「センターオブエクセレンス」確立が鍵
事例:ロボティックプロセスオートメーション(RPA)導入で顧客サービスは向上したか
信用格付機関のEquifax、住宅ローン金融サービス機関のColorado Housing and Finance Authority(CHFA)、保険会社のUnumがRPAを導入した事例と、その成果を紹介する。
住宅ローン金融サービスを提供する準政府機関のColorado Housing and Finance Authority(CHFA)はロボティックプロセスオートメーション(RPA)を利用して、業務に必要な反復的作業のペースを速めている。同庁は住宅ローン請求の照合プロセスをデジタル化し、それまでは4人がかりで3日かかっていた作業が、わずか数分で完了するようになった。
同様に、信用格付機関のEquifaxも作業の加速化を目指してRPAツールを導入した。幹部の言葉を借りれば、この市場では顧客相手の作業が遅い企業は痛い目に遭う。
Fortune 500に名を連ねる保険会社Unumでは、従業員の補助、あるいは単調な作業の完全処理を担う約40のRPA botのパフォーマンスを測定している。いずれはさらに拡張性の高い、恒久的なRPAソフトウェアを使って設計を刷新できるよう、プロセスの弱点の発見にもbotを役立てている。
Unum、Equifax、CHFAが、長年にわたって人が処理してきたワークフロープロセスに自動化を取り入れた理由について本稿で解説する。いずれの組織にとっても、RPAは従業員の雇用を脅かす存在ではなく、そのおかげで従業員が単調な作業から解放され、もっと判断力の求められる仕事に取り組むことが可能になっている。
こうした各社は、ミスを減らし、作業の流れを加速する(そして従業員が大掛かりなプロジェクトに取り組めるようにする)RPAツールを使うことで、迅速かつほぼ完璧なサービスを期待する顧客へのサービス態勢が強化できると話している。
Equifaxのグローバル共有サービス担当副社長、ジャイロ・キロス氏は言う。「このおかげでわれわれは、顧客のための非常に優れたサービスを確実に提供できる。RPAはその目標のための手段だ」。
従業員を巻き込む自動化
London School of Economicsは、RPAを使い始めてからの1年間で、30%~200%の費用対効果を実現した。だがMcKinsey & Companyのインタビューに対し、同大経営学部で技術・労働・グローバル化の講座をもつレスリー・ウィルコックス氏は、「企業が省力化に伴う金銭的な利益にのみ重点を置くのは間違っている」と語る。
ウィルコックス氏など自動化の専門家が指摘するように、RPAツールは、正しく導入すれば、長期的なメリットをもたらし得る。自動化では例えば、標準的なリクエストを処理しながら、複雑な質問は従業員に振り向けるbotを導入することによって、顧客サービスの向上を図ることができる。RPAツールはリスクを低減させることもでき、コンプライアンスなどルールに基づく規定の順守については従業員よりも優れている。さらに、ウィルコックス氏によれば、生成されるデータの増加に伴い従業員の作業負担が拡大し続ける中で、プロセス自動化のニーズは一層高まる。「組織内で発生するストレスを軽減するためだけでも、自動化が必要だ」(ウィルコックス氏)
例えばEquifaxは、2016年に初めてRPAを試験的に導入した。「大きく考え、小さく始める」とキロス氏は言う。「RPAについては数多くの疑問があった。『これは現実的なのか。われわれが期待する成果を挙げることができるのか』ということだ」。また、2017年、Equifaxの顧客1億4600万人以上の個人情報が流出した事件についてキロス氏に尋ねると、「大規模流出は今も『われわれのありとあらゆる意思決定』に影響を及ぼしている」としながらも、「あの事件とわれわれがRPAにやらせていることとの間に相関関係はない」と語った。
キロス氏や彼の同僚は、UiPathのRPAソフトウェアプラットフォームで実施した試験プログラムで、自動化に関する当初の疑問については答えを得ることができた。Equifaxがテストのためだけに作成した課金プロセスでは、少なくとも50人の人出が必要とされる作業を、RPAでは難なくこなせることが分かった。
それでも「RPAはグローバルに導入できるのか。迅速にやることは可能か」という2つの大きな疑問は残ったとキロス氏は振り返る。だが、RPAを65のプロセス(大半は書類中心の作業)に応用するようになった今、Equifaxでは、それも可能だと判断した。実際にRPAポートフォリオは拡大しているという。例えばEquifaxでは住宅ローンのための信用調査報告書を完成させる所要時間を短縮するといった、特定の製品やサービス関連の作業に、RPAソフトウェアを使っているという。カスタマーサービス部門では、それまで従業員が20ものコンピュータプログラムの画面を切り替えながら実行しなければならなかったデータ入力作業を、RPAのbotがこなしている。
「botは何をすべきか尋ねる画面を表示する。例えば、難しいカスタマートラブルを解決するためのデータをbotが収集する」とキロス氏は語る。カスタマーサービス担当者の集中力がそがれることもなくなり、顧客とのコミュニケーションに集中できるようになったという。
RPAのおかげでEquifaxは、「しばらくの間分析していなかった何千ものシステムや何千ものプロセス」を検証できるようになったともキロス氏は言う。
従業員にとっては、そうした話題が雇用に対する不安を抱かせるのは無理もない。だがキロス氏によると、自動化に照準を絞ったセンターオブエクセレンス(組織横断的な専門集団・拠点)は、RPA管理を従業員の手に委ね、その仕組みを従業員に理解させ、不安を取り除いている。
RPAの最善の使い方はIT部門に任せるのではなく、従業員が決定し、仕事のどの部分に自動化が最も適しているかを判断する権限も従業員に与えられていることだという。「botを運用する責任はビジネス部門側にある。それが自動化の文化(の成長)を促す」とキロス氏は話す。従って、従業員はロボットに仕事を奪われる心配はしていない。それどころか、もし従業員がRPAを使って仕事をしやすくするための先進的なアイデアを出せば、Equifaxではそうした反復的な作業の自動化を試みて、従業員がもっと顧客対応に力を入れられるようにするという。「従業員はそれを受け入れている」とキロス氏は語った。
botを活用した非効率性の発見
保険会社のUnumも、2016年にRPAソフトウェアを試験的に導入した。同社の技術能力マネジャーで、共有サービス・プロセス効率化センターオブエクセレンスのレックス・プライス氏によると、それまでカスタマーサービス担当者は、顧客の住所変更といった単純な作業のために、複数の違うシステムにログインして「あちこちに」コピー&ペーストしなければならなかった。RPAプログラムの試験導入は「われわれにとって良い出発点」だったとプライス氏は言う。同プログラムは顧客とポリシー情報を融合させ、同社の個々のレガシーシステムプログラムに更新されたデータを入力する反復的な作業を担ってくれたと説明する。
それから2年近くたった今のUnumでは、従業員が付く30のデスクトップbotに加えて、従業員が付かない10のbotがコンタクトセンターで顧客情報を処理している。それだけでなく、ポリシー管理カスタマーサービスチームを補助して、保険契約の変更や失効した契約のフォローアップ作業といった反復的な作業を担っている。ソフトウェア企業Pegaが提供するこれらのbotは、対応にかかる時間の短縮や作業からの解放を通じてカスタマーエクスペリエンスを向上させているという。プライス氏は「年内に75のbotを導入したい」と語る。
プライス氏によると、RPAが生み出した金銭的な利益についてはまだ完全には把握していないものの、Unumの最終的な目標は、いずれbotから転換して反復的なプロセスの設計を全て刷新することにある。その理由として、botはデータソースが変わると接続が途切れることがあり、そのbotを修理した後も根本的な問題は残る。Unumはいずれ、Pegaの主力製品「Pega Platform」の助けを借りて、そうしたプロセスのアーキテクチャを変更し、非効率な部分があれば発見して、反復的な手作業を恒久的に自動化する意向だという。
「(顧客情報の変更のために)カット&ペーストをしていた担当者にハグされたこともある。彼らは品質の向上について考えられる時間が増えた」。プライス氏はそう話している。
7万5000行のデータを数分で照合
CHFAの事業部門は毎月、請求書や報告書などのデータソースを照合し、CHFAの顧客のローンに関する情報が、ローンのサービスを提供している会社のデータと一致するかどうかを確認している。そのデータの量はスプレッドシートの7万5000行に相当する。CHFAの統合記録管理部門マネジャー、ブライアン・ミュラー氏によると、「自動化の完璧な用例」といえる。
同事業部門ではかつて、従業員4人が3日がかりでスプレッドシートのデータをデータベースに手作業で移していた。今はKofaxのソフトウェア「Kapow RPA」を導入し、データは自動的に抽出されてSQLテーブルに入力され、データウェアハウスの情報と照合されるようになった。情報の食い違いがあればユーザーインタフェース(UI)を通じて従業員に提示され、数分以内に授業員が照合できる。
「従業員は手作業によるデータ入力から解放され、データの移動よりも大切なレベルの高い仕事に集中できる」とミュラー氏は語る。例えばそうした従業員は今、頭金支援の許可に関するデータ審査にかける時間を増やしている。
Equifaxの事例と同様に、ミュラー氏もRPAを検討している企業に対して、まず社内に技術指向の従業員とユーザーから成るセンターオブエクセレンスを確立するようアドバイスする。その後「単純な作業の自動化に着手」すれば、「即座に費用対効果が見込める」という。RPAはそのままの状態で使える製品だとミュラー氏は話し、RPAツールの使い勝手の良さを挙げた。「とても直感的なので、われわれは毎日のようにロボットを構築している。最高なのは、事務作業の担当者でもロボットを構築できることだ」
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