ユーザー自身がもたらす脆弱性を排除するには
パスワードはなくなるのか 2要素認証に熱視線を送るIT担当者たち
ハッキング侵害の81%はパスワードの盗難や脆弱(ぜいじゃく)なパスワードが原因になっているという報告があることから、IT担当者はパスワード認証ではなく2要素認証に目を向けつつある。
ITプロフェッショナルがユーザーパスワードと認証の管理戦略を立案する場合、セキュリティとユーザビリティーという2つの重要な基準を考慮する必要がある。
ITプロフェッショナルは、唯一の認証要素としてパスワードに依存する状況を最小限に抑えようとしている。ハッキング侵害の81%は、パスワードの盗難や脆弱(ぜいじゃく)なパスワードが原因になっているためだ。これはVerizon発行の「2017 Data Breach Investigations Report」(2017年版データ侵害調査レポート)で報告された内容だ。他の種類の認証を追加してユーザーパスワードを補完する(または置き換える)ことで、ユーザビリティーを損なうことなくセキュリティを確実に強化できるという。
「端的にいえば、全世界がパスワードの問題を抱えている」と2018年6月に開催された「Identiverse」カンファレンスのセッションで話したのは、認証関連の業界団体FIDO Allianceでエグゼクティブディレクターを務めるブレット・マクダウェル氏だ。
パスワードのない未来
検証要素を1つだけ必要とする種類の認証の安全性を高めるには、複雑で予測しづらいパスワードを採用することだ。だが、そうすればユーザビリティーが犠牲になる。パスワードを複雑にさせ、業界標準の90~180日おきにそれを更新することを要求する。こうした状況は、パスワードだけではセキュリティとユーザビリティーを同時に満たせないことを表している。
「非常に複雑なパスワードを作成して記憶するようユーザーに求めるIT部門は、仕事をしているとはいえない」と指摘するのは、金融機関Fannie Mae(連邦住宅抵当公庫)でサイバーセキュリティマネジャーを務めるドン・ドゥスーザ氏だ。
現在のITプロフェッショナルは、パスワードを補完するため、生体認証や暗号化手法を利用する2要素認証に目を向けている。FIDO Allianceは、現在の形式のパスワードを完全に排除する2要素認証を推進している。
マクダウェル氏は、認証方式を以下の3つのカテゴリーに分類する。
- 従来のパスワードやPINなど、記憶する方式
- モバイルデバイスやトークンなど、所有する方式
- 生体認証手法を含め、音声、指紋、ジェスチャー認識など、ユーザー本人を示す方式
FIDO Allianceでは、上記の中でも後半2つのオプションに切り替えることを推奨している。「狙いは、ユーザーがもたらす脆弱性を取り除くことにある」(マクダウェル氏)
パスワードの自主管理をユーザーから取り除くと、多くの場合、セキュリティが強化される可能性がある。フィッシングの場合は特にそれが当てはまる。ユーザーがフィッシングメールに引っ掛かったとしても、2要素認証が正しく機能していれば、アクセスに暗号や生体認証を利用できないハッカーは、そのユーザーの認証を悪用できない。
「単一要素認証としてユーザーパスワードを使用する場合、フィッシングに対する実際の防御策はテストと教育以外にない」(ドゥスーザ氏)
新たな種類の認証を使うメリット
新たな種類の認証を追加すると、特権アクセス管理(PAM)やユーザー情報を最新に保つ作業に関して、IT部門の負担が増大する。だが、パスワードから完全に脱却すれば、認証情報にアクセスしただけでは不十分なため、そのような情報へのアクセスを試みるハッカーについてIT部門が悩む必要はない。また、アカウントにアクセスする権限を減らすメリットもあると話すのは、General Electric(GE)で技術主任を務めるケン・ロバートソン氏だ。
強力な種類の認証を適切に利用すれば、IT部門はこれまで以上に安心して、単純な管理業務をユーザーに引き継ぐことができる。その際は、アクセスをユーザーのデスクトップPCに制限するのが肝要だ。ただし、ITプロフェッショナルはアクセス権の管理を手放すことには前向きになれないかもしれない。
「一般に、パスワード管理はPAMプログラムから開始する。だが、ログオンを制限することで、脆弱性は最小限に抑えられる」(ロバートソン氏)
企業は、パスワードを含まない多要素認証に切り替えているが、こうした変化はすぐには表れないだろう。
「この先数年で、さまざまなシステムで数多くの2要素認証を目にするようになるだろう。誰もがユーザーパスワードを制限する方向に目を向けている」(ドゥスーザ氏)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
「Excel至上主義」の終わらせ方 丸2日の手作業地獄から情シスと現場を救うには
-
2
取手市がVDIと決別した理由 更改費用「4倍超」を約1.7倍に圧縮
-
3
「Microsoft 365のセキュリティ運用」に関するアンケート
-
4
急増する「AIはこう言ってる」マン 判断を狂わせる「AI忖度」を防ぐには?
-
5
221人調査で分かった「情シス最大のストレス」は?
-
6
「Salesforceのテスト自動化ツール」に関するアンケート
-
7
「データストレージの活用方法」に関するアンケート
-
8
IT製品の導入に関するアンケート「サーバ&ストレージ」編
-
9
「AI時代の統合基盤・エンタープライズAI管理」に関するアンケート
-
10
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
年収2000万「クラウドセキュリティのプロ」になれる資格とは
-
2
セキュリティソフトをすり抜ける標的型攻撃メール、不審メールの見破り方とは?
-
3
Windows Updateの通信集中で回線が逼迫、ネットワーク刷新事例に学ぶ解決策
-
4
財務を戦略的組織へ進化させるAI活用術、4つの主要な障壁と解消方法
-
5
「NAS」「SAN」「DAS」は何が違う? いまさら聞けないストレージの基礎
-
6
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
7
標的型攻撃メールを見破るには? サンプル文面を例に傾向を解説
-
8
商用利用の安全性を確保し大量のコンテンツを高速で生成する、AI活用の秘訣
-
9
マンガで解説、1日で生成AI環境を構築できるワークショップの中身とは?
-
10
Dark AIが台頭する時代の新発想、「より高度なAIで対抗する」具体的方法とは?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー