技術の選択よりも計画の方が重要
遠隔医療プロジェクトを成功に導く5つのポイント
診療所や病院、養護施設などの施設間でリアルタイムな画像配信を可能にする遠隔医療連携。パイロットプロジェクトを計画中の医療機関に対して、成功に欠かせない5つのポイントを紹介する。
米国遠隔医療学会(ATA:American Telemedicine Association)の年次学術大会「ATA 2012」では、専門家によるパネルディスカッションが行われ、遠隔医療プロジェクトを推進する技術やワークフローについて活発な意見交換がなされた。
遠隔医療の実装を計画する際には、数年にわたるアップグレードに耐え得る機器を購入することが重要になるが、同様にそうした機器を使うユーザーを考慮することも必要だ。会場を埋め尽くした聴衆は、カナダのUniversity Health Network(UHN)で遠隔医療マネジャーを務める正看護師のブレンダン・パーディ氏の他、米MaineHealth VitalNetworkのオペレーションディレクターであるスーザン・ゴラン氏、IntelとGEの合弁事業である米Care Innovationsで臨床開発担当ディレクターを務める正看護師のジュリー・チェリー氏などによるプレゼンテーションに熱心に耳を傾けた。
聴衆の多さや質問の量からして、従来型の多くの病院は目下、新たな遠隔医療プロジェクトの実行可能性について少なくとも検討を始めているようだ。その理由の1つには、遠隔医療を導入すれば、高精細動画のリアルタイム配信を介して養護施設や一次医療機関、病院などさまざまな場所とつながり、専門医や分科専門医がより多くの患者を診ることができるということがある。
パネルディスカッションでは、遠隔医療のパイロットプロジェクトを計画中のCIOや臨床リーダーに対し、さまざまなアドバイスが示された。その一部を以下に紹介する。
遠隔医療プロジェクトのポイント
詳細な実装計画
チェリー氏によると、技術の選択よりも計画の方が重要だという。「お粗末な計画からはお粗末な結果、あるいは失敗しか生まれない。優れた機器を選んだとしても、その点は変わらない」(同氏)
技術が「既に存在しているワークフローの問題点」の万能薬になるとは期待しないことだ。まずはワークフローを徹底的に分析し、問題解決法を探るためのセッションを行い、問題点を解消するのが先だ。新しい技術に備わっている特性(2つの情報システム間の相互運用性の向上など)が既存のワークフローの問題点の解消に役立つケースもあるだろう。だが、それを実現させるには、詳細な実装計画の策定が必要だ。
推進派の確保
遠隔医療プロジェクトの成功には、推進派の医師の存在が不可欠だ。また臨床やIT、管理など多分野の代表者で構成されるプランニングチームの結成も不可欠だ。チームリーダーにとっての難題は、院内のさまざまな派閥に満足してもらえるように「各人にどのような利点があるか」を説明することだ。なぜなら、こうした派閥のニーズや要望は「資金調達か」「医療IT導入のインセンティブか」という点で、しばしば相反するものだからだ。
プランニングの段階では、遠隔医療サービスをどの地域のどのような患者に提供すれば最善なのかを判断することが重要となる。それにより、事業者は最も有効で費用効果の高いサービス展開にリソースを集中させられる。つまり、プランニングチームには患者データについて深い知識を持つ人物を参画させ、最初の段階から貢献してもらう必要があるということだ。
医師免許交付問題の早期解消
医師免許交付の問題は早期に提起し、解消しておくこと。パーディ氏はUHNの血栓症外来遠隔医療プロジェクトに参加する関係者の1人から、カナダ北部のヌナブト準州にもこのプロジェクトを拡大するよう要望を受けたという。そして結局、その話し合いをきっかけに、ヌナブト準州だけでなくUHNの医療サービスを受けられる全州を対象として、開業医の医師免許の有無を確認するためのワークフローが構築されることになったという。
スケジューリングシステム
スケジューリングシステムを用意すること。医師のスケジュールは常に変わるものであり、特に専門医の場合は複数の医療機関で診察を行っている向きも多い。つまり、マスタースケジュールはどこかの病院ではなく、医師が各自で所有するiPhoneで管理されている可能性が高いということだ。遠隔医療サービスには独自のスケジューリングシステムを用意し、医師が自分のスケジュール管理アプリの情報をそのスケジューリングシステムと同期できる(逆方向は不可)ようにする必要がある。
プロジェクトの品質測定
遠隔医療プロジェクトの進歩状況を品質の観点から測定する。ただし、測定はサービスの始動から少なくとも6カ月たってから開始すること。状況が許すようなら、1年待てるとなお良い。スタッフを教育してサービスを軌道に乗せ、開業医にワークフローに慣れてもらって最も効果的な治療を実践するためには、その程度の時間が必要なはずだ。1年たってからであれば品質を正確に測定できるため、さらなる品質改善に向けて患者管理やドキュメンテーションプロセスのアップグレードにも踏み切れる。
MaineHealthは全606床の三次医療センターであるMaine Medical Centerに遠隔ICU(集中治療室)を導入したが、ゴラン氏によると、同センターは遠隔ICUのローンチから7週間後に早くも進歩状況の測定を命じられたという。「そんなことをしては駄目だ」とゴラン氏。医師や看護師が実装プロセスに不満を抱いていることを示すだけの調査など、その段階では不要だったはずだ。しかし調査は敢行され、その結果、60%以上の回答者から「遠隔ICUの導入に伴うマイナスの体験や改悪点」が指摘された。「これでは銃で自分の頭を撃ちたくなる。7週間は人々が変化に対応するための期間としては不十分だ。皆がわれわれに不満を訴えてきた」とゴラン氏。
だが最後はハッピーエンドとなった。7年後に再び同様の調査を実施したところ、MaineHealthの遠隔ICUについて「プラスの体験や改善点」を報告する回答者が全体の95%に及んだという。
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