サイバーセキュリティ保険の今
「個人情報漏えい保険」に入ればセキュリティ対策は“激甘でよい”という勘違い(2/2 ページ)
サイバーセキュリティ保険は企業のセキュリティ対策にどうフィットするか
サイバーセキュリティ保険は一般的に、非常に理にかなっているというのが専門家に共通した見方だ。プランによっては高額になることもあるが、一部の企業はセキュリティ対策の一環として、サイバーセキュリティ保険に加入した方が安心できると考えている。
ただし「保険会社や保険ブローカーに電話して相談し、プランを選ぶ」といった簡単なやり方では済まない。サイバーセキュリティ保険に加入するかどうか判断するには、入念な調査と分析が必要になる。さらに企業がリスクやサイバーセキュリティ保険を見る目は以前とは異なる。「Targetの情報流出事件の前と後では、状況が一変した」とビーソン氏は指摘する。
7000万件もの個人情報が漏えいしたTarget事件の前は、サイバーセキュリティ保険の証書は、静的なリスク評価アプローチに基づいて作られていた。企業は事前に評価用の質問票に記入し、保険会社に対してセキュリティ対策状況をプレゼンテーションし、場合によってはさらに保険会社と何らかの面談をしていた。「評価が完了し、証書が作成されて企業が保険に加入すると、保険会社は12カ月間、加入企業の無事を祈った」(ビーソン氏)
だがTarget事件の後、侵害が日常的に頻発するようになった。保険会社にとって「無事を祈る」モデルはもはや有効ではなくなってきたのだ。「私の経験では、サイバーセキュリティ保険はここ7~8年、企業のセキュリティ対策の付加要素だと位置付けられてきた」。米サイバーセキュリティ/リスク管理会社Stroz Friedbergの副社長を務めるウィリアム・ディクソン氏はこう語る。
だが企業は「人材、プロセス、技術を活用しても、リスクを100%カバーすることはできないことを理解するようになった」とディクソン氏は説明する。そのためにStroz Friedbergの顧客の間では、サイバーセキュリティ保険を自社のセキュリティ対策に組み込む動きが広がっているという。「サイバーセキュリティ保険は、技術やプロセスのセキュリティ成熟度を高めるための補完物としてではなく、侵害発生時の回復手続き、例えば復旧、侵害通知、クレジット監視、社外弁護士の追加サポートなどを処理する手段として組み込まれている」(ディクソン氏)
英コンサルティング会社Ernst & Youngのグローバル情報セキュリティ責任者ケン・アラン氏は、「一部の企業にとっては、セキュリティ対策のハードルが高過ぎる領域があることも、サイバーセキュリティ保険を利用する理由になっている」と説明する。同社の顧客のある大手銀行は、サイバーセキュリティ投資の効果を分析する中で、投資を増やすことで重要度の高いアイテムをより多く保護できるかどうかを調べた。「場合によっては、使用する技術があまりに複雑なために、その購入と管理のコストが高くつき、効果に見合わないこともあった」(アラン氏)。その銀行は、そのリスク領域をサイバーセキュリティ保険でカバーすることを選択したという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社うるる] 「入札市場」攻略ガイド:効率的に落札するためのポイントを徹底解説 -
製品資料
[株式会社うるる] 入札情報に特化した「販路拡大」「効率化」のためのサポートツールとは? -
市場調査・トレンド
[株式会社うるる] 公共入札に成功する企業と失敗する企業の「5つの違い」 -
製品資料
[日本ビジネスシステムズ株式会社] 専門家が教える、Microsoft 365の「テナント統合/分離」を成功に導く秘訣 -
製品資料
[rakumo株式会社] Microsoft 365での情報埋没を防ぐ、社内ナレッジを資産化する情報ポータル活用
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
半数がブルーカラー転向を視野に? ベテランエンジニアを追い込む“54歳の壁”
-
2
PHP脆弱性「PHP2Shell」で2260万件に影響 情シスの緊急チェックリスト
-
3
「Microsoft 365」が乗っ取られる MFAを破る“本物の画面”の恐怖
-
4
「テザリング依存」に潜む落とし穴 “遅いVPN”を解消するネット構築術
-
5
世界のデータセンター容量は5カ国に69%集中、電力消費「5%の壁」が招くものとは?
-
6
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
7
「Windows」の不要なファイルを安全に消して容量を空ける方法
-
8
生成AIが普及しても「技術書」を手放せないエンジニアの本音
-
9
IBM iのブラックボックス化を打破 資産継承と進化を実現する「IBM Bob」の実力
-
10
ChatGPTは“検索しまくり”でGeminiは“淡泊”? データが明かすAIの裏側
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
AI駆動攻撃にどう対抗する? 超速の攻撃からエンドポイントを保護する方法
-
2
2026年のサイバーセキュリティには何が必要か? 最新データに学ぶ傾向と対策
-
3
経験豊富な即戦力人材に直接アプローチできる、「攻めの採用」への転換術
-
4
「IT史に名を残すシステム障害」8選
-
5
最速72分でデータが流出? 最新の脅威トレンドや侵入手法から分かった防衛策
-
6
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
7
Microsoft 365のメールセキュリティ、3つの“死角”と追加で検討すべき対策とは
-
8
AI駆動開発のスピードと安全性を両立 「品質・セキュリティ管理」の実践ガイド
-
9
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
-
10
「標的型攻撃メール」事例・サンプル集
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー