今からでも間に合う「GDPR」対策【第3回】
丸分かり「GDPR対策」 “制裁金2000万ユーロ”回避に役立つIT面での対策とは?(2/2 ページ)
6.バックアップと事業継続管理(Backup and business continuity management)
バックアップや事業継続管理(災害時の事業継続を可能にする対策)としては、以下のような取り組みが挙げられます。バックアップを適切に取得、保管できる製品の導入が有力な選択肢となります。
- 定期的なバックアップの取得
- バックアップ媒体のセキュアな移送と保管
- 事業継続計画の策定および定期的なテストの実施
7.監視(Supervising maintenance)
システム運用の監視については、運用記録を残したり、システムやPC、記録媒体を廃棄する際にデータを消去したりすることが有効です。後述の「証跡とインシデントの管理」と関連して、システムへのアクセスを監視し、不正なアクセスが発生した場合に通知をすることなどが重要です。
8.証跡とインシデントの管理(Tracing accesses and managing incidents)
インシデント発生時の証跡やインシデントそのものを管理するには、システムのログを収集できるようにすること、ログファイルを改ざんから保護することなどが大切です。前述の「監視」と同様、統合ログ管理やログ監視の導入が有力な選択肢となります。
9.施設のセキュリティ(Securing the premises)
施設のセキュリティ対策は、オフィスやデータセンターへの入退室管理といった物理セキュリティ対策がメインになります。入退室管理の主要な手段としては、以下が考えられます。
- 生体認証やICカードによる入退室の認証と記録
- 防犯カメラなどによる入退室の監視
- セキュリティゲート(認証機能付きのゲート)による共連れ入室の制限
10.LANのセキュリティ(Securing the internal IT network)
社内LANを保護するためのセキュリティ対策としては、インターネットへ接続できるネットワークセグメントと、個人データを取り扱うネットワークセグメントを分離する「ネットワーク分離」の採用が挙げられます。オフィス内で使用する無線LANのセキュリティを確保することも重要です。社外から社内LANへのアクセス時には、VPN(仮想プライベートネットワーク)接続を必須とするといったポリシーの策定も有効です。
11.サーバとアプリケーションのセキュリティ(Securing servers and applications)
サーバのセキュリティを確保するには、サーバ管理者のID/パスワードについて「複雑性を確保する」「共有をしない」といったポリシーを策定すべきです。サーバ管理者IDを共有せざるを得ない場合は、一時的な貸し出しの仕組みを構築するなどして、誰が利用したのかを把握できるようにすることが大切です。サーバ管理者の権限管理手段としては「特権ID管理」などのセキュリティ製品がありますので、そうした製品の利用も有力な選択肢となります。
アプリケーションのセキュリティ対策については、パッチの重要性を評価し、適切なタイミングで適用するためのルールや手順を整備すべきです。可用性を確保するために冗長構成を採用したり、災害対策や電源の確保をしたりすることが有効です。
12.委託先管理(Managing subcontractors)
個人データの管理を第三者機関に委託する際は、適切に委託先を管理することが重要になります。委託契約に必要な事項を盛り込み、定期的に委託先での業務実施状況を確認すべきです。委託先との契約については、英国のデータ保護機関である情報コミッショナーオフィス(ICO)が、個人データ処理の目的と手段を決定する「管理者」と、管理者に代わって個人データを処理する「処理者」の間の契約と責任に関するガイドライン(原稿執筆時点ではドラフト版)を出していますので、そちらを参考に対応を検討するのもよいでしょう。
13.保管(Archiving)
個人データの保管においては、セキュリティを確保するためにファイル暗号化やアクセス制御を導入し、不適切な人が個人データへアクセスできないようにすることが重要です。データの保管期限を設定し、期限切れのデータを適切に廃棄できる仕組みの導入も有効です。
14.他組織とのデータ授受のセキュリティ(Securing exchanges with other organisations)
社外の組織とデータの授受をする際には、通信を暗号化するなどして、盗聴によるデータ漏えいを防ぐべきです。セキュリティを確保したファイル転送システムなどを使用して、データを受け取る側を厳密に認証することは、データ授受のセキュリティ確保に役立ちます。
各項目について、考えられるシステム面での対策を検討してきました。セキュリティシステムを導入する場合、どうしても導入費用の問題が出てきます。GDPRの条文やガイドラインは、セキュリティに関しても、業務フローに関しても、システムの導入を必須だと説明しているわけではありません。そのため運用でカバーする選択肢もありますが、運用コストが増大する場合もあります。
GDPR順守は必要ですが、過剰な投資も問題です。現状のデータ保護体制に照らし合わせて、必要な部分に対処するといった取捨選択をして、セキュリティやコンプライアンス、コスト、ビジネスの効率などのバランスを考慮しながらGDPR対策を進めていきましょう。
持田広志(もちだ・ひろし)
デロイト トーマツ サイバーセキュリティ先端研究所 主任研究員
大手システムインテグレーター(SIer)を経て監査法人トーマツに入社。大手流通、マスコミ、人材関連、中央省庁、IT企業をはじめとする多様な業種・業界に対して、個人情報をはじめとする情報管理やセキュリティマネジメントに関するリスクコンサルティング、監査サービスを多数提供。CISA(公認情報システム監査人)、QSA(PCI DSSに関する審査資格)などの資格を有する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
今からでも間に合う「GDPR」対策
欧州連合(EU)で2018年5月に適用開始となる「EU一般データ保護規則」(GDPR)。欧州の規則だからといって、国内企業にとっても決して“対岸の火事”ではない。それはなぜなのか。必要なシステムとは。IT部門が知っておくべきGDPRの基礎知識と対策を示す。GDPR対策のガイドラインとして活用していただきたい。
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社MatrixFlow] 「物流リソース最適化」ガイド:人員・配車・傭車を出庫依頼の確定前に決めきる -
製品資料
[株式会社キーエンス] なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは -
製品資料
[株式会社セールスフォース・ジャパン] 「CRMは設計と無関係」は本当か? PLMとの融合で実現する高速開発 -
事例
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] AIエージェントの時代にどう備える? 「新たな働き手」を支える3要素とは -
製品資料
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] “横並びの自動化”から脱却、AI活用で生産性と競争力を高める秘訣
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
法務と開発者で「言葉が通じない」問題 トヨタやソニーが語るOSS管理の真実
-
2
ChatGPTは“検索しまくり”でGeminiは“淡泊”? データが明かすAIの裏側
-
3
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
4
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
5
肥大化した「SFA」の沼 4カ月でBigQuery×AppSheetの新システムを構築した方法
-
6
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
7
次世代RPA「ハイパーオートメーション」が急成長か Gartnerが予測
-
8
「Wi-Fi 7」経由でWindowsが乗っ取られる? 最高権限奪取の恐怖
-
9
昭和大学病院がeICUを導入、ICUの患者情報を遠隔地で一括管理
-
10
「何から始めればいい?」 情報漏えい対策で悲鳴を上げる中小企業のリアル
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
3
プログラミング不要で誰でも実現できる、ネットワーク運用管理の自動化とは
-
4
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
5
財務部門がAIを最大限に活用する方法 無駄のない戦略的リーダーシップへの道
-
6
LLMが兵器化? 元FBI高官が鳴らす警鐘とセキュリティツール統合のポイント
-
7
なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは
-
8
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
-
9
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
10
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー