Computer Weekly製品導入ガイド
ネットワークプロフェッショナルの世界を変えるSDN
スイッチの作業の大部分を抽象化されたソフトウェアレイヤーに移動できる機能を提供するSDNこそ、進むべき道だ。
かつて、大企業には社内に通信部門があったことを覚えているだろうか。高度なスキルを持った専門の技術者が、配線や端末、電話機を設置して回り、例えば受付が使う専用の管理センターなどで、外からかかってくる電話と外へかける電話をさばくために十分な回線が確保できていることを確認していた。あの部門はどうなったのか。
世界は変わった。VoIPの利用や、かつて通信部門が行っていた作業の多くをIT部門が担うようになったことで、通信の世界は容易になった。
SDN(Software Defined Network:ソフトウェア定義ネットワーク)が主流になれば、ITネットワークの専門職にも同じことが起きるかもしれない。ネットワーク専門職を自認する者は誰であれ、SDNが自分にとって何を意味するかを十分に理解し、今後のITプラットフォーム管理においても確実に役に立てるよう、適応しなければならない。
これまでのネットワークは、ITにおける全ての基盤を提供してきた。ネットワークがなければ、サーバで運用されているアプリケーションには誰も接続できない。データが1つのアプリケーションから別のアプリケーションへと流れることも、1つの組織から別の組織へと流れることもできない。ネットワークは支配者だ。しかし、その一方でプラットフォーム全体の大きな足かせとなりつつある。
仮想化が普及すると、サーバやストレージはリソースのプールへと移り変わり、リソースは必要に応じて割り当てられるようになった。TCP/IPネットワークは基本的には仮想化されたシステムであり、確実な配信のためにパケットが必要に応じてルーティングされている。だが残念ながら、仮想化されたサーバやストレージのニーズ対応において最適とはいえなかった。
主な問題は、データセンターネットワークの階層的な性質にある。アクセススイッチはアグリゲーションスイッチに流れ、そこからコアスイッチに流れる。データは別々のサーバ上にあるアプリケーション間でいわゆる東西(East-West)トラフィックを流れ、サーバとサーバを結ぶパスを見つけるために階層を上ったり下ったりしなければならない。
全てが全てにつながる形態を導入しようとすると、データパスが複製されて互いの妨げになるループ問題に突き当たる。この問題を回避するために使われるスパニングツリープロトコル(STP)は、重複するデータループを自動的に閉鎖する。これはネットワーク内の物理ポートの閉鎖を招き、システムの遅延増幅にもつながる。ネットワークに障害が起きた場合、STPは復旧可能だがそれには数秒かかり、システム全体の可用性に影響が及ぶ。
リンクアグリゲーショングループ(LAG)は代替のフェイルオーバーの仕組みを提供するものだが、マニュアルポリシーに反することから、実際には物理システムにしか適していない。仮想LAG(vLAG)を導入しようとすれば、ネットワークの実装に関する問題が表面化するだけだ。
SDNではそれが大きく改善する。SDNは米スタンフォード大学で生まれ、スイッチが行う作業の相当部分をスイッチ自体から抽象化されたソフトウェアレイヤーに移す機能を提供する。物理スイッチから管理とコントロール面を取り去って、抽象化されたレベルでデータの扱いを決められる仮想ファブリックを作り出すことにより、物理スイッチはデータ面の動作そのものに集中でき、効率は大幅に向上する。同プロジェクトはスピンオフされてOpen Networking Foundation(ONF)となり、同組織のSDNインスタンスであるOpenFlowは新世代のスイッチの動作の標準となった。
簡単に言うと、スイッチの機能は主に3つのコンポーネントで構成される。スイッチの各ポート間でデータがどう移動するかをつかさどるデータ面と、データおよびネットワーク接続形態全体の管理をつかさどる管理面、各種データパケットの扱い方とルーティング方法を示したネットワーク地図をつかさどるコントロール面がそれだ。
この「ファブリック」ネットワークのアイデアは、生まれながらにレイヤーが少なくフラットなシステムだった。CiscoのNexusやBlade Networking Technologies(現IBM System Networking)など、仮想化機能を内蔵したTop-Of-RackおよびEnd-Of-Rowスイッチは市場に登場し始めている。物理ポートは自由に仮想化して統合することが可能で、データフローの管理は強化され、データループは排除された。障害が減ったことで遅延も少なくなり、東西のデータ伝送が大幅に高速化され、南北(North-South)トラフィック(エンドユーザーのPCやタブレット、スマートフォンといった端末からエンタープライズアプリケーションへのトラフィック)も最適化されている。
最大の変化は、多くのネットワークがスイッチのOS(例えばCiscoのIOSやJuniperのJunos)から、コモディティサーバで動作できるより標準的なソフトウェア環境へと移行したことだ。ネットワークに関してかつてはネットワークの専門職にしかできなかったことが、普通のIT担当者にもできるようになった。
これは市場にとってどのような意味を持つのか。Cisco(NexusおよびvCiderとCaridenの買収の両方を通じて)やIBMといった大手は、「構わず続行」の戦略を取ればSDNを取り入れた相手に負けると認識し、顧客をつなぎとめるために早くからSDNに取り組んできた。HPとDellも、既存の顧客をつなぎとめ、先行組が脅かされている組織への足掛かりを作るため、SDNを取り入れている。
新興のスイッチサプライヤーも浮上してきた。Pica8、NoviFlow、Plexxi、Big Switch Networksといった各社は、SDNを最大限に活用した高速・高スループットのスイッチを製造したり、SDNを使って比較的シンプルなスイッチ機器とコモディティベースのSDNソフトウェアサーバを組み合わせて販売し、CiscoやJuniperなどの先行組に対抗できるようになった。
別のアプローチを取っているところもある。PlumgridやEmbraneは、「新しい」ネットワークには新しい機能が必要になると考え、SDNはITとネットワークのクロスオーバーを実現させると見込んで、ソフトウェアの側に重点を置く。こうした各社が提供しようとしているのは、このクロスオーバーを推進し、新しいネットワークアプリケーション市場を創出するソフトウェアだ。
また、LineRateは、例えばネットワークセキュリティや負荷調整、ファイアウォールなど、これまで専用アプリケーションが担ってきた機能を実行できるネットワーク管理システムを提供し、たちまちF5 Networksに買収された。
一方、Riverbed、SilverPeak、Imprivata、CheckPoint、Barracuda Networks、Palo Alto Networksなど定評のあるネットワークアプライアンスサプライヤーにとって、SDNは、新しいネットワークのファブリック上に階層を築くソフトウェア指向の強いアプローチへの移行に向けて、運用の在り方の変化を促す原動力になるかもしれない。
SDNはコンピューティング市場にも影響を与えている。VMwareはポートフォリオにSDM機能を追加するためにNiciraを買収。OracleはXsigoを買収した。JuniperはContrailを買収したが、独自バージョンのSDNを打ち出す見通しも市場に宣言している。これはOpenFlowの実装ではない可能性もある。ただ、機能レベルで互換性を持たせることが望まれている。
こうした動き、そして今後予想される動きは全て、SDNが押しとどめ難い力になっていることの証だ。SDNは実現しないと決め込むことはもうできなくなった。SDNとOpenFlowのことを知り、それがネットワーク専門職の世界をどう変えるかを認識すべきときだ。自分たちの組織のために、SDNを使っていかに柔軟性と効率性を高めた技術プラットフォームが提供できるかを見極める必要がある。そうしたスキルを持っていれば、履歴書の重みも相当増すだろう。
アプリケーションやデータの専門職と連携することで、次世代ネットワーキングの第一人者は、上部のスタックと最善の方法で交信し統合できる最適なSDNソフトウェアを作り出せる人物になる。ハードウェアはますますコモディティ化が進むだろう。それに集中するのは時間の無駄だ。
これは既存のネットワークスキルにもかかわってくる。Cisco Certified Network Associate and Professional(CCNA/P)やDesign Associate(CCDA)といったベンダーの認定資格は、ハードウェアからソフトウェアへと重点が大きく変わることを反映して適応させる必要が生じるだろう。SDNスキルの認定資格を持った新しい専門職が登場し、再研修も必要になる。
多くにとって、境界を超え、ハードウェアから抽出されたソフトウェア機能アイテムという形の世界を目の当たりにするのは厳しいことかもしれない。しかし、それが進むべき道であり、SDNアーキテクチャは現代の組織にとって最高の柔軟性とサポートを提供してくれる。
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