他社サービスと連携可能
1求人当たり平均4時間を削減 LinkedInが10億人データを活用するAIエージェントを公開
LinkedInは、採用業務を自動化するAIエージェントを発表した。その効果のほどと、エージェントの中身は。
ビジネス向けSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)「LinkedIn」は、採用業務を自動化し、業務時間の短縮を可能にする人工知能(AI)エージェントを開発した。
LinkedIn Talent Solutionsでエンジニアリング担当バイスプレジデントを務めるプラシャンティ・パドマナバン氏は、「採用プロセスの中で手作業が多い工程を洗い出した。複数の段階にまたがるワークフローをAIエージェントが自律的に実行する時代に入った」と述べる。
LinkedInによると、1つの求人を埋めるために発生する採用担当者の作業時間を平均4時間短縮できる。従来手動で実施してきた候補者のプロファイル作業を62%削減することも可能だ。
採用向けAIエージェント「Hiring Assistant」は、LangGraphの「LangGraph」というエージェントオーケストレーションフレームワークに構築されている。これにより、LinkedInの10億人規模の会員データベースを検索し、採用チーム向けに候補者を特定する。「結果だけでなく、なぜその候補者が最適と考えるのか。その理由や根拠も示す」とパドマナバン氏は述べる。
採用市場では要件に見合った採用候補者の獲得が困難になりつつある。LinkedInが公表したデータによれば、アジア太平洋地域の主要市場で、約4人に3人の採用担当者が適格人材の確保が大幅に難しくなったと回答した。
一方、汎用(はんよう)LLM(大規模言語モデル)は専門性の高い企業採用の要件に十分対応することが難しい。そのためLinkedInは、スキルや転職履歴、職業上の関係性に関する膨大なデータでファインチューニングした複数モデルを組み合わせている。この設定によって、Hiring Assistantは採用担当者が自然言語を使って投げる質問や回答を解釈し回答できる。
企業の最高情報責任者(CIO)や人事部門の責任者にとって、AIエージェントを既存の人事管理アプリケーションに統合できるかは重要なポイントだ。Hiring Assistantを使えば、採用からオンボーディング、従業員エンゲージメント、研修までを一元管理できる。
パドマナバン氏によると、LinkedInが提供する採用機能は、WorkdayやSuccessFactorsといった主要な人事プラットフォームや応募者追跡システム(ATS)と連携できる。これにより、LinkedIn側のデータと企業側の候補者記録を照会することが可能だ。
Hiring Assistantは、LangGraphの階層型アプローチを採用している。以下の構成で、スーパーバイザーエージェントとサブエージェントが常時連携する仕様だ。
- スーパーバイザーエージェント
- 採用担当者が自然言語で入力した依頼を解釈し、やるべきタスクを判断してサブエージェントに振り分ける。
- サブエージェント
- LinkedInやASTでの検索や採用候補者の評価、スカウトメッセージの作成といったタスクを個別に実行し、その結果をスーパーバイザーに報告する。
LinkedInは、AIエージェントのメモリやコンテキスト管理、バージョン管理にも注力している。プロンプトの変更履歴の追跡や、ロールバックも可能だ。
Hiring Assistantが効果を発揮するには、サブエージェントやセッションをまたいで文脈を保持する能力が必要だ。特定の経験レベルの候補者を優先して探す場合、その条件は将来の検索や対話にも反映されるようになっている。
バイアスのリスクについてパドマナバン氏は、「ヒューマン・イン・ザ・ループ」(HITL:Human-in-the-Loop)型アプローチを採用しているという。Hiring Assistantには根拠を提示させ、最終判断は採用担当者が下す。
「Hiring Assistantが自律的に意思決定することはない。重労働を担い、明確な証拠とともに理由を示すのが役割だ」(パドマナバン氏)
Hiring Assistantを早期から導入してきた企業に、United Overseas Bankやブロックチェーン技術企業OKXがある。
LinkedInがシンガポールで開催した人事イベント「Talent Connect」、United Overseas Bankの人材獲得責任者、ジェイ・チャン氏が登壇した。同氏は、投資対効果を経営層に説明する際にHiring Assistantが役立ったという。
OKXでシンガポールおよびマレーシア担当人事責任者を務めるトレイシー・マオ氏も効果を報告した。候補者マッチングは手動で実施する方法を上回り、採用担当者の作業時間を約6~8時間短縮できたという。
Hiring Assistantは、「LinkedIn Recruiter」と呼ばれる有料アカウント契約を結ぶユーザーが利用可能だ。
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