マルチクラウド環境の経験も指標に
クラウド認定資格と実地経験、就職で決め手となるのは?
クラウドプロバイダーの認定資格は、IT担当者が基礎知識を培う有効な手段だ。しかし就職では認定資格よりも実地経験が重視されることが多い。キャリアの浅いIT担当者が実地経験を積む方法とは。
パブリッククラウドプロバイダーは、自社プラットフォームの知識を広げるため、認定プログラムの拡大を続けている。こうしたベンダー固有の称号は応募履歴書の印象を強めるかもしれないが、IT部門の採用マネジャーの大半は、マルチクラウド環境での実務経験を重視する傾向がある。
AWS、Google、Microsoftという大手パブリックIaaSプロバイダー3社は全て、クラウド認定資格を設けている。AWSとMicrosoftの「Microsoft Azure」の各プログラムは申請可能な認定の数や種類を豊富に用意している。Googleも企業市場へ進出を狙って、一連の養成講座の拡大を続けている。
4月に導入されたGoogleの認定資格「Google Associate Cloud Engineer」は、Googleの「Google Cloud Platform(GCP)」上でのワークロードの導入と運用の方法に関する基本知識を深めたいと考えるユーザーを対象にしている。Googleのプロフェッショナルレベルである高度認定資格への隠れたステップにもなっている。こう話すのは、Googleでクラウド学習を監修するロチャーナ・ゴラーニ氏だ。
「キャリアの初期段階では、間違いなく意義がある」(ゴラーニ氏)
併せて読みたいお薦めの記事
クラウドエンジニアのキャリア構築
ITスタッフが考えるべきキャリアの今後
就職で重視されるのは?
このようなクラウド認定資格は、就職志願者のスキルを客観的に測る一定の指標になり、急速に進化する今日のマーケットにおいては特に重要だとゴラーニ氏は語る。しかしクラウド認定資格が、志願者の就職のチャンスを左右するわけではない。
就職では、技術的な実地経験が重視される。
同じことは最高技術責任者(CTO)にもいえる。
カナダのサスカチュワン州サスカトゥーンを拠点とするVendasta Technologiesは、メディア企業向にソフトウェアの販売とマーケティングを提供するGCPユーザーだ。同社のCEOデール・ホプキンス氏は次のように話している。「(クラウド認定資格は)業界経験を補うが、経験に代わるものではない。しかし(認定資格を)所有する未経験者と所有しない未経験者のどちらかを選ぶとしたら、差が出るだろう」
「IT部門の採用マネジャーは認定資格を職務適性の指標程度に考えている。だが、クラウド技術者は自身のキャリアの進捗(しんちょく)を証明する手段として認定資格を強調する傾向がある」と話すのは、米アイオワ州にある金融サービスソフトウェアプロバイダーWorkivaでCTOを務めるデーブ・タッカー氏だ。同社はGCPユーザーでもある。
「認定資格よりも実地体験で習得する方が望ましい。本格的な学びは、本番で何かを動かすことから得られる。単にテクノロジーの活用方法を学習するよりも、拡張性や回復性などのニュアンスが分かるようになる」(タッカー氏からのメール回答)
自分の手を動かす
キャリアが始まったばかりのITプロフェッショナルは、どうやって実地経験を積めばよいのだろう。少数ではあるが選択肢はある。
大手パブリッククラウドベンダー3社に加えて、多数の独立系クラウドトレーニングプロバイダーが初心者向けに実地研修を用意している。特定のパブリッククラウドプラットフォームの基本をある程度習得するためのもう一つの選択肢として、ITプロフェッショナルがこうしたテクノロジーの一部を自分のペースで体験しながら確かめる方法がある。
「どのベンダーも無料の試用アカウントを用意している。そのため実地研修での利用は難しくない」と話すのは、独立系クラウドトレーニンングプロバイダーCloud Academyで、AzureとGCPのコンテンツリーダーを務めるガイ・ヒュメル氏だ。
「就職志願者が体験したのが個人的なプロジェクトだとしても、それが以前のキャリアの役割や研修を通してではなかったとしても、大きな差になる」とVendastaのホプキンス氏は語る。例えば志願者が家族のためにWebサイトを構築し、時間をかけてコンテンツ配信ネットワークのキャッシュを導入し、GCPやAWSなどのパブリッククラウド上でこのサイトをホストしたという経験でも構わない。
「インターネット上の豊富な情報を利用して、チュートリアルをコピー&ペーストし、Google App Engineを使いアプリケーションを導入するのは難しいことではない。しかし実際に何かを構築するにはかなりの作業と知識が必要になる。そのような経験が求められる」(ホプキンス氏)
マルチクラウドへの道を開く
企業が実地体験に加えて、マルチクラウドの管理経験を採用決定の指標にするケースは増えている。
「商談する顧客のほとんどが、複数のクラウドプロバイダーから1社を選んで利用している。一方で複数のプロバイダーを利用している顧客も多い。2社が一般的で、3社の場合もある」(ヒュメル氏)
ポプキンス氏によると、この傾向が続く場合、オープンソーステクノロジー関連のスキルやクラウド間の移動を可能にするツールは、単独のベンダーのインフラ関連スキルよりも価値が高くなるという。
「Googleやその他のプロバイダーは、KubernetesやIstioなどのオープンインフラ戦略を使用する傾向を高めている。こうした戦略はベンダーの切り替えを可能にする。インフラの管理方法に関する認定資格は、ますますニッチになっているように感じられる」(ホプキンス氏)
クラウドプロバイダー自体が、マルチクラウドという現実に、少なくともある程度の魅力を感じている。Googleは、「AWSプロフェッショナルのためのGoogle Cloud Platform」という6時間の実地研修コースを設けている。これは、Googleのクラウドテクノロジーや課金体系などを詳しく知りたいAWSソリューションアーキテクトに狙いを定めている。ゴラーニ氏はこの研修コースについて「今後もGoogleが積極的に投資を続けるコースになるだろう」と語った。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
急増する「AIはこう言ってる」マン 判断を狂わせる「AI忖度」を防ぐには?
-
2
取手市がVDIと決別した理由 更改費用「4倍超」を約1.7倍に圧縮
-
3
「Excel至上主義」の終わらせ方 丸2日の手作業地獄から情シスと現場を救うには
-
4
221人調査で分かった「情シス最大のストレス」は?
-
5
「データストレージの活用方法」に関するアンケート
-
6
「AI時代の統合基盤・エンタープライズAI管理」に関するアンケート
-
7
自宅のWi-Fiが「遅い」「途切れる」本当の原因は? Dellが推奨する鉄則
-
8
本当に安いPCで十分か? “すぐ重くなる”を防ぐノートPC選びの絶対条件
-
9
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
10
Claudeの不可視透かしに批判殺到 著作権消失や誤判定に潜む企業リスク
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
年収2000万「クラウドセキュリティのプロ」になれる資格とは
-
2
セキュリティソフトをすり抜ける標的型攻撃メール、不審メールの見破り方とは?
-
3
Windows Updateの通信集中で回線が逼迫、ネットワーク刷新事例に学ぶ解決策
-
4
財務を戦略的組織へ進化させるAI活用術、4つの主要な障壁と解消方法
-
5
「NAS」「SAN」「DAS」は何が違う? いまさら聞けないストレージの基礎
-
6
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
7
標的型攻撃メールを見破るには? サンプル文面を例に傾向を解説
-
8
商用利用の安全性を確保し大量のコンテンツを高速で生成する、AI活用の秘訣
-
9
マンガで解説、1日で生成AI環境を構築できるワークショップの中身とは?
-
10
Dark AIが台頭する時代の新発想、「より高度なAIで対抗する」具体的方法とは?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー