AI再投資を加速させる人員整理の裏側
技術職も聖域ではない 2600人削減のVisaに見る「AI組織転換」の現実
決済業界大手のVisaが、IT・製品チームを対象とする大規模な人員整理を断行した。単なるコスト削減ではなく、AIを「組織の能力」へと昇華させるための構造改革だ。先進企業が突きつける、情シスの新たな生存戦略を読み解く。
米Visaは全従業員の7%を削減し、AIの活用を拡大して業務の「進化」を図る方針だ。これは同社のスタッフ向け内部メモによって明らかになった。
Bloombergの報道によると、ライアン・マキナニーCEO(最高経営責任者)は3万4000人以上の従業員に対し、人員削減の対象が約2600人に上ることを伝えた。主に技術部門と製品部門が影響を受ける見通しだ。
マキナニー氏は「当社、顧客、そしてパートナーにとって正しい決断を下していると確信している」と述べた。全社的な効率化を推進し、成長性の高い分野への再投資に注力する構えだ。
同氏はスタッフに、従業員の働き方を変えるためにAIを活用していると説明した。今後の機会を捉え、Visaをこの変革のリーダーとして位置付けるには、働き方を常に進化させなければならないという。AIはその進化を加速させ、同社での業務の進め方を形作る一助になっている。
同社の決定に詳しい人物の話としてBloombergが報じたところでは、人員削減の背景はAIだけではない。Visaは消費者向け決済、商用決済、資金移動ソリューションへの再投資に意欲的だ。これにはステーブルコインやクロスボーダー決済、B2B(企業間取引)向けのサービスなど付加価値の高いサービスが含まれる。
AI活用で業界をリードするVisaで何が起こっているのか
「AI時代の生存戦略」に関連する編集部お薦め記事
ベンチマーク企業Evident Insights(以下、Evident)が2026年2月に公表したベンチマークレポート「2026 EVIDENT AI INDEX | PAYMENTS: KEY FINDINGS REPORT」でVisaは首位を獲得した。同レポートは、Visaが決済分野のAIアプリケーション導入で業界をリードしており、単なる個別のAI活用事例から「組織としての能力」へと移行してAIが組織の一部として定着している点を高く評価している。
EVIDENT AI INDEXは、北米と欧州の大手決済企業12社が公開しているAIの活用事例約100件を比較したものだ。1位のVisaに次いで、Mastercardが2位、PayPalは3位だった。
一方Evidentによれば、決済企業は銀行とは異なり、AIへの支出に対する投資収益率(ROI)を詳しく公表していない。
EVIDENT AI INDEXは、人材、イノベーション、リーダーシップ、透明性の4つの要素を考慮している。Evidentは、Visaが中核となる取引ネットワーク全体でAIを組織化していることを明確に示していると分析した。
Evidentの共同創設者であるアレクサンドラ・ムサビザデ氏は、レポートの発表時に次のように語っている。「Visaが他社と一線を画しているのは、長年にわたり業務とネットワーク全体でAIを活用し、大規模な影響力を発揮している点である」
一方で、Evidentは懸念も示している。全てのAI投資にわたって、実現した、あるいは予測されるROIを開示している決済企業は1社も存在しないという。
Evidentのもう1人の共同創設者、アナベル・アイルズ氏は、この状況は「ますます目立ってきている」と指摘する。「銀行の5分の1がグループ全体のAI収益を報告しているのに、決済企業はAI投資の総体的な影響をまだ数値化できていない。支出を正当化し続けるためには、遅かれ早かれ、価値の明確な証拠が市場から求められるだろう」
現在、銀行業界はAIから多大な恩恵を受けている。ロイズ・バンキング・グループが2025年に向けて実施した金融機関意識調査によると、調査対象企業の59%が過去12カ月間にAIによる生産性の向上を報告した。前年の調査では32%だったことから、大幅に増加していることが分かる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Computer Weekly発 世界に学ぶIT導入・活用術
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
市場調査・トレンド
[コパード株式会社] 約9割が負担を実感 Salesforceのテスト業務に関する実態調査で見えた課題とは -
市場調査・トレンド
[コパード株式会社] 「Salesforce」開発・運用におけるAI活用実態調査レポート -
事例
[テクバン株式会社] 1画面でITサービスデスク業務が完結 太陽ホールディングスに学ぶデバイス管理 -
製品資料
[デジタルサーカス株式会社] ライセンス無料 Drupalベースの「多言語ECサイト開発用パッケージ」の実力は? -
製品資料
[デジタルサーカス株式会社] 日本発グローバル企業用Drupal「Risley(リズリー)」の実力とは?
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
半数がブルーカラー転向を視野に? ベテランエンジニアを追い込む“54歳の壁”
-
2
法務と開発者で「言葉が通じない」問題 トヨタやソニーが語るOSS管理の真実
-
3
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
4
「レガシーシステム・老朽化システムの運用課題と刷新」に関するアンケート
-
5
脱VMwareか、継続か? 仮想化ソフト主要6製品の運用管理と統制機能を徹底比較
-
6
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
7
ChatGPTは“検索しまくり”でGeminiは“淡泊”? データが明かすAIの裏側
-
8
1回で分かる:仮想マシンを丸ごとバックアップする「VADP」の仕組み
-
9
セキュリティは「情シス任せ」が過半数 漏えい発生時やSCS評価制度の課題は?
-
10
データセンター事業者が「脱VMware」をした“例のライセンス問題”じゃない理由
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
2
システムの保守がモダン化を阻む? 「変えない判断」から脱却する方法とは
-
3
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
4
AI駆動攻撃にどう対抗する? 超速の攻撃からエンドポイントを保護する方法
-
5
なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは
-
6
プログラミング不要で誰でも実現できる、ネットワーク運用管理の自動化とは
-
7
東大教授と考える、AI時代の「データ主権」「信頼性」「ガバナンス」の在り方
-
8
Linux初心者でも知らないとまずい「RHEL」「SLES」の違いとは?
-
9
最速72分でデータが流出? 最新の脅威トレンドや侵入手法から分かった防衛策
-
10
生成AIの活用を阻む「5つの壁」とは? AIネイティブ組織へ変革を遂げる方法
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー