大企業とベンチャーで何が違う?
マネジメント未経験でも大手に行くには? 企業規模で変わる情シス転職の勘所
小規模な企業の情シス担当者が大手企業に転職することは可能なのか。企業規模を大きく変えて転職する場合、何に気を付ければいいのか。情シス専門の転職エージェントが解説する。
今回は、転職エージェントから見た、情報システム(情シス)部門担当者の転職における「中小企業やベンチャー企業から大手企業への転職」「大手企業からベンチャー企業への転職」についてお話しします。
企業規模が変わると、同じ情シスでも求められるスキルや業務の進め方は変わります。では、どのような経験や考え方を持っていると、企業規模を超えた転職を実現しやすくなるのでしょうか。
企業規模を変える転職で重要なポイントは
これまでさまざまなポジションや企業規模に所属する情シス担当者の転職支援をしてきました。大半の方々は、これまで積み重ねてきた経験を生かしやすい、現職と近い規模の企業への転職を考える傾向があります。一方で、今回のテーマである「企業の規模を超えた転職」を目指す方もいます。
例えば、ライフステージの変化をきっかけに、より規模の大きな企業で働いてみたいと考える方がいます。反対に、大企業ならではの意思決定や社内稟議に時間がかかることにもどかしさを感じ、よりスピード感のあるベンチャー企業に挑戦したいという方もいます。
ここでまず理解しておきたいのは、情シスとして必要な技術だけでなく、業務の進め方や企業文化そのものが変わるということです。
社内のコミュニケーションツール、意思決定に関わる人数やスピード、会議や稟議の進め方、場合によっては勤怠の付け方まで、会社が変わればさまざまな違いが生じます。「こんなにきちんと手続きを踏まないといけないのか」と感じることもあれば、「こんなにラフに進めていいのか」と戸惑うこともあるでしょう。
特に企業規模を大きく変える転職では、この文化面の違いに順応できるかどうかを、近い規模の企業に転職するとき以上に考えておく必要があります。
もちろん、ここで紹介する違いは全ての企業に当てはまるものではありません。同じ従業員規模でも、情シスが数十人いる会社もあれば、少人数で運営している会社もあります。システムを自社で開発する会社もあれば、SaaSや外部ベンダーを積極的に利用する会社もあります。
そのため、「大企業だから」「ベンチャーだから」だけで判断するのではなく、転職先の情シス担当者が何人いるのか、どのように役割分担しているのか、システムをどこまで内製しているのかを確認することが重要です。
その上で、企業規模を変えて転職するときに身に付けておきたいスキルや考え方を見ていきましょう。
大企業への挑戦を考えている方へ
企業規模が大きくなると、複数人で構成する情シス組織があり、さらに2つのポイントに沿って業務を進める場合があります。
人や組織をマネジメントする業務がある
とはいえ、採用する側も、マネジメント経験のない人材に入社直後から大人数の組織を任せるとは限りません。ここでいう「マネジメント」は、「業務の進捗(しんちょく)を管理した」「後輩の相談に乗った」というだけではありません。例えば、
- 部下の目標設定や評価に関わったことがある
- 事業全体から見た情シスの役割を考えたことがある
といった経験が重要になってきます。中小企業やベンチャー企業では、情シス自体が1人または数人ということもあり、部下を持つ機会がない場合もあります。
また組織が小さい企業だと経営層、場合によっては社長との距離が非常に近い場合があります。そのような企業で「何かあれば直接相談」してきた方もいるかもしれません。一方大きい企業になると、意思判断に関わる人との距離が遠い場合があります。そのような中でどのように合意形成を図るのか、苦労する方もいるかと思います。ただしその場合に、「マネジメント経験がないから大企業には行けない」と考える必要はありません。
例えば、複数のベンダーを取りまとめた経験、全社システム導入で複数部署を調整した経験、新しく入ったメンバーを支援した経験など、自分が経験してきた業務の中から、マネジメントに近い経験を整理してみることが大切です。
専門技術に特化して働く
大人数を抱える情シス部門では、インフラ、業務システム、クラウド、セキュリティ、データ、AIなど、担当領域ごとにチームが分かれている場合があります。そのため、採用面接の際に「少人数の情シスとして一通り経験しました」という広さに加えて、「その中でも自分は何が得意なのか」が問われる場合があります。
前職で「さまざまな領域の業務を幅広く推進しました」という経験を否定するわけではありません。むしろ、その幅広い経験の中から、
- 「クラウド基盤なら深く説明できる」
- 「ID管理やセキュリティを強みにしてきた」
- 「業務システムの要件整理や導入を数多く経験した」
といった自分の「軸」を見つけ、さらに磨いておくことが大切です。
大企業への転職を考えている方は、これまでの業務の中で「専門性」と「組織を動かした経験」の両方を棚卸ししてみるとよいでしょう。
ベンチャー企業への転職を考えている方へ
一方、ベンチャーや中堅中小といった小規模企業の情シスでは、少ない人数、場合によっては1人で、さまざまな「ボール」を拾っていく力が重要になります。逆に言えば、自分が苦手な分野に課題が発生したときに、それをどう補うのかを考える力が必要です。
例えば、大企業ではネットワークを専門に担当してきた方が、転職後にはSaaSの選定、PCやスマートフォンの管理、ID管理、セキュリティ対策、社内問い合わせへの対応まで担当するケースも考えられます。
ここで大切なのは、全ての技術を自分一人で扱えるようになることではありません。分からないことがあればベンダーに頼る、業務委託として切り出す、専門家に相談するといった方法があります。
ただし、その場合も、「何を外部に任せるのか」「どのベンダーに頼むのか」「どのような要件で発注するのか」を自分で考える必要があります。外部の人に業務を切り出すためにも、一定の知識や発注する力が必要です。
また、小規模な企業では、自前で大規模なシステムを開発するだけではなく、複数のSaaSやクラウドサービスを組み合わせて業務環境を作る選択肢もあります。
業務環境の構築に加えて、セキュリティも「専門チームに任せれば終わり」とはいかない場合があります。端末管理やアカウント管理だけでなく、従業員へのセキュリティ教育などを担当することもあります。
事業や組織の変化に合わせて、経営陣の鶴の一声で新しいシステムを入れる必要が出てといった状況に直面することもあります。小規模な企業で情シスを目指す方は、そのような変化や日々発生するトラブルをある程度楽しめることも重要です。
今までは特定の領域で尖ったスキルを身に付けてきたという方でも、周辺領域について勉強したり、他部署の人と積極的にコミュニケーションを取って業務を理解したりしておけば、経験を生かしやすくなります。
まとめ
転職というものは、そもそも一定のストレスがかかる挑戦です。まずは新しい環境に慣れることが重要です。その上で、情シスとして企業規模を変える転職を考えている場合は、求められるスキルだけでなく、「どのように業務を進めるのか」が変わることも理解しておくとよいです。
小規模な企業から大企業へ移れば、これまで幅広く担当していた業務の中から特定領域を深く担当したり、より多くの関係者と合意形成したりすることになる可能性があります。
反対に、大企業からベンチャー企業へ移れば、これまで専門部署に任せていた業務まで自分の担当になり、分からない領域についても「誰に頼むのか」「どう解決するのか」を自分で判断する場面が増える可能性があります。
だからこそ、「大企業に行きたい」「ベンチャー企業に行きたい」と企業規模だけで考えるのではなく、「次の会社でどのような業務をしたいのか」「今の自分には何ができて、何が足りないのか」を一度整理するのがお薦めです。
不足している経験があるのであれば、すぐに転職するのではなく、現職で新しいプロジェクトに参加したり、これまで担当していなかった領域を勉強したりすることで、次の環境に向けた準備を進めることもできます。
企業規模を超えた転職を考えている方は、「そこまでして環境を変えて何を実現したいのか」を考えた上で、現在の職場や自己研さんを通じて少しずつ準備しておくとよいでしょう。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社フィックスターズ] 組み込み開発特有の課題も解消できる「AI活用」の秘訣とは? -
事例
[株式会社ビザスク] 「新規事業」事例集:大手企業はどのように想定顧客ヒアリングを行っているのか -
市場調査・トレンド
[株式会社ビザスク] 質の高い「仮説検証インタビュー」を実施するためのポイント -
事例
[株式会社ビザスク] 富士フイルムの新領域参入に学ぶ事業創出 「畑違い」でもビジネス化できる方法 -
事例
[株式会社ビザスク] 三菱電機 上席執行役員に学ぶ、未来を切り開く「新事業創出」の実践方法
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
2
法務と開発者で「言葉が通じない」問題 トヨタやソニーが語るOSS管理の真実
-
3
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
4
鹿島建設のDXを阻む「10年前のAWS」 安全性と自由度を両立したモダナイズ
-
5
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
6
IT製品の導入に関するアンケート「PC&デバイス」編
-
7
情シスの約8割が転職や退職を意識 調査で分かった“辞めたくなる最大の理由”
-
8
情報漏えいはなぜ繰り返されるのか 今すぐ見直すべき「境界」
-
9
「Wi-Fi 7」経由でWindowsが乗っ取られる? 最高権限奪取の恐怖
-
10
「AI活用を前提とした業務PCへの移行」に関するアンケート
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
3
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
4
財務部門がAIを最大限に活用する方法 無駄のない戦略的リーダーシップへの道
-
5
LLMが兵器化? 元FBI高官が鳴らす警鐘とセキュリティツール統合のポイント
-
6
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
7
生成AIを開発に導入しても効果が見えない? 実証実験で分かった成果と課題
-
8
システムの保守がモダン化を阻む? 「変えない判断」から脱却する方法とは
-
9
経産省DX指針から読み解く、受発注業務デジタル化ロードマップ
-
10
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー