企業がつまずく最大のポイントは
約9割が頓挫を経験 「とりあえずAI導入」の失敗から抜け出すために必要なことは
TWOSTONE&Sonsは、企業のAI内製化に関する調査結果を公開した。調査によると、社内主導のAIプロジェクトで停滞・頓挫を経験した回答者は91.9%に上った。つまずきを成果に変えるために必要な要素は。
生成AIやAIエージェントの導入が広がる中、AI活用をベンダー任せにせず、自社主導で進めようとする企業も増えている。しかし、AIツールを導入し、社内に開発体制を整えれば、内製化が順調に進むとは限らないようだ。
TWOSTONE&Sonsは、企業のAI内製化に存在する「限界」を調査した結果を2026年8月31日に公開した。同調査は、従業員300人以上の企業で全社的なAI/DX推進に取り組む経営層、AI/DX推進責任者111人を対象に実施したものだ。それによると、社内主導で進めたAIプロジェクトについて、回答者の91.9%は「停滞・頓挫した経験がある」と回答した。「何度もある」は31.5%、「数回ある」は55.9%だった。
では、企業はAI内製化のどこでつまずいているのか。本稿は、調査結果を基につまずきのポイントと抜け出すための必要な要素を整理する。
調査で分かったAI内製化の“意外な壁”
AI活用というと、どの生成AIサービスや基盤を採用するか、どのモデルを使うかといった技術選定に目が向きやすい。しかし、調査結果からは、企業が行き詰まっているのは、それ以前の段階であることが分かった。
調査では、社内主導のAI活用・AIプロジェクトで「特に足踏みや行き詰まりを感じやすい段階」を尋ねた。その結果、最も多かったのは「AI活用の目的・テーマを決める段階」(57.7%)だった。
続いて並んだのは、「戦略・構想を具体的な計画に落とし込む段階」「PoC(概念実証)・実証実験から本格導入へ移行する段階」「AIの実装・開発を進める段階」(いずれも49.5%)、「経営課題・業務課題を特定する段階」(45.9%)だった。
この結果は、AIを導入することまでは決まっていても、「経営課題の何を解決するためにAIを使うのか」「どの業務を対象にし、どのような状態を成果とするのか」といった上流設計の段階で止まる企業が少なくないことを示唆している。
想定以上に重要だったのは「技術選定」ではなく「戦略設計」
調査では、「AI活用・AIプロジェクトを進める前には十分に認識できていなかったものの、実際には重要だったと感じたこと」も尋ねた。
その結果、最も多かった回答は「AI活用の戦略・構想の設計」で58.6%だった。「実装・開発を担う人材の確保」が45.9%、「戦略・構想を実装計画に落とし込むこと」が43.2%と続いた。「AIに関する技術・ツールの選定」は第6位で37.8%だった。
この結果から読み取れるのは、AI内製化の難しさを「どのAIツールを選ぶか」を中心に捉えると、実際に存在するボトルネックを見誤る可能性があるということだ。
不足していたのは「経営課題をAIにつなげる力」
調査では、「期待した成果や規模に至らず、途中で停滞・頓挫した経験」があると答えた回答者102人に、何が不足していたのか尋ねた。その結果、最も多かった回答は「経営課題・業務課題をAI活用につなげる力」で58.8%だった。
次いで「AIの実装・開発を担える人材」が50.0%。「戦略・構想を実装に落とし込む設計力」と「プロジェクトを推進・管理するPM・PMO人材」がともに49.0%、「AI活用の戦略・構想を描く力」が47.1%だった。
これに対し、「AIツール・システムなどの技術基盤」は18.6%にとどまった。
「AIと業務の両方が分かる人」がいない
調査結果からは、AI内製化に当たって企業側も人材面の課題を認識している可能性があることが分かった。
調査では、勤務先の人材・体制だけで対応することが難しいと感じる領域について尋ねた。その結果、「AI戦略・活用構想の設計」が58.6%で最多。「AIツール・技術の選定」が54.1%、「AIの実装・開発」が47.7%、「AIを活用する経営課題・業務課題の特定」が45.0%と続いた。
さらに調査では、難しいと感じる理由も聞いた。理由として最も多かったのは「経営・事業・業務とAI技術の両方を理解できる人材がいないから」で53.6%だった。
続いて、「複数部門を横断して推進・調整する体制がないから」が45.5%、「AI技術や市場環境の変化が速く、社内だけでは追随しにくいから」が43.6%、「必要な専門知識・技術を社内だけで確保できないから」が42.7%だった。
調査結果についてTWOSTONE&Sonsは、企業が抱える課題は、AI戦略・活用構想の設計だけでなく、経営課題との接続やプロジェクト推進など複数の領域にまたがっていると指摘する。続けて、「自社に足りない機能を見極めたうえで、外部の知見を組み合わせながら推進体制をどう組み立てるかが、これからのAI内製化を左右する論点となる」と強調する。
本稿は、TWOSTONE&Sonsが2026年8月31日に公開した【企業のAI内製化に関する「限界」の実態調査】AI推進責任者の94.6%が競合との差に「危機感」91.9%が社内主導のAIプロジェクトの「停滞・頓挫」を経験を基に作成しました。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
市場調査・トレンド
[コパード株式会社] 約9割が負担を実感 Salesforceのテスト業務に関する実態調査で見えた課題とは -
市場調査・トレンド
[コパード株式会社] 「Salesforce」開発・運用におけるAI活用実態調査レポート -
事例
[テクバン株式会社] 1画面でITサービスデスク業務が完結 太陽ホールディングスに学ぶデバイス管理 -
製品資料
[デジタルサーカス株式会社] ライセンス無料 Drupalベースの「多言語ECサイト開発用パッケージ」の実力は? -
製品資料
[デジタルサーカス株式会社] 日本発グローバル企業用Drupal「Risley(リズリー)」の実力とは?
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
半数がブルーカラー転向を視野に? ベテランエンジニアを追い込む“54歳の壁”
-
2
OpenAIやAnthropicでさえ制御不能 2026年夏「3大サイバー攻撃」の衝撃
-
3
IT製品の導入に関するアンケート「セキュリティ」編
-
4
法務と開発者で「言葉が通じない」問題 トヨタやソニーが語るOSS管理の真実
-
5
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
6
見落としが多発、AI普及&データ急増に伴うネットワーク課題の意外な原因とは?
-
7
【専門家に聞く】シャドーAIや過剰共有のリスクを防ぎ、安全に生成AIを活用するポイントとは?
-
8
【コスト分析】事例が示す中堅・中小向けERPの最適コスト構造
-
9
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
10
IT製品の導入に関するアンケート「サーバ&ストレージ」編
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
2
Microsoft 365のメールセキュリティ、3つの“死角”と追加で検討すべき対策とは
-
3
システムの保守がモダン化を阻む? 「変えない判断」から脱却する方法とは
-
4
AI駆動攻撃にどう対抗する? 超速の攻撃からエンドポイントを保護する方法
-
5
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
6
プログラミング不要で誰でも実現できる、ネットワーク運用管理の自動化とは
-
7
Linux初心者でも知らないとまずい「RHEL」「SLES」の違いとは?
-
8
東大教授と考える、AI時代の「データ主権」「信頼性」「ガバナンス」の在り方
-
9
「IT史に名を残すシステム障害」8選
-
10
最速72分でデータが流出? 最新の脅威トレンドや侵入手法から分かった防衛策
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー