステム管理者の間で役割をベースとしたポータルの基礎作りを行った。これにより人とプロセス、情報を統合し、学校運営に柔軟性を持たせ、意思決定を迅速化できたという。
Lotus製品のロードマップとデモ
ここで澤田氏は、Lotus製品のロードマップを紹介した。Lotus製品には、クライアント製品である「Lotus Notes」、「Workplace Client」と、サーバ製品である「Lotus Domino」、Javaベースの「Portal / Workplace」がある。クライアント製品のロードマップでは、2007年の5月から6月に「Lotus Notes」と「Workplace Client」を統合した「Hannover」をリリースする予定だ。一方、サーバ製品のロードマップでは、Portal系の新バージョン「6.0」、Domino系の「Integrated Server 8」をリリースする。これらは最終的に「Domino 8+」として統合される計画だ。
IBMは、日本では10年以上の実績があり、Notesシリーズは1986年に開発が始まっている。一般的には新しい技術が登場すると、それをベースに製品開発が進められる。しかしNotesシリーズは「最初に製品ありき」というスタンスだ。はじめによい製品を作っているため、新しい技術に対しては「どう取り込んでいくか」という対処ができる。
なお、このロードマップに対し、マイクロソフトの最高経営責任者、スティーブ・バルマー氏は「素晴らしい」と絶賛している。従来の資産を維持したまま最新の技術を取り込んでいくスタンスが評価されたようだ。同氏は、ほんの2年前に「Notesは死んだ」と公言していたため、手のひらを返したような変わり方である。しかし「ロードマップは素晴らしいが、IBMはこれを実現できないであろう」とも言っている。だが、澤田氏はLotusの開発者たちを4月に日本に迎えた際に、彼らのノートPCで「Hannover」が動作していることを確認しているという。
Lotusの開発者たちは、最新の技術を搭載した品質の高い製品を、最適なタイミングで提供することを使命としている。そのため、「Hannover」もスケジュール通りに提供されると期待しているという。バルマー氏がそのときに何と言うのか、これから楽しみだ。
さらに、「WebSphere Portal V6.0」の紹介が行われた。この製品の特徴は、SOAにおけるユーザーの接点としてプロセス統合、操作性改善による利用者の生産性向上、スケーラビリティーの向上となっており、まさにSOAを実現するためのものといえる。本製品は、企業内の各個人ごとのポータルを作成できるもので、Webベースの画面の中には「Portlet」と呼ばれる部品を自由に組み込めるようになっている。
Portletには、グラフやインジケータ、テーブルなどさまざまな部品が用意されており、開発することも可能だ。また、あらかじめ数種類のテンプレートも用意されているため、導入後すぐに使用することができる。PortletやWebアプリケーション作成用のツールも装備しており、Javaで作成する場合と違ってコーディングの必要がない。そのため、従来は16カ月かかっていたものが4カ月で作成でき、開発性が4倍に向上している。
最後に、「WebSphere Portal V6.0」のデモが行われた。1つの基盤上で社内向け、社外向けのポータルを作成できることを始め、シングルサインオンによるログインや見やすく変更されたアイコン、各機能に容易にアクセスできるラウンチャー、ドラッグ&ドロップで自由に配置できるPortletなどのインタフェースや、プラグインによるマイクロソフトOfficeとの連携、ファイル共有機能など、さまざまな機能のデモが行われた。工場長とライン管理者で、それぞれに必要な情報をまとめる方法や警告、フィルタの設定なども行われ、SOAを具現化したデモとなった。
次回は、基調講演の後半部分、日本アイ・ビー・エムのテクニカル・セールス・サポート技術理事である関孝則氏による講演内容を紹介する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
新着ホワイトペーパー PR
-
事例
[テクバン株式会社] 1画面でITサービスデスク業務が完結 太陽ホールディングスに学ぶデバイス管理 -
製品資料
[デジタルサーカス株式会社] ライセンス無料 Drupalベースの「多言語ECサイト開発用パッケージ」の実力は? -
製品資料
[デジタルサーカス株式会社] 日本発グローバル企業用Drupal「Risley(リズリー)」の実力とは? -
製品資料
[デジタルサーカス株式会社] Drupalサイト運用のリスク解消 潜在的なセキュリティ問題を迅速に発見する方法 -
製品資料
[株式会社ソースポッド] SCS評価制度への対応で工数が増大? 取得後の管理・運用をどう進めるべきか
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
半数がブルーカラー転向を視野に? ベテランエンジニアを追い込む“54歳の壁”
-
2
OpenAIやAnthropicでさえ制御不能 2026年夏「3大サイバー攻撃」の衝撃
-
3
法務と開発者で「言葉が通じない」問題 トヨタやソニーが語るOSS管理の真実
-
4
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
5
ChatGPTは“検索しまくり”でGeminiは“淡泊”? データが明かすAIの裏側
-
6
世界PC出荷数が20%急減 情シスを直撃するPC先行調達の反動と価格高騰
-
7
「レガシーシステム・老朽化システムの運用課題と刷新」に関するアンケート
-
8
セキュリティは「情シス任せ」が過半数 漏えい発生時やSCS評価制度の課題は?
-
9
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
10
326のIPアドレスで1200超のアクセス AIエージェント関与が疑われる攻撃の中身
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
2
システムの保守がモダン化を阻む? 「変えない判断」から脱却する方法とは
-
3
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
4
AI駆動攻撃にどう対抗する? 超速の攻撃からエンドポイントを保護する方法
-
5
なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは
-
6
プログラミング不要で誰でも実現できる、ネットワーク運用管理の自動化とは
-
7
東大教授と考える、AI時代の「データ主権」「信頼性」「ガバナンス」の在り方
-
8
Linux初心者でも知らないとまずい「RHEL」「SLES」の違いとは?
-
9
最速72分でデータが流出? 最新の脅威トレンドや侵入手法から分かった防衛策
-
10
生成AIの活用を阻む「5つの壁」とは? AIネイティブ組織へ変革を遂げる方法
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー