ビジネスへの応用の期待が高まる
徐々に進化する量子コンピューティング IBMやGoogleは何を狙う?
技術ベンダーや技術ユーザーのおかげで、量子コンピュータのツールや研究が前進している。実用化はまだ先かもしれないが、この分野の開発は注目に値する。
まだ研究段階にあるとはいえ、量子コンピュータの利用は、ビジネスリーダーが注目するところまできているようだ。
機械学習とAI(人工知能)は、広い意味では今後の量子アプローチの素材になるとみられている。量子論で対応する最初の候補分野としては、化学シミュレーション、暗号、材料科学などが挙げられるだろう。本稿執筆時点の量子コンピュータの適応は、次のような状況にある。
量子テクノロジーはビジネスに何をもたらすのか
量子コンピューティングに本気なMicrosoft
量子コンピュータの利用状況
- 自動車製造のVolkswagenがドイツのハノーバーで開催されたテクノロジーショー「CEBIT」で、Googleの協力を得て、バッテリーの量子コンピュータ研究において一定の成果を得たと発表した。
- スタートアップ企業のStrangeworksが、航空宇宙、薬学、エネルギー、金融業界を対象に量子コンピューティング向け開発ツールを提供する計画を非公開で立案していたことを明らかにした。
- IBMが「ACQUA」(Algorithms and Circuits for Quantum Applications)を発表した。ACQUAソフトウェアは、以前から利用可能なソフトウェア開発者向けIBM量子情報科学キットと併用する。化学、最適化、AIなどの分野の専門家は、この組み合わせを利用して、IBMクラウドのIBM量子コンピュータ上で従来のアルゴリズムを実行できる。
量子コンピュータの利用は、まだ従来の高水準コンピュータを明らかには超えていないが、期待は高まっている。「今後、量子が支配権を握る」と表現することもある。
量子コンピュータは、まだ多くが解明されていない原子スケールの量子力学に基づき、データの処理量を大幅に増やせる可能性があることが話題になっている。量子アプローチは過去の従来型コンピュータを変えてしまうかもしれない。従来型のコンピュータは「0」の状態と「1」の状態のいずれかをサポートする。だが、量子アプローチはこの2つの状態に加えて「0かつ1」という矛盾した状態と「0または1」という曖昧(あいまい)な状態もサポートする。
身近になる量子の考え方
量子コンピュータの応用に関する最近のニュースからも分かるように、その取り組みは研究指向になりやすい。論理レベルで実証されてから20年以上たつが、量子コンピュータはまだ進化の途上にあるようだ。それでも、身近にはなってきている。
調査会社Forresterでアナリストを務めるブライアン・ホプキンス氏には、これに対して1つの見解を持つ。同氏は長年にわたって量子コンピュータを見守ってきたが、ビジネスリーダーがその動向に目を向けるほどには身近になっていないと認めている。実現までの時間の見積もりにはまだ「誤差」はあるとしている。
「期間としては2~3年、それが無理でも確実に5年以内には、特定の業界に特化した、誤差修正を必要としない量子コンピュータが実用化されるだろう。こうした情報を察知して適切な投資ができるリーダーは、先見の明を生かしてメリットを得る立場になれるだろう」(ホプキンス氏)
量子コンピュータが高精度になると、量子コンピュータは特殊システムと汎用(はんよう)システムに分岐するとホプキンス氏は話す。
特殊システムは、個々の問題を解決する。これに対して、汎用システムは、あらゆる種類の問題に対処する。量子分野での誤差修正は、デジタル回路の誤差修正とはやや異なる。
ホプキンス氏によると、長時間実行されるジョブは、安定した量子の状態(ビット)を維持しようとする量子システムの機能にストレスを掛ける。量子コンピュータの誤差修正では、多数の物理量子ビットからより少数の安定したフォールトトレラント(一部の不具合があってもシステムが動作を続けるような設計)の論理量子ビットを生成することになると同氏は記している。
量子コンピューティングを学習すべき技術開発者
さまざまな種類の量子コンピューティングの将来的な進捗(しんちょく)を把握するため、技術部門のリーダーは、量子コンピューティングの基礎を学び始めなければならないとホプキンス氏は続ける。科学が中心になる業界ならなおさらだ。
そのような業界のリーダーは、「さまざまな種類の量子コンピュータの進化に目を向け、ビジネスの課題に役立つ専門分野で量子コンピュータが支配権を握るタイミングを把握する」必要があると同氏は話す。
「化学製造業に従事しているなら、研究者が量子化学において量子コンピュータの優位性を証明する時点を把握する必要がある。例えば、GoogleとIBMが、量子化学の何らかの課題を理論に基づいて解決できる特定の量子アルゴリズムを量子コンピュータ上で実行でき、構築できるという発表を把握する必要がある」(ホプキンス氏)
ホプキンス氏は最近Forresterのブログで、量子コンピュータ応用の現状を報告している。
大手技術企業が量子分野に参入
量子に取り組む企業の中でも、D-Wave Systems、Google、IBM、Microsoftなどは、機械学習、ニューラルネットワーク、AI(人工知能)にも関心を寄せている。だが、特にGoogleはAIを念頭に量子への取り組みをしているとホプキンス氏は話す。
「Googleの取り組みを理解する鍵は同社の研究所の名前にある。その名前は『Google Quantum AI Lab』だ。この名前にしたのは、量子コンピュータの主要アプリケーションがAIを高速化すると考えているためだ」(ホプキンス氏)
量子コンピューティングの歴史は長い。量子分野での一定の技術進歩が非常に有益であることは、将来の深層学習システムのトレーニングを成功させるために必要な全てのデータから、徐々に明らかになっていくだろう。
ホプキンス氏を始めとする量子愛好者は、これからの動向に目を向けるよう呼びかけている。
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