主要npmライブラリ4種を標的に
1億DL超のaxiosも標的 Amazonが警告する北朝鮮発のサプライチェーン攻撃の実態
北朝鮮の国家ハッカー集団がaxiosなど主要なnpmライブラリを汚染し、短時間で10%のクラウド環境に影響を与えた。脆弱性ではなく仕様を悪用し、メンテナーの信頼を奪う「産業化」された攻撃の脅威に迫る。
米Amazonの脅威調査チームは、Node Package Manager(npm)ライブラリの4つの異なる改ざんについて、北朝鮮政府が支援する脅威アクターによるものだと高い確信を持って断定した。
バージニア州アーリントンの本社で開催されたメディア向けラウンドテーブルで、Amazonは証拠を提示した。「axios」「chalk」「debug」「typo-crypto」の各ライブラリの改ざんは、APT38、Sapphire Sleet、Stardust Chollimaなどの名称で追跡されている持続的標的型(APT)アクターによって画策されたという。同グループは、北朝鮮の偵察総局(RGB)に関連するラザルス(Lazarus)グループの傘下で活動している可能性が高い。
2026年3月に発生したaxiosの改ざんでは、JavaScript用のHTTPクライアントで二つの新しいnpmパッケージが作成された。これらには、コマンド&コントロール(C2)インフラに接続し、第2段階のリモートアクセス型トロイの木馬(RAT)を配備する悪意のある依存関係が注入されていた。
axiosパッケージへの攻撃については、以前から特定の脅威アクターとの関連が指摘されていた。しかし、Amazonがグループの攻撃手法をさかのぼって調査した結果、2025年3月のtypo-cryptoの改ざんや、2025年9月のchalkおよびdebugの改ざんの背後にも同グループがいたことが判明した。知名度の低いtypo-cryptoへの攻撃は、目立たずに手法をテストするためのリハーサルだったとみられている。
Amazon Integrated SecurityのCISO(最高情報セキュリティ責任者)を務めるシージェイ・モーゼス氏は、記者団に次のように述べた。「4つの異なるサプライチェーン攻撃の背後に、同一の人物が関与していることを突き止めた。これらをつなぎ合わせると、一連の孤立した事件ではなく、国家アクターによって遂行された組織的な活動であることが浮き彫りになる」
信頼を悪用する巧妙な手法
「サプライチェーン攻撃」に関連して読みたい編集部お薦め記事
モーゼス氏によると、いずれのケースでも、グループはソーシャルエンジニアリングの手法を用いてパッケージメンテナーの信用を獲得していた。その上で、悪意のあるソフトウェア更新をプッシュし、汚染されたバージョンをプルした企業に被害を及ぼした。
この手法は、2024年に発生したデータ圧縮ライブラリ「XZ Utils」への攻撃と類似している。この事案では、攻撃者が数年かけて有益な貢献を行いメンテナーの信頼を得た後、バックドアを忍び込ませようとした。研究者が発見しなければ重大な結果を招く恐れがあった。
「なぜこれが重要なのか。OSSは共有インフラであり、1つのパッケージが改ざんされるだけで一瞬にして数千もの企業に影響が波及するからだ」とモーゼス氏は強調する。
「数年前のXZ Utilsのバックドア事件を思い出してほしい。あの事案では、忍耐強い攻撃者が重要なオープンソースパッケージを侵害し、そこに寄せられた信頼をいかに悪用できるかを示した」(モーゼス氏)
同氏によれば、axiosパッケージは週に1億回以上ダウンロードされている。つまりは毎週のように企業は同コードを本番システムに取り込んでいることを意味する。クラウドセキュリティベンダーWizの調査によると、chalkとdebugの改ざんではわずか2時間でクラウド環境の10%が影響を受けたという。
「OSSを魅力的で汎用(はんよう)性の高いものにしている配布メカニズムを、攻撃者も自分たちの有利なように利用している。北朝鮮にとってこれは金銭的な動機に基づくパターンだ。少数の人気パッケージを改ざんすることで、下流にある数千の環境へほぼ同時にアクセスできる可能性がある」
モーゼス氏は「彼らはオープンソースシステムを破壊しているのではない。設計通りに利用しているだけで、その目的が異なるだけだ」と付け加えた。実際、XZ Utilsの事案以降、ソフトウェアサプライチェーン攻撃の量と巧妙さは増している。その大きな要因となっているのが北朝鮮および関連する脅威アクターやサイバー犯罪グループだという。
Amazonによる対応策
オープンソースのサプライチェーン攻撃による危険性の高まりを受け、Amazonは脅威インテリジェンスチームと脆弱性管理サービス「Amazon Inspector」のチームに投資し、顧客が変化する状況に適応できるよう支援している。
同社はOpen Source Security Foundation(OpenSSF)などの業界パートナーと連携して調査結果を共有している。また、2026年6月にはLinux Foundationと協力し、AIを活用した脅威からOSSを保護することを目的とした「Akrites」プロジェクトを立ち上げた。Amazonはこの取り組みに1200万ドル以上を投じている。OSSのセキュリティは共有責任であるというのが同社の考えだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Computer Weekly発 世界に学ぶIT導入・活用術
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社MatrixFlow] 「物流リソース最適化」ガイド:人員・配車・傭車を出庫依頼の確定前に決めきる -
製品資料
[株式会社キーエンス] なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは -
製品資料
[株式会社セールスフォース・ジャパン] 「CRMは設計と無関係」は本当か? PLMとの融合で実現する高速開発 -
事例
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] AIエージェントの時代にどう備える? 「新たな働き手」を支える3要素とは -
製品資料
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] “横並びの自動化”から脱却、AI活用で生産性と競争力を高める秘訣
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
ChatGPTは“検索しまくり”でGeminiは“淡泊”? データが明かすAIの裏側
-
2
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
3
法務と開発者で「言葉が通じない」問題 トヨタやソニーが語るOSS管理の真実
-
4
情シスの約8割が転職や退職を意識 調査で分かった“辞めたくなる最大の理由”
-
5
「朝8時にバッチが終わらない」データ爆発の危機をJPX総研はどう乗り越えたか
-
6
【漫画付き】ひとり情シス協会が明かす、RAG導入でしくじる企業「2つの共通点」
-
7
「IBM iはDXのボトルネック」は誤解 意外と知らない今風モダナイズの効果
-
8
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
9
「中堅・中小企業のネットワーク・セキュリティ運用実態」に関するアンケート
-
10
AIの導入効果はどう測る? DMM.comのエンジニア組織に学ぶ効果検証のノウハウ
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
3
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
4
プログラミング不要で誰でも実現できる、ネットワーク運用管理の自動化とは
-
5
財務部門がAIを最大限に活用する方法 無駄のない戦略的リーダーシップへの道
-
6
LLMが兵器化? 元FBI高官が鳴らす警鐘とセキュリティツール統合のポイント
-
7
なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは
-
8
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
-
9
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
10
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー