GPU使ってない企業にも関係が?
NVIDIA値上げの波紋 GPU非購入企業にも及ぶ「2027年IT予算」増大のリスク
Bloombergは、NVIDIAがメモリ価格の上昇を受けて製品を値上げする方針だと報じた。その影響は、AI基盤以外にも、幅広いIT支出に及ぶ可能性がある。
NVIDIA製GPUを大量に購入する予定がない企業なら、同社の値上げによる影響は小さい――。そうとは限らないようだ。
Bloombergは2026年8月22日、NVIDIAが、メモリ価格の上昇を背景に製品価格を引き上げる方針であることを明らかにした。その影響はAIインフラにとどまらず、クラウドサービスやサーバ、ストレージ、ノートPCなど幅広いIT支出に及ぶ可能性があると指摘するアナリストもいる。
この動きに対して、企業のIT部門は何に注意すればいいのか。2027年のIT予算には、どのような影響があるのか。
「全社ITコスト」上昇も?
NVIDIAのエグゼクティブバイスプレジデント兼CFO(最高財務責任者)のコレット・クレス氏は、2026年8月の決算説明会で、メモリ市場の価格環境が想定以上に厳しくなっていることを明らかにした。
メモリ価格の上昇を受け、NVIDIAは今後の粗利益率の見通しを引き下げた。同社がサプライヤーに対して今後3年間に予定する購入契約などのコミットメントは2790億ドルに上り、前四半期から2倍以上に増えた。
クレス氏はメモリ価格について、「価格上昇の規模は従来の予想を上回っており、来年に向けてさらに高くなる」と述べた。
同社は2027年1月末に始まる2028会計年度の第1四半期から、値上げの効果が表れるとの見通しを示した。Bloombergはこれに先立ち、NVIDIAが大口顧客に値上げを通知したと報道していた。Bloombergは値上げ幅が15%を超えると報じたが、NVIDIAは具体的な値上げ幅を明らかにしていない。
企業を襲う「2つのコスト増」
NVIDIA製品を直接購入する主要顧客は、ハイパースケーラーや大手AIベンダーだ。しかし、一般企業も値上げと無関係とは限らない。今回のコスト上昇の背景には、GPUそのものだけでなく、さまざまなIT機器で使われるメモリ価格の上昇があるためだ。
調査会社Moor Insights&Strategyのアナリスト、マイク・レオン氏は、NVIDIAの動向から企業は二重に影響を受けると指摘した。
影響の1つ目は、AI利用に関するコストだ。クラウド事業者がAIインフラの調達により多くの費用を支払うことになれば、その影響がクラウドサービスの料金に波及する可能性がある。
もう1つが、通常のITインフラの更新費用だ。メモリはサーバやストレージ、ノートPCなどにも搭載される。そのため、AI基盤を直接導入しない企業でも、2027年に予定するハードウェア更新の費用が増える可能性がある。
レオン氏は、企業は「AIの処理能力が高くなること」と「通常のハードウェア更新が高くなること」の両方を考える必要があるとの見方を示した。同氏が特に懸念するのが、通常のITインフラの更新費用は企業の予算計画で見落とされている可能性があることだ。
レオン氏は、多くの企業が今回の問題をAIだけの問題として捉えており、通常のハードウェア更新費の上昇について「予算化している企業は少ない」と述べた。
自社でAI基盤を構築する企業にも影響
AIを自社環境で運用しようとする企業にとっても、NVIDIAの値上げは新たなコスト要因になる。
AIサービスのトークン料金やセキュリティへの懸念から、クラウドだけに依存せず、オンプレミスでAIを運用する選択肢を検討する企業もある。Dell Technologiesは2026年5月時点で、オンプレミスやハイブリッド環境向けAI基盤「AI Factory」の顧客が5000社に達したとしている。
調査会社Omdiaのアナリスト、ジム・フレイ氏は、影響を受けるのはNVIDIAからGPUを直接購入する企業だけではないと指摘する。Nvidia製GPUを組み込んだ統合型のAI基盤を購入する企業にも、価格上昇が波及する可能性がある。
メモリ不足による値上げはNVIDIAだけではない
企業のIT部門にとって気掛かりなのは、値上げの動きがNVIDIAだけにとどまらないことだ。世界的なコンピュータメモリの供給不足を背景に、他のIT関連企業も価格上昇について示唆している。
Dell Technologiesは2025年11月の決算説明会で、メモリの供給制約を理由にその後1年間に顧客向け価格が上昇するとの見通しを示した。Appleは2026年6月にメモリ不足を背景として消費者向け製品を値上げした。半導体ベンダーのQualcommも同年7月、9月1日から半導体価格を引き上げると顧客に通知した。
NVIDIAは供給不足への対応も進める。同社は主要メモリメーカー3社と協力し、今後必要になるメモリの供給能力を増やす方針だ。
クレス氏は「必要な供給能力をさらに増やすため、各社と緊密に協力している」と説明した。
NVIDIAの値上げを単なる「GPU価格の上昇」と捉えると、企業はIT予算への影響を過小評価する恐れがある。クラウドのAIサービスや自社AI基盤だけでなく、サーバ、ストレージ、PCといった既存IT環境の更新費用まで上昇すれば、影響範囲は広い。
2027年のIT予算を策定する企業は、AI関連費用だけでなく、通常のハードウェア更新についても価格上昇の可能性を織り込む必要がありそうだ。
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