「モバイル化」「マーケティング」がキーワード
一流IT人材を採用できるツール/サービス 人事部はどう活用している?
一流の人材を雇用したいなら戦略が必要だ。採用競争に勝利するために、そして採用後のミスマッチを防ぐために、企業とその人事部門が行える取り組みと採用支援ツールの活用方法を紹介する。
現在の売り手市場で、企業は優秀な人材を獲得しようと争っている。賢明な企業はテクノロジーの力を借りた新的な採用戦略を立てている。この戦略は、売り手市場で求職者に主導権があり、求職者がテクノロジーを最大限に活用している状況では欠かせない強みとなる。
「需要と供給、求職者が入手できる雇用主に関する情報のレベルから判断すると、労働者市場は間違いなく売り手中心になっている」と話すのは、GartnerのRecruiting Leadership Councilでプラクティスリーダーを務めるトーマス・ハンコック氏だ。
雇用主は求人において、他の企業より優位な立場を得るための努力をする必要がある。そのことを示すために、Gartnerは株式市場指数S&P 100に含まれる企業の求人票を分析した。ハンコック氏によると、求人票の90%はわずか37種類の職種に集中していたという。この中には生産技術者、ソフトウェア開発者、販売マネジャー、経理担当者などが含まれている。
ハンコック氏は次のように語る。「つまり、企業はもっと応募者の立場に立って考える必要がある。求められているのは人材探しがうまくなることでは必ずしもない。人材探しは『LinkedIn』などのツールがあるため簡単だ。むしろ、どれほど効果的に応募者に魅力を感じてもらえるかという点で他社を上回る必要がある」
ここからは、一部の企業や人事部の責任者がどのようにして求人活動に取り組んでいるかを紹介する。また、競争市場での人材探しを後押しする採用戦略の立て方についても説明する。
1.採用戦略に「モバイル化」を追加する
PSR Associatesは人材派遣サービスを提供するITコンサルタント企業だ。同社は、多くの求職者が各自のモバイルデバイスをいつも確認していることを理解している。そうした普段の行動を踏まえ、同社の採用担当者は、有望な求職者が快適だと感じる方法で接触する。つまり、テキストメッセージを送っている。
PSR Associatesでシニアテクニカルリクルーターを務めるダニエル・バトラー氏とその同僚は、今でも電子メールを利用している。電話は最後の手段だ。電話は取られないのが普通だ。そのため、まずテキストメッセージを送る。バトラー氏のメッセージは簡潔だ。簡単なあいさつをしてから、雇用機会について魅力的な言葉を幾つか記載する。
採用候補者はソーシャルメディアサービス(SNS)のプロフィール更新にも各自のデバイスを使っている。そこで、バトラー氏はPSR Associatesの候補者追跡システムを使うことで、SNSへの投稿を確認できるようにしている。そうすることで、SNSの情報に基づいて候補者へのアプローチ方法を決めることができる。例えば、候補者のTwitterで週末は主に子供たちと過ごすことにしているとつぶやかれているとする。その場合は、恐らく週末限定の仕事には関心を持たないだろう。
2.採用候補者の人間性を見極める
一部の雇用主は採用活動の上で、企業に柔軟性をもたらす候補者の採用を重要視している。IT管理サービスを提供するVelo IT Groupの例を見てみよう。同社の最も重要な採用戦略の1つは、採用候補者の企業文化への適性を見極めることだ。同社は、そのために候補者に「Wonscore」を受けることを求める。これは人材評価会社Wonderlicが提供する応募前テストだ。これにより、有望な候補者の潜在意欲、性格、認識能力を前もって把握できる。
「社風にぴったり合い、同僚や顧客と良い関係を築き、仕事への満足度が高い人物を採用している。そうすることで離職者が減り、雇用プロセスが大幅に改善される」と話すのはVelo IT Groupでマーケティング部門の統括責任者を務め、採用活動も監督するクリスタル・マクフェラン氏だ。
マクフェラン氏によると、認識能力で高いスコアを獲得しても、意欲のスコアの低さを補えない可能性があるという。反対に、認識能力の結果が完璧には程遠くても、意欲と性格で高いスコアを達成していれば同氏の目にとまる。「性格を含めた全体像に目を向けている。これを本人との面接と結び付けて、チームにどの程度溶け込むかを見ている」と同氏は述べる。Wonscoreを受けることに対する候補者の反応も、マクフェラン氏は参考にしている。候補者がテストを受けることをためらったり拒否したりするなら、同氏はその候補者がチームの一員にはなれないかもしれないと考える。
3.採用戦略にマーケティングアプローチを利用する
人材を求めて他社と競争する際、戦略の一環として、マーケティングテクノロジーツールを利用する企業もある。自社の職場についてのメッセージを広めるためだ。例えば、Velo IT Groupの採用活動では次に挙げるような多くのテクノロジーを利用している。LinkedInの「LinkedIn Recruiter」では、アルゴリズムベースの候補者推薦と、対象を絞ったメッセージングを使用する。そうして、候補者を見つけ、引き付ける。応募者の追跡と自動化にはマーケティング統合管理ソフトウェア「HubSpot」を利用する。また、SNSの「Facebook」や「Instagram」に求人広告を出している。マーケティング部門を担当するマクフェラン氏によると、その採用活動コストはVelo IT Groupの人事部の予算から出ているという。採用活動とマーケティングを統合することで、同社は理想的な候補者を見つける方法を効率的に増やすことができると考えている。
企業向けIPアドレス管理サービスを提供するBlueCat Networksも同じ意見だ。優秀なIT専門家やサイバーセキュリティ専門家に同社を魅力的だと感じてもらうには、マーケティングと採用活動に同時に対応しなければならないと考えている。
「当社の採用戦略が特に成功を収めているのは、マーケティング部門や他の部門の強みを生かし始めた頃からだ。求人票を出しているだけではうまくいかない」と話すのは、BlueCat Networksの人事部で統括責任者を務めるシェリル・ケリガン氏だ。
「求職者、中でも優秀な人材が求めているのは求人票を確認することだけではない。その会社でどのようなことに取り組めるか、どのような部署に配属される可能性があるかを知りたがっている。そのため、実際に潜在顧客や顧客に送っているものを候補者に見せることが役立っている」(ケリガン氏)
採用戦略の一環として、BlueCat Networksは社内でのテクノロジーに関する集まりやその他のイベントをFacebookやTwitterを通じて広めている。
加えて、ほぼ間違いなく、BlueCat Networksにとってさらに重要な採用戦略になっていることがある。それはGlassdoorが提供する企業口コミサービス『Glassdoor』を重視することだ。BlueCat Networksは、求人広告の効果的な配置に関する情報と、これらの求人広告を見た人の詳細な職業人口統計を受け取るために購読費を支払っている。ケリガン氏によると、BlueCat Networksは従業員が同社に関して投稿したコメントにも返信しているという。
ケリガン氏は次のように例える。「旅行する場合にアクセスするのは、ホテルのWebサイトだけではない。TripAdvisorの『TripAdvisor』にもアクセスして、どのような意見が寄せられているか確認する。Glassdoorを使用するのはそれがTripAdvisorのようなものだからだ。その上、書き込まれたコメントに対して返信する機会も得られる」
4.特化された採用サービスやツールを利用する
個人投資に関するWebサイトを運営するFinderでは、LinkedInなどのSNSプラットフォームを利用している。ライターやマーケティング担当者などを採用するためだ。その採用戦略の一環として、採用活動サービス「ZipRecruiter」を利用することで、適度な成功を収められるようになった。ZipRecuiterは空いている職務に適したカスタマイズキーワードを使用すると、機械学習で「登録している求職者の特徴を適切に把握し、採用候補者を絞り込めるようになる」。Finderでカントリーマネジャーを務めるジョン・ブロツキー氏はこう説明した。
米フロリダ州のソフトウェア開発会社Conceptaでも、ある採用活動サービスを利用している。Erecruitが提供する「Adapt」は候補者を経験と性格でふるいにかけてから、その技量をテストする。Adaptを導入したことで、Conceptaでは優秀な開発者とデータサイエンティストを見つけるという長年の課題が解決した。資質のある中南米出身の派遣社員を雇い入れたのだ。これらの従業員はその職務の高度な基準を満たしている。遠隔地での勤務になるが、Conceptaの本社と同じタイムゾーンにいるためスムーズに業務ができていると、ConceptaのCEOを務めるウンベルト・ファリアス氏は述べる。
