生成AI×ナレッジグラフで「顧客の真意」をあぶり出す
「リサーチに数カ月」はもう限界 パナソニックがVoC分析を“数日”に変えた執念
週十万件の顧客の声(VoC)に埋もれ、仮説立案に数カ月を要していたパナソニック。その停滞を打破したのは、生成AIで「仮想顧客」を生成する禁じ手とも言える手法だった。
パナソニックは、コンタクトセンターに寄せられる膨大な顧客の声(VoC)を分析し、顧客理解を深化させるための新たな仕組みを構築した。システム基盤として、Google Cloudの生成AIプラットフォーム「Vertex AI」やナレッジグラフ技術を採用した。2026年2月5日、Google Cloud Japanが発表した。従来は初期仮説の形成までに数カ月を要していたリサーチ工程を数日単位に短縮し、生活者の真意に基づいた迅速なマーケティング施策の立案につなげる。
Vertex AIを選んだ理由と導入の効果とは
日本国内の家電マーケティングを担うパナソニックのコンシューマーマーケティングジャパン本部は、顧客との長期的な関係構築を目指し、コールセンターに週あたり十数万件規模で蓄積されるVoCの活用を推進している。しかし、情報の多くが自由記述形式であるため、必要な情報の探索や背景の読み解きに多大な負荷がかかり、実調査の企画までに2カ月から3カ月を要するケースがあるなど、活用の非効率性が課題となっていた。
こうした課題に対し同本部は、VoCから抽出した行動傾向や価値観をもとに生成AIが代表的な顧客像を再構成する「AIペルソナ」を用いたバーチャルリサーチを導入した。AIペルソナと対話することで、一見単純な不満の背後に潜む文脈や切実な困りごとを短時間で把握可能となった。初期仮説の到達までにかかっていた期間は、数時間から数日にまで短縮されている。
AIペルソナの精度を支える基盤には、ナレッジグラフを活用した。Cloud Storageに保存されたVoCの要約情報を「Gemini」によって構造化し、データベースサービス「Spanner」上でグラフ構造として再構築している。出来事や感情、背景、意図を意味単位で結びつけることで、特定の条件に紐づいた発言を文脈ごとに引用可能にした。さらに、バーチャルインタビューで得られた新たな気づきをグラフに書き戻すことで、顧客理解の土台を継続的に更新する構造を整えた。
システムの運用面では、Webアプリケーションの実行環境に「Cloud Run」を、データの保存に「AlloyDB」を採用し、社内ユーザーが手軽に利用できる環境を構築した。これにより、従来は多額の費用と時間を要していたリサーチを、日常業務の延長として安価かつ迅速に実行できるようになった。
パナソニックコンシューマーマーケティングジャパン本部の若松氏は、「バーチャルリサーチの導入により、誰もが短期間で顧客理解の7合目に到達し、次のアクションを後押しできるようになった。今後はサードパーティーデータの取り込みによる生活者像の立体化などを進め、顧客に寄り添う視点からくらしの質を豊かにするビジョンを実現していきたい」としている。
(※)この記事は本多和幸氏と谷川耕一氏によるIT事例メディア「CaseHub.News」に掲載された「パナソニック、生成AIとナレッジグラフで顧客理解を高速化 リサーチ期間を大幅短縮」(2026年2月5日)を、TechTargetジャパン編集部で一部編集し、転載したものです。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品レビュー
[Dropbox Japan株式会社] ランサムウェア対策で見直したい「復旧できるファイル基盤」とは? -
製品資料
[Dropbox Japan株式会社] さよならファイルサーバー クラウドストレージへの移行はこう進める -
比較資料
[セコムトラストシステムズ株式会社] 「EDR」選定ガイド:比較・検討フェーズで整理すべきポイントを解説 -
製品資料
[株式会社キーエンス] 過去にRPA導入をあきらめた企業こそ知っておきたい 失敗しない自動化導入術 -
製品資料
[株式会社キーエンス] 自分ひとりでデスクワークを効率化 「AI&ナビ搭載RPA」で実践する業務自動化
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
鹿島建設のDXを阻む「10年前のAWS」 安全性と自由度を両立したモダナイズ
-
2
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
3
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
4
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
5
情シスの約8割が転職や退職を意識 調査で分かった“辞めたくなる最大の理由”
-
6
IT製品の導入に関するアンケート「PC&デバイス」編
-
7
【漫画付き】ひとり情シス協会が明かす、RAG導入でしくじる企業「2つの共通点」
-
8
IBM iのブラックボックス化を打破 資産継承と進化を実現する「IBM Bob」の実力
-
9
脱VMwareの前提が崩れる BroadcomのVDDK公開停止で確認すべき点
-
10
「結局使わなくなる」Microsoft 365 Copilotを半年で定着 キリンの3施策
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
3
LLMが兵器化? 元FBI高官が鳴らす警鐘とセキュリティツール統合のポイント
-
4
財務部門がAIを最大限に活用する方法 無駄のない戦略的リーダーシップへの道
-
5
生成AIを開発に導入しても効果が見えない? 実証実験で分かった成果と課題
-
6
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
7
システムの保守がモダン化を阻む? 「変えない判断」から脱却する方法とは
-
8
経産省DX指針から読み解く、受発注業務デジタル化ロードマップ
-
9
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
10
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー