他の企業よりも迅速に復旧できたワケ
ハリケーン直撃で水没した企業はAWSでいかにデータを保護したか
2017年、ハリケーン・ハービーがGS Marketingのオフィスビルを襲った。同社は業務の基幹機能をAWSに移行していたため、オンプレミスのデータセンターが水没したものの、被害を最小に食い止めることができた。
マイケル・ウェブ氏とジョエル・スウィフト氏が、米ヒューストンを拠点とするGS Marketing(GSM)に入社したのは2016年のことだ。現在、ウェブ氏はエンジニアリング部門のバイスプレジデントを、スウィフト氏はDevOps部門のディレクターを務めている。両氏は入社と同時に、GSMのデータをAmazon Web Services(AWS)へ移行する計画を立てた。その頃、GSMは自動車のマーケティング会社から、自動車の枠を超えてさまざまな製品を扱う「オムニチャネル」のマーケティング企業へと変身を遂げようとしていた。
事業拡大を続けるGSMがオンプレミスで保持できるデータ量は既に限界に達していた。ウェブ氏とスウィフト氏がAWSへの移行が必要だと考えたのはそのためだ。ウェブ氏は「今後、必要になるデータや分析機能について2人で話し合った。その結果、オンプレミスで設備を増設し、今後必要になる機能を構築することは望ましくない、という結論でわれわれは一致した」と話す。
判明した災害時の課題
GSMはデータストレージとバックアップについて、従来のオンプレミス型の方法をとっていた。全てのデータをヒューストンのオフィスビルにあるサーバルームに収容していた。この方法は問題なく思われるが、ディザスターリカバリー(DR)計画に関しては不十分な点が少なくなかった。
ウェブ氏は当時の姿勢を振り返って次のように話す。「当時はオンプレミスで最善の設備を構築しようとしていた。だがDR計画のテストを進める中で明白になったのは、実際の災害ではシステムが生き残る手段がないということだった」
そのため、AWSへの移行が正しい選択肢であるとウェブ氏とスウィフト氏は考えた。
2017年8月、「ハリケーン・ハービー」が襲来した。その時、GSMのAWSへの移行作業は約40%完了していた。暴風雨が吹き荒れ、GSMのオフィスビルが洪水で浸水し、空調が故障した。GSMにとって幸いだったのは、「Salesforce」など停止すれば事業にとって致命傷になりかねないシステムや、「Slack」「Office 365」といったコミュニケーションツールのAWSへの移行は既に完了し、クラウドで機能していたことだ。
オンプレミスで機能していたのはOracleのデータベースや、会計、電話などのバックオフィスシステムだった。こうしたバックオフィスの機能を通常の状態に戻すのに約1週間を要した。
「テキサス州オースチンに人を向かわせ、コロケーションプロバイダーにスペースの確保を依頼し直した。コロケーションプロバイダーのスタッフはボートで当社のオフィスビルにこぎ入れ、オンプレミスのサーバを解体し、オースチンまで運んだ」(ウェブ氏)
GSMのサーバは50度近くまで上昇した大気にさらされたものの、約95%のサーバが移設され、復旧した。AWSに約40%を移行させていたため、数十TBのデータが永久に失われる事態は避けられ、同社はこの災害を切り抜けることができた。オフィスビルの1階フロア全体が浸水の被害を受け、従業員がそのフロアに戻るまで1年近くを要する状態だった。
GSMは近隣の大半の企業よりも復旧状況が良好だった。それはGSMがDR計画を適切に実行したためだ。
「ヒューストンに拠点を置く他の企業が、電子メールの復元と通信回線の確保に四苦八苦していた。当社はそうした作業を早期に終え、ダウンタイムを最小限に抑えられた」(スウィフト氏)
GSMのDR計画が適切に機能した理由は、AWSへの移行だけではない。もう一つの重要な要素は、オフィスに誰もいなくても、従業員全員がコミュニケーションを取れる計画を練っていたことだ。
「大災害が発生すると、仮にオフィスは機能する状態だとしても、大半の従業員がオフィスビルまでたどり着くことができなくなる」(ウェブ氏)
GSMのAWSへの移行は継続している。最終目標は、コンプライアンスの理由によってオンプレミスで実行しなければならない業務を除いて、全てをAWSに移行することだ。ハリケーン・ハービーが襲来する前、GSMの経営陣は、パブリッククラウドのサーバに自社のデータを委ねることに懸念を抱いていた。だがハリケーン・ハービーの襲来後、経営陣の姿勢は変わった。
ウェブ氏は当時のDR計画に関して、1つだけ異なる対処が可能だったと振り返る。それは「できる事なら、もっと早く全てをクラウドに移行していただろう」ということだ。
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