サポート、カスタマイズ、安定性を重視
AWS、Google Cloudの転換 企業利用の増加で普通の会社になる?
大規模クラウドベンダーが驚くべき速さで成長し、ビジネスの仕方を刷新した。これは素晴らしいことだが、修正が必要な問題でもある。
現在クラウドへの投資が十分でないとしたら、IT業務を正しく遂行していない“罪”を犯している――。これはもちろん言い過ぎだが、クラウドによるイノベーションを誰もが話題にする今、多くのIT担当者がビジネスリーダーから感じるプレッシャーはこの罪の感覚と同じものだ。
米サンフランシスコで開催されたカンファレンス「Google Cloud Next '18」で、Googleは同社のクラウドが「大企業向けの準備ができた」と高らかに宣言した。明らかにこの宣言の目的は、セキュリティと安定性についての懸念を緩和すること、そしてAmazon Web Services(AWS)、Google、Microsoftの大手クラウドベンダー3社の競争が激化する中で、大口顧客を取り込むことにある。だがこの宣言は、クラウドベンダーが優先するマーケティングメッセージと、企業のIT担当者が直面する現実とのずれを明確にしてもいる。
成功の裏にあったクラウドベンダー特有の問題
カンファレンスの数週間前、Googleのクラウドビジネスが厳しい批判にさらされた。同社の自動化された詐欺防止システムが、顧客がビジネスを継続するうえで不可欠なプロジェクトを警告なく停止したのだ。この顧客は、「Why you should not use Google Cloud」(Google Cloudを利用すべきでない理由)と露骨にタイトル付けしたメッセージを公開し、Googleからの公式の謝罪と、方針変更の確約を求めた。見方を変えれば、この件は自動化による異常動作に対する教訓であり、すなわちAI(人工知能)テクノロジーが進化しても人間の代わりにはならないという警告でもある。
このGoogleに対する批判は、大手クラウドベンダーが直面する大きな問題を示している。
GoogleとAWSのクラウドサービスは、長期間にわたってIT業界に影響を与える革新的で破壊的なテクノロジーだ。だが両社はもともと、企業向けのベンダーとして誕生したわけではない。ある意味では、それがサービスの初期成長を加速した。両社は収益を生み出すために課題が残る製品を世に送り出すことを急いだが、それが早期の成功を妨げることはなかった。早めに失敗することで影響を最小限にとどめた。両社はレガシーシステムを維持する必要もなかった。クレジットカードで誰もが手軽に利用できる従量課金制のインスタンス(仮想サーバ)が成長を促し、コンピューティングリソースのコモディディ化を引き起こした。
とはいえこの手軽さが、クラウドベンダーに独特の問題をもたらす。ペットプロジェクト(個人的な関心による取り組み)、開発者による実験、シャドーIT(組織に承認されていないサービスの利用など)として始まったインスタンスが、必要不可欠な要素へと急速に姿を変えた。ベンダーにとって鍵になるのは、追加コストを要求してビジネスレベルのサポートを提供することだけではない。全てのサービスをビジネス向けのサービスとして見直すことも必要になる。この目標を実現する方法は1つしかない。ペースを落とし、もっと多くの時間を費やすことだ。
大手クラウドベンダーは、リソースを最大限に活用し、自動化により人件費を最小限に抑えることで利益を生み出している。だがGoogleの例が示すように、大手クラウドベンダーが企業顧客をつなぎ留めるには、ペースを変えることを覚えなければならない。企業顧客が求めているのは機敏性ではない。代表的なクラウドベンダーがそれぞれの顧客に提供している以上の手厚いサポート、カスタマイズ、安定性を必要としている。大手クラウドベンダーが大企業をターゲットにするには進化を続け、IT担当者のクラウドに対する考え方を変えなければならない。
まさに今この転換が進んでいる。2017年、AWSはVMwareと協業して、VMwareのハイパーバイザー「VMware ESXi」を運用するホスト全体の提供を開始した。AWSが広めた容易に利用できる手軽さを持った秒単位で課金されるモデルと比べると、このサービスは昔に戻ったように感じられる。これは、企業顧客の要請に応える方法を学ぶ上で間違いなく重要な経験になる。
一見、新しいサービスを先駆けて提供する大手パブリッククラウドベンダーと、昔ながらのソフトウェアを販売する実績ある企業が手を組むのは不思議に思えるだろう。だが、これはテクノロジーだけの問題ではない。VMwareや実績あるITベンダーの多くは、企業顧客を育ててきた経験がある。この経験がクラウドベンダーにはない。
2019年になると、クラウドベンダーはさまざまなレガシーベンダーとの関係を深めるだろう。クラウドによるイノベーションが減速し、従来型のクラウドサービスは刺激的ではなくなるだろう。IaaS(Infrastructure as a Service)はレガシーのワークロードに適した安定したプラットフォームへ進化し、顧客を煩わせるアップデートはほとんどなくなるだろう。現在のハイパースケールベンダーによるITイノベーションの独占状態は今後10年以内に弱まるだろう。こうしたベンダーは、現状を維持し長期的関係を守るための投資を増やす。これはIT業界の自然なサイクルだ。リスクや混乱を生むことなくクラウドの柔軟性を手に入れたい顧客のメリットになる。
知らない間に別の新しいテクノロジーが出現し、話題になり、物事を変え、クラウドによるイノベーションと同じようにIT担当者に刺激を与えるだろう。ただしイノベーションには、常にリスクが付いて回ることを忘れてはならない。
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