ERP導入事例:JD Edwards EnterpriseOne
コンサルタントがERPの導入を助け、カスタマイズの柔軟性がコストを抑制
オムロン ヘルスケアのERP導入を成功に導いたのは、コンサルタントの活用とカスタマイズの柔軟性にあったという。ここでは、導入リスクの低減とコスト抑制のためのヒントを紹介する。
組織もITシステムも親会社から脱却
オムロン ヘルスケアは、2003年7月にオムロンのヘルスケアビジネス部門が分離独立し設立された。親会社であるオムロンの主力商品は産業用機器である。一方、オムロン ヘルスケアの主力商品は一般消費者向けの健康関連機器で、親会社とは異なるビジネスを展開している。分社化の目的の1つは、それぞれが専門分野に特化することでフットワークを軽くし、市場の変化に迅速に対応することだった。
分社化したとはいえ、当初のオムロン ヘルスケアは親会社であるオムロンのITシステムを借用していた。しかし、一般消費者向けのビジネスを展開するオムロン ヘルスケアにとって、主たる業務が企業向けであるオムロンのITシステムは、特に販売系のシステムで不便が生じていた。市場の変化への迅速な対応という面では管理会計に対するニーズも高まっていたが、オムロンのITシステムを借用している状況下ではその実現も難しかった。
そこで、親会社のITシステムから脱却し、名実ともに独立することが検討された。コストや時間を考えれば、今さら手組みでITシステムを一から構築することは考えられない。そのため、業務パッケージの導入という方向性はすぐに定まったという。しかしながら、オムロン ヘルスケアの山本広和氏は、システムのどの範囲までパッケージを導入すべきか悩んだという。
「会計については、当初から新システムを導入するつもりでした。そうなると、会計と販売はセットで入れた方が都合がいい。さらに、管理会計も実現したい。残る生産管理はどうするか。生産管理だけを残すと、他システムとのインタフェースをすべて別に作らなければいけません」(山本氏)
生産管理だけを残すと、オムロンの既存システムとの連携の仕組みが必要であり、それだけでもプログラムは相当な数に上る。開発にもかなりの工数が掛かることが予想され、そうなればコストもかさむ。将来、生産管理でもパッケージを導入するのであれば、いっそのことERPパッケージを導入すべきと判断したのだ。
ERPパッケージはカスタマイズの柔軟性で選択
オムロン ヘルスケアの売上高は、2007年3月期の連結決算で657億円。ERPの導入を決めた2004年当時は約500億円だった。この事業規模においてSAP ERPはコスト的に大き過ぎ、その一方で、国産ERPは将来的に管理会計をグローバル化する目的もあって候補には入らなかったという。
ERPの導入に際し、「業務をパッケージに合わせる」が基本方針に設定されてはいたが、ビジネスの変化に応じて継続的なカスタマイズが発生することも予想されていた。そのため、柔軟にカスタマイズできるパッケージを選ぶ必要があった。
「ビジネスプロセスを少し変更したい。あるいは新規事業を始める。そういった際に、自分たちでシステムを変更できるものが欲しいと考えていました」(山本氏)
これらの条件を満たすものとして選ばれたのが、JD Edwards EnterpriseOne(以下、JD Edwards)だ。2004年当時、オムロン ヘルスケアは海外に8つの拠点を持っており、中でも米国と欧州ではJD Edwarsを導入済みだった。そのため、価格が手ごろでカスタマイズが容易であることは実証済みだったという。
また、2004年時点の国内におけるJD Edwordsの利用実績は、IBMのPower Systemsシリーズではあったもののオープン系システムではほとんどなかったという。そのため、パフォーマンスについては不安が残っており、日本オラクルにコンサルタントとして参画してもらい解決することになった。
コンサルタント離れのいいパッケージを選ぶ
導入プロジェクトに掛かったコストの割合は、ERPパッケージのライセンス費用が1、他システムとの連携インタフェース構築費用が1、コンサルタント費用が2、ハードウェアなどのシステム環境費用が1、というものだった。ERPパッケージの導入で最も苦労したのは、「プロジェクトの進ちょく状況の把握」だったと山本氏は言う。
「パッケージだけに画面は出来上がっており、システムもすぐに動作しました。しかし、パッケージの導入に不慣れなこともあって、その動きが正しいかどうかの検証に時間がかかりました」(山本氏)
プロジェクトを適切に管理するために、コンサルタントの力も大いに借りた。その結果、コストに占めるコンサルタント費用の割合は大きなものとなった。ERPパッケージを導入したとはいえ、人事システムはオムロンのものを継続利用。さらには、オムロンとの共同購買体制やメインフレーム系システムとの連携も必要だった。開発コストの多くは、この部分に投入されたという。
ITシステムへの投資全般についていえることだが、コスト削減のためには初期導入コストだけでなく運用コストにも目を向ける必要がある。つまり、「コンサルタント離れのいいパッケージを選ぶこと」だと山本氏は指摘する。
オムロン ヘルスケアでは、業務インフラ改革部が業務運用とシステム運用の両面を担当している。ERPを担当するのはわずか数名で、システムの保守運用を委託している協力会社から数人の技術者が加わっている。システムについては、毎月何らかの変更作業が生じているが、そのほとんどは上記のメンバーで対応できる状況だという。
これは、JD Edwardsであれば、システム変更に伴う多くのことが設定変更やパラメータの調整で対応できるということだ。例えば、得意先からの大口受注などといった新たな例外処理が発生したとする。通常であれば、新たな処理プロセスを一から構築し直すことになる。ところが、JD Edwardsであれば、顧客ごとの例外処理プロセスをパラメータ設定などで構築した上で個別に保存しておき、それらを既存の処理プロセスと組み合わせることで、通常の顧客にも例外処理をしたい顧客にも柔軟に対応できる。
JD Edwardsにおいては、こういった処理プロセスの設定程度であれば、一通り操作の基本を学んでいればそれほど難しいものにはならないという。そのため、受注形態の追加やプロセスの変更などは外部の専門家に依頼する必要もない。外部リソースへの依存が少なくて済むということは、トータルコストでみれば大きなメリットになる。
ユーザーのwantをシステムに反映させるのは慎重に
「ERPパッケージを導入するメリットは時間の短縮であり、それはコスト削減につながる」と山本氏は指摘する。システム化したい対象を絞り込み、それを実現するためにどれだけの時間とコストを掛けるか。システム化の範囲が狭ければ、パッケージを導入する必要はないのかもしれない。手組みの方が、使い勝手のいいシステムに仕上がる可能性が高いからだ。
システム化したい範囲が広ければ、パッケージの導入は検討に値する。パッケージで用意されている標準的なプロセスを活用した方が、構築の手間が掛からないからだ。
オムロン ヘルスケアがERPパッケージを導入した目的は、分社化のための短期間でのシステム構築と管理会計の実現だった。とはいえ、パッケージの導入に際しては、ERPに合わせることで業務の標準化を図ることも重要だったという。
「ERPで業務が標準化できると、業務プロセスのとらえ方がシンプルになります。シンプルになると、新しいビジネスに取り組む際も、何と何を決めればそのプロセスが回るようになるかがよく分かるようになります」(山本氏)
さらに、パッケージを導入する過程で現場の声を聞く必要はあるが、要望を聞き過ぎないことも重要だという。
「ユーザーからの要望について“must”と“want”を聞き分け、まずmustを実現します。wantは、本当に必要なものかどうかをよく吟味してから実現した方がいいでしょう。システムが出来上がってみると、当初は必要といっていたものが変わって、まったく違うものが欲しいとユーザーは言うようになります」(山本氏)
ERPを導入しただけではその効果は発揮しにくい
ERPは、導入後の活用こそが大事だと山本氏は言う。導入により業務の標準化はできるが、その先にあるビジネスの拡大には結び付きにくいからだ。特に管理会計やサプライチェーン管理の活用には時間がかかり、すぐに導入効果を得るのは難しい。管理会計に至っては、数年にわたって細かなデータを蓄積し、推移が見られるようになって初めて活用可能なものになる。
とはいえ経営層は、システムを導入すればすぐに効果を求めてくるものだ。その効果を経営層に見せるのも情報システム部門の仕事であり、そのためには経営層の視点をよく理解した上で、それをどうシステムで実現するかといったスキルを磨く必要がある。システムの中身の理解ももちろん大切だが、それについては外部の技術者などから助けを得ることができる。むしろ経営に必要な情報が何であり、それをどうやってシステムから抜き出し、どう加工して経営層に見せられるかが求められている。
ERPの導入に当たっては、まずは自社の規模に合ったパッケージを見つけること。その上で、長期にわたり運用コストを抑制することを考慮しつつ、コンサルタント離れのいいパッケージを選ぶ。そのためには、運用中のカスタマイズの容易さも含め、TCOを削減できる製品を検討する必要がありそうだ。
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