「採用プロセス全体を通して、技術力が足りないために採用候補者が不適格だと判明するまでに、膨大な時間が費やされることがある。Adaptのコストは社内で求人活動をする場合と比べてそれほど安上がりではない。だが、長期的には会社にとってコスト削減になる」(ファリアス氏)
Finderのブロツキー氏は、採用ツールやサービスを褒めたたえながらも、適任の候補者を見逃す恐れがあると警告する。たとえそのツールやサービスがAIのサポートを受けているものだとしてもだ。そのため、Finderでは求職者向けに「就職希望」オプションを同社のWebサイトに掲載した。採用活動ツールや標準の履歴書プロセスを回避するためだ。このオプションは、同社のWebサイトからブロツキー氏に直接メールが送信されるという単純なものだ。
5.埋めづらい職務には契約社員を採用する
ライドシェアリング業界向けの情報サービスを提供するRidesterでは人材のギャップを狭めるためにフリーランサーも雇用している。同社は成長を始めて間もないため、採用担当者を雇う予算がない。そこで最も重要な採用戦略の1つとして、同社のグロースマーケティングマネジャーを務めるサイド・アジマール氏は、「すぐに利用できるツールを使って契約社員を探し、その管理と追跡をしている」と述べる。
同社はWebサイト「OnlineJobs」を綿密に調査して低コストの支援者を探している。さらに、採用プロセス支援ソフトウェア「Breezy HR」を使用して候補者情報を管理、評価する。また、アジマール氏は、テーマを指定したコンテンツを執筆してもらうことで、候補者を試している。そうすることで、候補者による時給業務への取り組み方を評価できる。「採用活動が常に課題となるのは間違いない。だが、これらのツールを使うことで、適切な候補者を見つけ出している」(アジマール氏)
Constellation Researchでバイスプレジデントと主席アナリストを兼務するオルガー・ミュラー氏は次のように話す。「多くの業界で契約社員の採用が増えている。そのような状況では、採用戦略に人材管理ソフトウェアを取り入れる必要がある。スポーツチームがポジション別に選手をランク付けするように、人材の厚みを示した表を作るためだ」
「スポーツチームではけが人が出る可能性があるため、ポジションの厚みを把握しておく必要がある。それは企業でも同じはずだ。管理職は職務に適した人物を確認するとともに、ある仕事にすぐに空きが出そうか、そのような人物を雇うには時期尚早か、そういったことを把握する必要がある」(ミューラー氏)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
取手市がVDIと決別した理由 更改費用「4倍超」を約1.7倍に圧縮
-
2
「Excel至上主義」の終わらせ方 丸2日の手作業地獄から情シスと現場を救うには
-
3
「Microsoft 365のセキュリティ運用」に関するアンケート
-
4
急増する「AIはこう言ってる」マン 判断を狂わせる「AI忖度」を防ぐには?
-
5
221人調査で分かった「情シス最大のストレス」は?
-
6
「Salesforceのテスト自動化ツール」に関するアンケート
-
7
IT製品の導入に関するアンケート「サーバ&ストレージ」編
-
8
「データストレージの活用方法」に関するアンケート
-
9
「AI時代の統合基盤・エンタープライズAI管理」に関するアンケート
-
10
自宅のWi-Fiが「遅い」「途切れる」本当の原因は? Dellが推奨する鉄則
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
年収2000万「クラウドセキュリティのプロ」になれる資格とは
-
2
セキュリティソフトをすり抜ける標的型攻撃メール、不審メールの見破り方とは?
-
3
Windows Updateの通信集中で回線が逼迫、ネットワーク刷新事例に学ぶ解決策
-
4
財務を戦略的組織へ進化させるAI活用術、4つの主要な障壁と解消方法
-
5
「NAS」「SAN」「DAS」は何が違う? いまさら聞けないストレージの基礎
-
6
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
7
標的型攻撃メールを見破るには? サンプル文面を例に傾向を解説
-
8
商用利用の安全性を確保し大量のコンテンツを高速で生成する、AI活用の秘訣
-
9
マンガで解説、1日で生成AI環境を構築できるワークショップの中身とは?
-
10
Dark AIが台頭する時代の新発想、「より高度なAIで対抗する」具体的方法とは?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー