運用効率と柔軟性を両立へ
20年以上有線LAN環境だった山形県が基幹ネットワークを刷新 起こったうれしい変化は
山形県は、県庁や出先機関の業務を支える基幹ネットワークを再構築した。20年以上有線LAN環境のみで業務を続けてきた同県に起きた変化を紹介する。
山形県は、県庁および出先機関の業務を支える基幹ネットワーク「山形県情報共有基盤」を再構築した。基本設計から機器調達、環境構築、運用設計までをネットワンシステムズが一貫して担当し、今後5年間にわたって運用業務も担う。2026年4月16日、ネットワンシステムズが発表した。庁内LANの高速化や無線化、認証基盤の強化を短期間で実現し、将来的なゼロトラストセキュリティやSASE(Secure Access Service Edge)への拡張性を備えたデジタル基盤を整備した。
山形県では、行政のデジタル変革(DX)を推進する中で、「働き方改革を視野に入れた無線LANの導入」「セキュリティ対策の強化」「業務効率化」など、多角的な観点から次期基幹ネットワークの在り方を検討していた。従来のネットワークは、有線LAN接続を前提とした構成や複雑なアクセス制御が要因となり、柔軟な業務環境への対応や効率的な運用管理の面で課題を抱えていた。
今回の再構築では、従来の有線LAN中心の構成を見直し、無線LANを主軸とするネットワーク基盤へと転換した。約4000台規模の端末移行も円滑に進め、職員が場所に依存せず業務を遂行できる環境を整備した。
一見すると単なるネットワーク刷新に見えるが、何を変えたことが“働き方の転換”につながったのか。
ネットワーク刷新で起きた変化とは
今回の取り組みの本質は、単なる通信インフラの更新ではない。従来の「有線LANを前提とした業務環境」そのものを見直し、ネットワークの設計思想を転換した点にある。
まず大きいのは、無線LANを主軸とした構成への移行だ。有線接続を前提とした環境では、職員の業務は物理的な席に縛られる。一方、無線を前提とすることで、庁内のどこでも同一の業務環境を利用できるようになった。この変化が、「自席でしかできない仕事」からの脱却を後押しした。
ただし、無線化だけでは運用は成り立たない。そこで山形県は、認証基盤の統合と証明書配布の仕組みを整備し、利用者側で複雑な設定を必要としない環境を構築した。これにより、約4000台規模の端末移行を現場の負担を抑えながら実現している。ネットワークの自由度と、運用のシンプルさを同時に成立させた点が重要だ。
加えて、既存ネットワークで課題となっていた複雑な構成も見直した。ACL(アクセス制御リスト)やファイアウォールポリシーを整理・統合し、1台のルーターで複数の独立したルーティングテーブルを保持できる「VRF」(仮想ルーティング/転送)による分離設計を採用することで、セキュリティレベルを維持しながら構成を簡素化した。安全性と管理性の両立は、この設計の見直しによって実現している。
運用面では、統合管理基盤として「Cisco Catalyst Center」を導入し、有線・無線ネットワークを一元的に管理できる体制を整えた。ネットワーク全体の可視化と集中管理により、約500~600台規模の機器更新を重大なトラブルなく完了し、2026年2月から安定稼働を開始している。結果として、運用負荷の軽減と安定運用の両立が可能になった。
さらに、今回の基盤整備では、災害時に応援職員や関係機関が利用するネットワークも構築した。このネットワークは平時には来庁者向けの公衆無線LANとして公開され、認証済みIDで安全に接続できる「OpenRoaming」(オープンローミング)にも対応する。平時と非常時を切り分けず、同一基盤で活用する設計も特徴の1つだ。
こうした一連の取り組みによって、山形県はネットワーク刷新を単なるインフラ更新にとどめず、「場所に縛られない働き方」と「運用負荷の低減」を同時に実現した。山形県みらい企画創造部DX推進課長の笠島信行氏が「仕事のやり方を変える重要なターニングポイント」と位置付ける背景には、こうした設計思想の転換がある。
今後は、ネットワンシステムズが5年間の運用管理を担いながら、基盤の安定稼働と継続的な改善を進める方針だ。今回整備されたネットワークは、ゼロトラストセキュリティやSASEといった新たなアーキテクチャへの対応も見据えた拡張性を備えており、将来的なICT基盤の高度化の土台としても機能する。
(※)この記事は本多和幸氏と谷川耕一氏によるIT事例メディア「CaseHub.News」に掲載された「山形県、基幹ネットワークを刷新 ネットワンがゼロトラスト見据え一貫支援」(2026年4月16日)を、TechTargetジャパン編集部で一部編集し、転載したものです。
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