ソフトバンクが国産LLM「Sarashina」提供
高まる「ソブリンAI」への需要 “AIを使いたいがデータは国外に出せない”をどう実現?
ソフトバンクは、国内データセンターで運用するクラウド基盤で、国産LLM「Sarashina」を活用した生成AIサービスを提供すると発表した。企業や自治体の機密データを国内環境で安全に活用したい需要に対応する。
ソフトバンクが、データ主権を重視した生成AI(AI:人工知能)基盤の提供を本格化する。ソフトバンクは2026年4月16日、「Oracle Alloy」を採用したクラウドサービス「Cloud PF Type A」で、国産の大規模言語モデル(LLM)「Sarashina」を活用した生成AIサービスを、2026年6月から順次提供開始すると発表した。企業や自治体における、機密データを国内環境で扱いたいというニーズに対応する狙いがある。
“国内閉域×国産LLM”で生成AIを提供
「Cloud PF Type A」は、ソフトバンクが日本国内のデータセンターで管理・運用するクラウド基盤だ。オラクルの分散型クラウド技術Oracle Alloyを採用し、「Oracle Cloud Infrastructure」(OCI)の200種類以上のAI/クラウドサービスを利用できる点が特徴だ。
今回、この基盤で利用可能になるのが、SB Intuitionsが開発する国産LLM「Sarashina」だ。同モデルは、日本語の高い処理性能や、日本特有の文化・慣習への理解を特徴としている。
Cloud PF Type AでSarashinaを利用することで、企業や自治体が保有する機密情報や内部データを活用した生成AIサービスを、ソブリン性(そのデータをどの国の法律・管理体制の下で扱うかを、利用企業や国内の運用主体がコントロールできる能力)を備えた環境で利用できるようになる。
“AIを使いたいが、データを外に出せない”需要に対応
提供予定のサービスには、文章校正やレポート自動生成、社内ナレッジと連携したプログラミング支援機能などが含まれる。加えて、人と自然な対話を実現するAIエージェントや、複数AIが協調して処理を進める「マルチエージェントシステム」の構築支援も提供する。
背景には、企業や自治体で高まる「生成AIを使いたいが、データを国外クラウドや外部AI基盤へ渡すことは避けたい」というニーズがある。特に官公庁や重要インフラ分野では、データ保管場所や運用主体を重視するソブリンクラウド需要は拡大しつつある。
ソフトバンク 常務執行役員の丹波廣寅氏は、「企業や官公庁では、機密性の高いデータを扱いながらAIを活用したいというニーズが高まっている」と説明。Cloud PF Type Aによって、セキュリティやガバナンスを確保しながら生成AIを活用できる基盤を提供すると述べた。
Oracle Alloyで“自社ブランドのOCI”を展開
今回の基盤で中核となる「Oracle Alloy」は、クラウド事業者や通信事業者が、自社ブランドとしてOCIベースのクラウドサービスを展開できる仕組みだ。ソフトバンクはこれを利用し、日本国内のデータセンターで独自運用するクラウド環境を構築する。
さらにソフトバンクは、オラクルのエンタープライズ向け生成AIサービス「OCI Enterprise AI」や、AIモデルの学習・推論・運用を支えるOCIのAIインフラも展開する予定だ。
日本オラクル 専務執行役員 クラウド事業統括の竹爪慎治氏は、「先進的なAIおよびクラウド機能を備えたソブリン環境は、長期的なレジリエンスやセキュリティ、経済成長を支える上で不可欠だ」とコメントしている。
生成AI市場では、性能競争だけではなく、「どこで」「誰が」「どの法律の下で」AI基盤を運用するかが重要な論点になりつつある。今回の取り組みは、国産LLMと国内クラウド基盤を組み合わせた“ソブリンAI基盤”の構築競争が本格化していることを示す動きといえそうだ。
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