まる分かりIT基礎解説「UTM」
読めば分かる! UTMのメリットと注意点
セキュリティ対策として、近年、特に注目されているのが「UTM(統合脅威管理)」だ。UTMを一から説明し、製品のメリット・デメリット、どのような場面でUTMを採用すべきかなどを解説。読めばUTMが分かる。
UTM(統合脅威管理)
UTM(Unified Threat Management)とはその名の通り、さまざまな脅威に対する幅広い保護機能を、1つのプラットフォームに集約した「統合脅威管理」ソリューションだ。企業は、複雑化するあらゆるセキュリティ脅威への対策を取らなくてはならない。しかし、それらに個別に対処していてはコストが掛かり過ぎる。例えば、メールを介して感染するウイルスへの対策、PCの脆弱性を攻撃する不正侵入からの防御、スパイウェア防御、WinnyなどのP2P(Peer to Peer)の使用制限、不適切なサイトへのアクセス制限など、対策が求められるセキュリティポイントは枚挙にいとまがない。UTMは、従来は個別に行っていたアンチウイルスやIDS(侵入検知システム)/IPS(侵入防止システム)、スパムメール対策などのセキュリティ対策を包括して、企業が比較的安価かつ容易に導入できることを目的として開発された。
UTMは、従来のファイアウォール/VPN装置をベースにアンチウイルスやIPS、コンテンツフィルタなど複数のセキュリティ対策機能を1つの装置に実装している。多くのUTM装置はグラフィカルなユーザーインタフェース(GUI)や各セキュリティ機能の自動アップデート機能を用意しているため、IT管理者の負荷を軽減するとともに運用コストを抑えることが可能だ。しかし、UTMは広範囲のセキュリティ機能を1つの装置で抱えているため、障害時のリスクが高い点や柔軟性に欠ける点などのデメリットも考えられる。
以降では、UTMがSMB(中小規模事業所を対象としたITシステム市場)を中心に受け入れられた背景、現在のUTMのメリットとデメリット、そしてこれからのUTMについて詳しく見ていこう。
UTMは中小企業に受け入れられやすい?
企業、特にSMBに位置する企業のIT管理者にとって、ネットワークセキュリティは常に頭を悩ませる存在だった。2005年から2006年におけるセキュリティ被害の申告数を見ると、以前は有名なドメインに対するDoS攻撃、つまりごく一部の標的に対してそのサービス自体を停止させるような攻撃が主流であり、その攻撃手口も限られていた。
しかし、近年は特に、特定アプリケーションの脆弱性を突くなどネットワークの上位層をターゲットにした攻撃が多く見受けられるようになった。その攻撃手法は多岐にわたる。攻撃の専用ツールなども簡単に入手できるようになり、専門的な知識を持たない人間でも簡単に効果的な攻撃を仕掛けることが可能となった。すなわち、誰でも攻撃が可能であり、あらゆる企業が攻撃の被害に遭う可能性が高まってきたのだ。
企業は、企業規模にかかわらず広範囲なセキュリティ対策を行う必要が出てきた。しかし、個々のセキュリティ脅威への対策を用意するには膨大な導入コストと運用コストが掛かる。さらに、対応できるスキルを持った人員も必要だ。大企業であれば、ウイルス対策装置やIDS専用機などの高価な対策ソリューションを導入し、専任のITスタッフを豊富に用意することも可能だろう。だが、人員の数も予算も限られた中小企業では、すべての脅威に対して効果的なセキュリティ対策を導入することは難しい。
そういった背景を受け、さまざまなセキュリティ機能を統合したUTMが登場したのである。UTMは主にゲートウェイでの統合セキュリティ装置として導入され、SMB市場に瞬く間に広まった。
UTMで実現できるセキュリティ対策
UTMはファイアウォール機能を持つだけでなく、上位層への攻撃(ウイルス、コンテンツベース攻撃、不正侵入など)にも対応する。ほかにもシグネチャベースでのゲートウェイアンチウイルスなど、さまざまなセキュリティ機能を持つ。ただし一口にUTMといっても、メーカーや製品によってカバーする対策範囲が異なることに注意しなければならない。最近ではファイアウォール機能に加え、アンチウイルス、アンチスパイウェア、IDS/IPS、スパム対策、そしてWeb閲覧制限までを含むものが多い。
これまで専用機でしか対策ができなかったセキュリティ脅威に対し、たった1台の装置で安価に、広範囲にわたるセキュリティ対策を導入できるのがUTMの大きなメリットである。例えばIPS専用装置は、メーカーによっては1000万円以上の導入費用を要する製品もあるが、UTMは小規模企業向け製品で10万円以下、比較的中規模企業向け(従業員数200~300人程度)の装置でも100万円以下で導入が可能である。
さらに、UTM製品の多くは直感的な操作が可能なGUIや自動アップデートを採用している。それほど高いセキュリティ知識を持たないITスタッフでも容易に設定やメンテナンスを行えるため、導入や管理の工数・コストの低減につなげることができる。このようなメリットから、UTMは今やSMBの「門番」として広く導入されている。
しかし、UTM特有の問題もある
このようにトータルセキュリティソリューションとして登場したUTMは、すぐにでもセキュリティ対策を始めたい企業にとっては大きな魅力を持つ。だが、ここ最近でUTMならではの問題も見え始めている。
その1つがパフォーマンスだ。日本は世界でも有数のブロードバンド大国である。100Mbpsのインターネット回線を用意している企業も数多いだろう。数々のセキュリティ機能を1つの装置に集約しているUTMは、時にその機能の豊富さがネットワークスループットの低下を招き、ブロードバンドサービスのボトルネックとなってしまうことがある。さらに、シングルソリューションであるが故に、UTM装置の障害がそのままネットワークダウンに直結してしまう危険性もある。
もう1つの問題は、シグネチャの制限であろう。日々進化する脅威に、複雑な操作なしにタイムリーに対応すべく、ほとんどのUTM製品はアンチウイルスやIPSのシグネチャの自動アップデート機能を有している。しかし、配信されるシグネチャは製品の各提供ベンダーによって生成されるため、その提供範囲はおのおのの提供ベンダーのポリシーに依存してしまう。そうなると、企業固有のアプリケーションやポリシーに応じたフィルタリングの条件付けを行うことは難しい。このことは、特に厳密なフィルタ条件を必要とする大企業にとっては、1つのネックとなる。きめ細かいポリシー設定を行いたいユーザーは、設定の柔軟性に欠ける点に注意する必要があるだろう。
UTMと専用機、どちらを選ぶべきか
一方、アンチウイルスやIDS/IPS専用機が好まれるケースも依然として多い。これは、UTMは包括的なソリューションを提供するが、個々のセキュリティ機能に関してはやはり専用機の方が優位であるためである。UTMは個々のセキュリティ機能の拡張性や柔軟性には乏しいケースが多く、パフォーマンスや拡張性、高度なフィルタ技術といった面でUTMは専用機ほどの効果は望めない。
それぞれの特徴から考えると、企業規模の大小にかかわらず、セキュリティ機能を導入することに対して期待する範囲やITスタッフの負荷、運用ポリシー、予算に応じて専用機とUTMのどちらがベストな選択なのかを見極める必要があるだろう。
各ベンダーはUTMの機能拡張に注力している
UTMはその装置内で複合的なセキュリティ対策機能を実現するメリットと同時に、前述したようなデメリットも併せ持つ。信頼性や柔軟性では専用機に一歩譲るという点は、特に大企業でUTMを検討する際には大きな問題点となり得るだろう。それを改善すべく、各ベンダーはUTM装置に新たな機能を追加し始めている。
1つは信頼性向上のための機能だ。ここでいう信頼性にはネットワークの可用性のほか、パフォーマンスに対する信頼性も含まれる。まず、ネットワークの可用性に関しては、各社で特色があるものの、総じてステートフルフェイルオーバー機能(万一の障害時、通信のセッション情報も含めて装置の切り替わりが可能な冗長機能)をサポートしている。またパフォーマンスに関しては、CPUやメモリのキャパシティー向上に加え、一部のベンダーでは複数のCPUコアを搭載して個々のCPU負荷を分散し、処理時のスループット低下を回避するようにしている。これらの機能拡張により、UTMがネットワーク全体のボトルネックになってしまうことや、サービスをダウンさせてしまうような危険性を回避できるとしている。
また、セキュリティ機能のカスタマイズ性についても向上しつつある。前述したように、UTMは提供ベンダーが指定する機能やシグネチャのみしか利用できなかった。それでは未知の脅威や企業固有のアプリケーションに対する保護機能は提供できない。その欠点を補うべく、仮想的にセキュリティパッチが適用されている状態を作り出すバーチャルパッチやアプリケーションファイアウォールなどの技術を用いた未知の攻撃からの保護機能、ユーザーが自身のネットワークに流通するトラフィックに応じてカスタマイズ可能な保護機能が提供され始めている。
これまでのUTMソリューションは中小規模向けの製品がほとんどだった。しかしこれからは、旧来の統合セキュリティ機能プラスアルファの機能を持つものや、さらにそれを進化させた、中規模~大規模をターゲットにした製品も増えてくると思われる。セキュリティ対策を講じる場合にUTMの導入を考えるならば、これらのプラスアルファも十分検討した上で、自社にとって最も投資効果の高いソリューションを選択する必要がある。
代表的なUTM製品
以下に、代表的なUTM製品を紹介する。ここでは、従来の機能に前述したような拡張機能がプラスされているもの、大規模企業でも対応できる製品を中心に並べた。
| 製品名 | SSGシリーズ |
|---|---|
| 画像 |
|%15 説明|高機能なルーティングやNetScreenのテクノロジーを統合した高性能なセキュリティ装置|
|---|---|
| 製品名 | ASA5500シリーズ |
|---|---|
| 画像 |
提供:Cisco Systems, Inc. 無許可転載・複製禁止
|%15 説明|多数の導入実績を誇るPIXファイアウォールの技術を受け継いだUTM製品。
高い信頼性と豊富なモジュールによる柔軟性を提供する|
|---|---|
| 製品名 | NSA E-Classシリーズ |
|---|---|
| 画像 |
|%15 説明|業界初のマルチコアによる大規模向けUTM製品。
高速なUTM処理とアプリケーションファイアウォール機能を備える|
|---|---|
| 製品名 | UTM-1シリーズ |
|---|---|
| 画像 |
|%15 説明|実績あるチェック・ポイントのファイアウォール機能をベースに、
最大3年分のセキュリティアップデートサービスを付属するUTM製品|
|---|---|
| 製品名 | FortiGate-3016B |
|---|---|
| 画像 |
|%15 説明|16個のギガビットイーサネットを備えるASICベースの大規模向けUTM製品。
ゲートウェイアンチウイルスの老舗的存在|
|---|---|
| 製品名 | InterScan Gateway Security Appliance |
|---|---|
| 画像 |
|%15 説明|アンチウイルスの老舗であるトレンドマイクロの統合ゲートウェイ製品。
実績のあるウイルス対策だけでなく、URLフィルタやスパムメール対策などの多彩な機能を装備|
|---|---|
| 製品名 | IBM Proventia Network MFS |
|---|---|
| 画像 |
|%15 説明|高機能な侵入防御ソリューションを中心としたUTM製品。
民間最大のセキュリティ情報組織であるX-Forceを背景とした、幅広く素早い攻撃対策が強み|
|---|---|
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