Column
職務入れ替えで促進されるITと業務の連携強化
IT部門内、あるいはIT系と業務系の間で職務入れ替え制度を導入している企業はまだ少ないが、会社にとってのメリットは大きい。
ジョー・レシックCIOのIT部門は、最初業務系で採用された人材が10%を占めている。
航空部品・サービスディストリビューターのアビオールでITと会社業務がうまく連係している一因は、業務系からIT系への人事異動にあるとレシック氏は言う。アビオールは最近、ボーイングに買収された。
レシック氏のようなCIOが成功を収めているにもかかわらず、アビオールのようなIT職の入れ替え制度はいまだに極めて珍しい。
調査会社のフォレスターリサーチが最近実施したIT管理職281人の調査では、IT部門内部で人員の入れ替えを行っている組織は22%のみだった。
「以前、人員の入れ替え一般について聴き取り調査をした時は、『まあ、やった方がいいだろうね』『まだやっていないんだが』といったような答えが多かった」。今回の調査をもとに報告書を作成したフォレスターのサミュエル・ブライト氏はこう話す。
ブライト氏によると、IT系の人員を異動させて組織内で別の職に就かせることは、特に入社間もない従業員にとって、スキルの幅を広げる一助となる。必要とあれば違った職務をこなせる多才な従業員がいれば、組織にとっても柔軟性が増す。
「実際にこれが見られるのは、IT部門内部で採用間もない人材が入ってくる時だ」とブライト氏。「こうした人材は当初の予定通りプログラミングに就かせる前に、例えばインフラ担当、それから開発担当、次に別のIT職へと短期間で交代させ、職場の状況を把握させる。これによって上司は新人が何に関心を示すかを理解でき、(新人は)ITがどのように運営されているかを理解できる」
2007年はIT系の人材の獲得競争が加熱する中、職務入れ替えは人材獲得とつなぎ止めの重要な道具にもなるだろう。
「職務入れ替えは後にIT部門で昇進したときもメリットとなり、IT業務の殻を破る一助となる」とブライト氏。
職務入れ替え制度が普及しないのは、CIOなどのIT幹部が人材について考える時間がないせいだとブライト氏は話す。ハードウェア、ソフトウェアおよび会社からの要求に忙殺されてしまうことはあまりに多い。
これをもっと大きな人材管理戦略の一環とすることが必要だ。IT管理職はよく、多分無意識のうちに、忙しすぎて人のことを考える余裕がないと言い交わす。遂行したい新プロジェクトがあるのだ。「人材管理問題は常に念頭にあるわけではない。業績に響くようになるまでは」(ブライト氏)
同氏の調査では、ITと業務の連携強化を目的とした別の形の職務入れ替え制度は、さらに少ないことが判明した。IT要員を業務系の職に就かせているというCIOは12%のみ。業務系の従業員をIT部門に異動させているのは7%にすぎなかった。
IT要員を一時的に業務系に異動させることにはメリットがあるとブライト氏は言う。会社がどのように運営されているかについての知識を一新できるからだ。この従業員がそうした視点をIT部門に持ち帰り、IT系と業務系との関係改善が促される。
最も普及していない形の人員入れ替えは、恐らく最も価値があるといえるだろう。
アビオールの職務入れ替え方針は全社的なものだ。IT専門職は、IT部門内部で1つの職から別の職への異動が奨励される。また、業務系への異動も奨励されている。業務系の従業員はIT部門で歓迎され、管理職級に就くこともある。レシック氏のビジネスシステムサービス担当責任者は、以前は営業のプロだった。
「この人物は20年間業務系に身を置き、北米の西半分の営業を任されていた。当社は情報システム部門内部で価値を高めるためにやるべきことがあった。業務系から情報システム系に来る人材が多いほど、連携は強化される。全員が同じ目標を持つようになる」(レシック氏)
元営業責任者が今ではIT責任者として、ITプロジェクトが会社のニーズに沿っていないと思えばどんなものでも完全な拒否権を発動できるとレシック氏。
「きっぱりノーと言い切っても構わない。顧客サービスとサプライヤー関連のノウハウを持つ人物だ。アビオール社内で長年過ごし、われわれが顧客に仕えているという認識を浸透させてきただけでなく、社外で(顧客相手に)過ごした時間も長い。社内には、ITの機能のことを情報システム部門の人間よりもよく知っている業務系の人間がたくさんいる」(レシック氏)
倉庫業務を担当する従業員が、IT部門で新しいキャリアを試してみたいと言ってレシック氏にアプローチしてきたこともあるという。
「この男は倉庫管理アプリケーションのCatalystを使ったことがあり、違うキャリアに移りたいと思っていた。『このアプリケーションのことはとてもよく知っていますが、技術者ではありません。情報システム部門に入れてもらえますか』と言いに来た」
こうした入れ替え制度はIT部門にとって一挙両得であり、部門として質の高い人材の供給と利用の両方が可能になるとブライト氏は話す。
「ある病院では、看護師がITサービスにアナリストとして職務異動し、より良いシステムの設計に手を貸している」(ブライト氏)
レシック氏は職務入れ替えが重視されていなかった企業でCIOを務めたこともあるという。業務系からIT系に従業員を異動させるための支援態勢はほとんどなかった。今の会社で職務入れ替えが成功したのは、強力な支援態勢と、CEOおよび社長のリーダーシップがあったからだとレシック氏は言い、「彼らはテクノロジーを一貫してサポートしてくれる存在だ」と語った。
職務入れ替えのためにはそのようなコミットメントが必要だと同氏は言う。部門内でIT担当者の職を切り替えるだけであっても、リソースが必要な場合もあるからだ。
「これをやるためには経費が絡む。開発者をデータベース管理者にすることをためらうCIOがいるのは、経費が掛かるからだ。研修を受けさせなければならないし、軌道に乗るには最低でも1年はかかる」(レシック氏)
ブライト氏によると、ロジスティック的な立場から見れば職務入れ替えは難しい。入れ替えの対象になった従業員を新しい職務に精通させる必要があるだけでなく、その従業員の前職も埋め合わせを要する。
「要はIT部門が意図して人材を入れ替えなければならないということだ。場当たり的な入れ替えを行っている組織もあるが、それではIT部門は強化されず、ほかの業務分野でITを擁護してくれる知識を持った人材も育たない」とブライト氏は話している。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社MatrixFlow] 「物流リソース最適化」ガイド:人員・配車・傭車を出庫依頼の確定前に決めきる -
製品資料
[株式会社キーエンス] なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは -
製品資料
[株式会社セールスフォース・ジャパン] 「CRMは設計と無関係」は本当か? PLMとの融合で実現する高速開発 -
事例
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] AIエージェントの時代にどう備える? 「新たな働き手」を支える3要素とは -
製品資料
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] “横並びの自動化”から脱却、AI活用で生産性と競争力を高める秘訣
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
法務と開発者で「言葉が通じない」問題 トヨタやソニーが語るOSS管理の真実
-
2
ChatGPTは“検索しまくり”でGeminiは“淡泊”? データが明かすAIの裏側
-
3
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
4
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
5
肥大化した「SFA」の沼 4カ月でBigQuery×AppSheetの新システムを構築した方法
-
6
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
7
次世代RPA「ハイパーオートメーション」が急成長か Gartnerが予測
-
8
「Wi-Fi 7」経由でWindowsが乗っ取られる? 最高権限奪取の恐怖
-
9
昭和大学病院がeICUを導入、ICUの患者情報を遠隔地で一括管理
-
10
「何から始めればいい?」 情報漏えい対策で悲鳴を上げる中小企業のリアル
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
3
プログラミング不要で誰でも実現できる、ネットワーク運用管理の自動化とは
-
4
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
5
財務部門がAIを最大限に活用する方法 無駄のない戦略的リーダーシップへの道
-
6
LLMが兵器化? 元FBI高官が鳴らす警鐘とセキュリティツール統合のポイント
-
7
なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは
-
8
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
-
9
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
10
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー