実行プラットフォームの違いを解説
SAP S/4HANAはどこで動かすべき? クラウド、オンプレミス、ハイブリッドを比較(2/2 ページ)
クラウドとオンプレミス、それぞれのメリットとデメリット
実行プラットフォームの検討を手助けするために、S/4HANA CloudとオンプレミスのS/4HANAを比較する際に調べておきたい8つの領域を紹介する。ハイブリッドモデルを選択する際の検討事項は、その後取り上げる。
カスタマイズ
- クラウド:ある程度はカスタマイズ可能だが、オンプレミスと比べると柔軟性が極めて低い。
- オンプレミス:企業が社内で全てのカスタマイズを管理するため、カスタマイズの柔軟性がはるかに高く、管理しやすい。
コスト
- クラウド:インフラから日次バックアップやソフトウェアのアップグレードまで、プロバイダーが対応する全てのサービスに、合意に基づく月額(または別の支払い頻度で)料金を支払う。企業社内で必要になる技術リソースは少なく、アップグレード費用も高額ではない。ただし、企業が必要とするサービスが増えるにつれ、年々保守コストが高くなる可能性がある。
- オンプレミス:企業は、実際のハードウェア資産、ソフトウェアを所有するため、年間に支払うソフトウェア保守費用は少なくなる。ただし、インフラを保守するサポートチームが必要になるため、運用コストが高くなる可能性がある。また、S/4HANA Cloudに比べてソフトウェアのアップグレード費用も高くなる場合がある。
セキュリティ
- クラウド:クラウドプロバイダーは、SaaSシステムの安全性を確保するために、インフラとサーバのセキュリティを専門とするチームを用意している。
- オンプレミス:S/4HANAオンプレミスオプションを選ぶと、専任のセキュリティ専門家が必要になる。追加のセキュリティソフトウェアが必要になることも多く、企業が負担するコストは高くなる。
導入
- クラウド:S/4HANA Cloudでは、クラウドプロバイダーが既にプロビジョニング、導入、検証を済ませた既製のプラットフォームを使用するため、オンプレミスのS/4HANAよりも導入は迅速になる。
- オンプレミス:導入には、新しい環境を設定する時間、コスト、労力、適切な担当者が必要になる。また、新しい機能を導入するために追加のハードウェアやソフトウェアを購入しなければならない可能性もある。
アップグレードとサポートパッケージ
- クラウド:オンプレミスバージョンに比べると、アップグレードのスケジュールをコントロールできない。ただし、クラウドプロバイダーは間近に迫ったアップグレードを顧客に事前通知するため、顧客はアップグレードする機能とタイミングを選択できる。また、アップグレードへのIT担当者の関与が最小限に抑えられる。IT担当者は検証の確認だけを行えばよい場合もある。
- オンプレミス:ソフトウェアアップグレードの頻度とスケジュール、最新サポートパッケージの導入可否を企業が決定する。そのため時間とコストがかかり、技術や機能を管理するスタッフが必要になる。システムアップグレード中のダウンタイムやサポートパッケージの導入も考慮に入れる必要がある。
統合
- クラウド:企業におけるさまざまな社内システムの統合は、インターネット経由でデータを送信することから、複雑になり、大きなセキュリティリスクを伴う恐れがある。企業は、クラウドプロバイダーが統合ポイントを明確に定義したWebサービスを提供していることを確認する必要がある。
- オンプレミス:システム間でのデータ転送は高速で、インターネット経由の統合は比較的簡単になる。SAPによる統合PaaS(IpaaS)などの統合ツールは、企業のテクノロジーエコシステム内のオンプレミスとクラウドのさまざまなアプリケーションとS/4HANAを統合できる。
規制への順守
- クラウド:プロバイダーがベースラインとなる検証を提供し、実施する。規制への順守は比較的迅速かつ容易に実現できる。
- オンプレミス:規制要件を順守するための全ての検証を、企業が実施しなければならない。このような検証には時間、リソース、費用が必要になる。
スケーラビリティー
- クラウド:スケールアップやスケールダウンは、容易かつ迅速に、費用をあまりかけずに実施できるため、企業の変化するニーズを満たすことができる。
- オンプレミス:スケーリングに必要なリソースを確保するために、長期的な計画と取り組みが必要になる。
S/4HANA実行プラットフォーム:ハイブリッドモデルの検討事項
S/4HANAのハイブリッド導入を検討している企業にとって、コストやセキュリティなどの要素は、導入を実際にどのような組み合わせで行うかに左右される。しかし、全体的には前述のS/4HANA Cloudとオンプレミスの比較が参考になる。そのうえで、ハイブリッドモデルを検討する企業は、以下の要素も考慮に入れるとよいだろう。
- アクティビティーには制限が課され、時間的制約もあるため、開発とテストは全てHANA Cloud PlatformなどのPaaSで実行できる。ただし、完成したソフトウェアはプライベートクラウドにもオンプレミスにも導入できる。
- 製品やサービスのキャンペーンやマーケッティング中など、データの使用量が短期的に急増する場合は、パブリッククラウドを一時的に利用することも検討できる。
- 統合ツールは、ハイブリッドモデルの選択と導入を容易にする。iPaaSは、アプリケーション、データ、プロセスを統合するシナリオを対象に、S/4HANAとSAPエコシステムにクラウドサービスを提供する。統合ツールは、クラウドとクラウド、クラウドとオンプレミス、オンプレミスとオンプレミス、B2Bの統合をサポートする。
- ハイブリッドモデルを利用する場合、クラウドの保守作業がクラウドとオンプレミスシステムとのデータフローに影響する可能性があるため、システムの保守については慎重に検討する必要がある。例として、SAPが提供するオンプレミスの「Human Capital Management(HCM)」システムとクラウドベースの「SuccessFactors」がある。
- ハイブリッドモデルでは、設備投資が運用費に代わる。これが、ハイブリッドモデルを選ぶ主な動機でもある。
企業は、関連する検討事項と考え合わせながらS/4HANAの実行プラットフォームを比較する必要がある。だが、プロジェクトを成功させるためには調査とデューデリジェンスを実施する価値がある。
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