高年収層が抱える意外な“後悔”
年収700万超エンジニアに共通するスキルと「もっと勉強すべきだった分野」
クラウドサービスの普及で、インフラの内部構造が見えにくくなっている。そうした中、年収700万円以上のエンジニアの多くが、自身のキャリアを支える共通技術を挙げている。変化の激しいIT業界で生き残る条件とは。
クラウドサービスやコンテナ技術の急速な普及によって、現代の若手エンジニアは、物理的なサーバやネットワーク機器を意識することなく、アプリケーションの開発やシステムの運用ができる便利な状況を手に入れた。しかし、その利便性の裏で、システムの土台となるインフラ技術に直接触れ、その仕組みを深く理解する機会は失われつつある。
こうした現状に対し、第一線で活躍するベテラン技術者は強い危機感を抱いている。特定非営利活動法人エルピーアイジャパンは2026年1月15日から16日にかけて、年収700万円以上のSRE(サイト信頼性エンジニア)やインフラアーキテクトなど、上位ポジションに就くインフラエンジニア110人を対象にキャリア形成に関する実態調査を実施した。
調査の結果、9割近くのベテランが、自身の新人時代に学んだ基礎技術が現在のキャリアやポジションに役立っていると実感していることが判明した。クラウドネイティブな時代にあえてOSやインフラを学ぶ意義が、実務の最前線から示された形だ。
ベテランエンジニアは、なぜここまで基礎学習を重要視するのか。彼ら自身が「もっと学んでおけばよかった」と後悔している技術領域とは何か。調査の詳細な結果から、変化の激しいIT業界を生き抜くための普遍的なスキルが見えてくる。
ベテランが若手に習得を勧める技術とは?
調査対象となった上位インフラエンジニアに対し、新人から若手時代(入社1年から5年目頃)に学んだ技術が現在のキャリアに役立っているかを聞いたところ、「非常にそう思う」(47.0%)と「ややそう思う」(40.0%)を合わせ、87.0%が肯定的な回答を示した。
その理由として最も多く挙げられたのが、「新しい技術を学ぶ際の土台になっているから」(57.5%)だ。次いで「設計やアーキテクチャ検討で生かせているから」(46.0%)、「技術的な判断、意思決定の根拠になっているから」(46.0%)と続く。表層的な操作手順を覚えるだけではなく、その裏側で何が起きているのかという仕組みを理解しておくことが、新たなトレンド技術を習得する際の学習効率を高めている。ベテランエンジニアは、基礎という土台があるからこそ、日進月歩で現れる新技術を的確に評価し、アーキテクチャの設計に組み込むことができると実感している。
一方で、自身の若手時代を振り返り、「もっと勉強しておけばよかった」と悔やむ分野も存在する。回答のトップは「プログラミング/スクリプト言語」(40.0%)であり、「ネットワークの深い理解(パケット解析、L2/L3設計など)」(38.2%)や「データベース(チューニング、大規模DB設計など)」(32.7%)が続いた。これは、インフラの構築や運用をソースコードで管理する潮流の中で、より深いレベルでのネットワークやデータ処理の知識が求められている実態を表している。
「ブラックボックス化」の弊害とトラブルシューティング
現場の若手エンジニアを取り巻く状況は、大きく変化している。「今の若手エンジニアが、OSをはじめとするインフラの基礎技術に触れる機会が減っていると感じるか」という問いに対し、ベテランエンジニアの77.2%(「非常に感じる」の33.6%、「やや感じる」の43.6%を合計)が機会の減少を感じていると答えた。クラウドサービスを用いたシステム構成が標準化されたことで、インフラはブラックボックスとなり、内部の挙動を意識しなくてもシステムが構築できるようになったためだ。
しかし、システムの挙動がおかしくなったとき、あるいは未知の障害に直面したとき、頼りになるのはやはりインフラ技術の知識だ。調査では、77.3%のベテランエンジニアが、若手エンジニアに対して「Linux」などシステムを根底から支える基礎技術の学習を「強く勧める」(35.5%)または「やや勧める」(41.8%)と回答した。
その最大の理由は、「トラブルシューティング能力の土台になるから」(54.1%)だ。システム障害の原因究明において、インフラ部分の知識が不足していると、表面的なエラーメッセージだけでは問題の本質にたどり着くことが困難になる。「クラウドやコンテナのインフラはLinuxだから」(44.7%)という回答もあり、最新技術を活用する上でも、そのベースとなるLinuxの理解が不可欠であることが示されている。自由回答でも「トラブル発生時のリカバリー手段が複数選択できる」「何となく理解していた知識の点と点が線でつながった」といった実体験に基づく声が寄せられた。
実践を通じた体系的な学習の重要性
これからインフラエンジニアとしてキャリアを築く若手に対して、ベテランが最も伝えたいアドバイスは「トレンド技術だけでなく基礎も大切にすべき」(49.1%)であった。具体的な学習方法としては、「業務での実践経験」(48.2%)が最多となり、「自宅でのLinux環境構築・実践」(44.7%)、「オンライン学習サービス」(43.5%)がそれに続いている。
知識を本の中で完結させるのではなく、実際に手を動かしてシステム構成を構築し、エラーを処理する泥臭い経験こそが、エンジニアとしての基礎体力を養う。ベテランエンジニアの84.5%が、自身が勧めるこれらの学習方法について「役に立った経験がある」と回答している。
企業には、目先の業務効率化だけを追い求めるのではなく、若手が基礎を体系的に学ぶことができる研修の機会や、安全に失敗できる実践的な場を提供することが求められる。技術トレンドが急速に移り変わるからこそ、時代に左右されない強固な土台を築くための組織的な支援が欠かせない。クラウド全盛の時代にあっても、目に見えないインフラの仕組みを理解しているエンジニアが、複雑化するシステムの根幹を支え、真のイノベーションをけん引する存在になる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。
TechTarget ニュースプラス
国内のIT業界ニュースを迅速に報道します。企業動向から導入事例、市場トレンドまで幅広く取り上げ、実務に直結する情報をタイムリーに提供する連載です。
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
事例
[サイボウズ株式会社] DXに必要な「Dスキル」「Xスキル」を持った人材を育成するには? -
市場調査・トレンド
[サイボウズ株式会社] データで見る、DXが「順調に進む企業」と「つまずく企業」の違い -
製品資料
[サイボウズ株式会社] 賛否が割れがちな「Notesからの移行」 新環境への移行を納得してもらうには? -
事例
[ServiceNow Japan合同会社] 農林中金に学ぶ内製開発 処理効率を約2倍に高めAI活用も加速させた方法とは? -
事例
[ServiceNow Japan合同会社] NTTグループのデジタル変革術、17万人が利用する決裁プロセス刷新の全貌
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
「VMware離れ」は本当か 3000社がVCF 9にかじを切った現実的な理由
-
2
「ITインフラとデータ保護・バックアップ対策」に関するアンケート
-
3
MS月例パッチが1000件突破 人手不足の情シスを襲う「月1回メンテ」の崩壊
-
4
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
5
「Microsoft 365」が乗っ取られる 跡形もなくMFAを破る手口
-
6
「Microsoft一択」で本当にいいのか 知らぬ間にライセンス費用が膨らむ真相
-
7
「Linuxサーバの長期運用とRed Hat Enterprise Linux」に関するアンケート
-
8
「企業内サーバ環境の利用実態」に関するアンケート
-
9
「AI活用を前提とした業務PCへの移行」に関するアンケート
-
10
Microsoft製品でここまで自動化できる 情シスがやめられる手作業10選
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
生成AIのハルシネーションを防止 回答精度を高めるセマンティックレイヤーとは
-
2
AIエージェントで多様な日常業務を効率化するための入門ガイド
-
3
5回聞くだけじゃ足りない? トヨタ式「なぜなぜ分析」の正しい実践方法
-
4
AIが「わざわざ使うツール」になっていない? 業務で自然に使う導線にする秘訣
-
5
JR西日本ITソリューションズが「監視業務の属人化」を解消した方法とは?
-
6
「脱Excel」か「Excel快適化」か? 現場にやさしい業務改善の進め方
-
7
インシデント対応工数を約3割削減、東京ガスの事例に学ぶ監視体制刷新のコツ
-
8
マンガで解説:「ゼロトラスト」「SASE」の必要性とメリット
-
9
5分で分かる「セキュア大容量ファイル転送サービス」の機能とメリット
-
10
情報セキュリティ対策早分かりガイド:25の自社診断で弱点と解決策を理解
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー