Column
2006年、注目すべき10の動き――オープンソース、Web 2.0、SaaS……
ITをめぐる状況はここ数年かなり厳しかった。2006年は劇的な年にはならないだろうが、既に進んでいる変化が加速するだろう。今年注目すべき10の動きを予測してみよう。
ソフトウェアのオープンβ開発手法、Web 2.0、サービスとしてのソフトウェア(Software as a service)――今年注目すべきトレンドをTechTargetの元編集人ポール・ギリンが10のテーマに分け、予測する。
面白いパラダイムシフトほどエキサイティングなものはない。皆さんもそう思われているのでは?
IT業界では、大きな変化をもたらす力が集積しつつある。それはわれわれにとって必要なことだ。ITをめぐる状況はここ数年かなり厳しかった。2006年は劇的な年にはならないだろうが、既に進んでいる変化が加速するだろう。
以下では、今年注目すべき10の動きを予測してみよう。
ソフトウェアトレンド
グーグルに代表されるさまざまな動向が相まって進展し、それに伴って驚異的なペースで新機能が提供される中、ベンダーや企業はソフトの開発方法の見直しを進めるだろう。コミュニティーの参加と頻繁な新リリースによるオープンβ開発が、新たなアプローチとなるだろう。すなわち、開発中のソフトウェアを使うというものだ。
こうした流れとコードの再利用が商用ソフト開発を変えるだろう。これらの手法を活用しないベンダーは、取り残されることになる。また、ユーザーは商用ソフトについて、よりサービス指向のアプローチを求めるだろう。各種のソフトを組み合わせて使うためだ。その結果、業界は独自開発へのこだわりを捨てて、ソフトに対するアプローチの真の変革に乗り出すだろう。そうなればビジネスのコスト構造が変化し、最終的には力関係も変わっていくはずだ。だが、それは良いことではないだろうか。
オープンソースへの取り組み
プロプライエタリソフトをオープンソース化する動きが大きく進んでいる。この流れを象徴するのがサンマイクロシステムズの取り組みだ。サンは自社のエンタープライズソフト全体――Javaを除く――をオープンソースとして無償提供することを推進している。だが、こうした一見寛大な取り組みをたたえるのは控えておこう。新たにGNU General Public License(GPL)で配布されるようになったソフトの多くは、どのみちあまり人気がなかったものであり、オープンソース戦略はベンダーにとって、多額のコストが掛かるサポートを“コミュニティー”に体よく移管する1つの方法だ。とはいえ、商用アプリケーションにお金を出す前に、sourceforge.netをチェックしない手はない。
Web 2.0
Web 2.0は既に流行語になっているが、その概念は重要だ。Web 2.0は、サービスとしてのソフトウェアや、オープン開発といったアイデアを具体化するとともに、「インターネットの価値は、“ロングテール”(長い尾:eビジネスは効率が優れているので、80対20法則に従わずにニッチ商品で収益を上げることができるという考え方)、つまり多種多様なテーマについての膨大なブログやWebサイトにある」という、より大きな考え方に統合するものだ。出版社を経営するティム・オライリー氏はWeb 2.0についての啓蒙的な論文で、ネットスケープがWeb 1.0を体現していたとすれば、グーグルはWeb 2.0を体現していると述べている。Web 2.0の概念に慣れておこう。Web 2.0はこれからもっとホットな話題になるからだ。
サービスとしてのソフトウェア(SaaS)
サービスとしてのソフトウェア(Software as a Service)は、「SaaS」と略して呼ばれるようにもなったが、それよりも重要なのは、中小企業を中心に支持を得て市場で躍進していることだ。その土台を築いたのはセールスフォースドットコムだが、今ではサービスプロバイダーはあらゆる分野で急成長している。カッターコンソシアムが先ごろ発表した調査リポートによると、ユーザーは財務や人事管理、さらには広いカテゴリーを示す「その他」のアプリケーション分野で、ますますサービスプロバイダーを利用するようになってきている。ROIの向上というメリットが得られることがその背景にある。このことも従来型のパッケージソフトに大きな課題を投げ掛けている。
データセンターの再構築
数年前から始まった企業データセンターの大幅な刷新が、仮想化とマルチコアプロセッサという2つの技術革新によって加速するだろう。後者は1つのチップ上に2個のプロセッサを統合することでサーバの能力を高め、約50%のパフォーマンス向上を実現する。EMCの子会社ヴイエムウェアが広めた仮想化は、主流になりうるだけの堅牢な技術だ。マイクロソフトの市場進出とWindowsのライセンス条件の魅力的な変更が、仮想化への関心に火をつけると予想される。また、オープンソースの選択肢であるXenからも目が離せない。この分野には、効率化やコスト削減のチャンスが豊富にある。
個人情報の盗難
昨年はクレジットカードデータや顧客記録の流出が相次いで発生し、広く報じられたものの、個人情報の大規模な盗難事件がなかったのは驚くべきことだ。だが、このままでは済まないはずだ。プロの犯罪者はオンラインで商売を行い、フィッシングは急増しており、そして電子商取引は広く普及している。大惨事の要因がそろっているわけだ。2006年に破滅的な出来事が起こるかどうかは分からない。だが、近いうちに何らかの大きな動きによってこの問題への社会的な関心がさらに高まることになるだろう。
第2ラウンドに入るオフショアリング
昨年には予想どおりオフショアアウトソーシングへの反動が起こり、海外の業務委託先との関係がぎくしゃくしたり、契約を期限前に打ち切ったといった事例が話題になった。しかし、これはそもそも期待が高過ぎたためだ。実のところ、オフショアアウトソーシングは長期的に成長していくビジネスだ。中でもインド企業はますます高度なサービスを提供するようになってきている。20~25%のコスト削減という現実的な期待を持って導入したほとんどの企業は幻滅していない。次の段階の成長はもっと長続きするだろう。
Windows Vistaが予定どおり出荷
マイクロソフトがWindows XPの後継となるWindows Vistaの出荷を、約束していた今年夏に間に合わせられないという報道が早くも飛び交っている。だが、これはまゆつばだ。もしそうなれば、マイクロソフトはあまりにも大きな痛手を負うことになるからだ。ゲイツ氏とバルマー氏は、Mozilla Firefoxの躍進が、オープンソースの台頭というWindowsにとって厄介な問題のごく一部であり、Linuxからの競争圧力が高まるのを避けるためには、2006年の年末商戦に向けた明るい材料を小売業者やPCメーカーに提供しなければならないことを認識している。Vistaはバグだらけになるだろうが、年末商戦に間に合うように出荷されるのは間違いない。
ブロガーの年
わたしの今までで最悪の予測の1つは、2003年に発表した「ブログの波は既にピークに達している。今や膨大なオンライン日記作者は、自分の書いたものを実際に読んでいる人はそれほど多くないことに気付いている」というものだ。わたしは、「個々のブログの少数だが熱心な読者が、“ロングテール”の要である」という肝心な点を見落としてしまっていた。ITの世界は既にブログによって新たな展開を見せている。TechnoratiやTech.Memeorandumのようなサイトは、ネットで読みたいものを探す道しるべとなっている。ポッドキャスティングという爆発的に広がっている新現象は、ブログを新たな段階に導くものだ。主流のメディアは既にブログコミュニティーからヒントを得ている。重要な存在となったブログのことをよく知っておこう。
コンバージェンスが現実に
コンバージェンス(統合)は何年も前から宣伝文句になっているが、2006年には具体的に進展するだろう。SkypeやVonageのようなVoIPサービスの成功や、通信業界の再編がその原動力になる。電話、TV、GPSレシーバ、音楽プレーヤーといったさまざまな顔を持った統合型デバイスが登場するだろう。こうしたデバイスは、オフィスの外では携帯ネットワーク、中ではWi-Fiネットワークを使って利用することになる。日本では、一部の携帯電話はクレジットカードやアフィニティカード(提携カード)の機能を搭載し、スマートカードの役割を果たせるようになっている。また、オフィスでは、高速インターネット接続の広範な普及を背景に、グループの生産性を向上させる統合型サービスの提供が進むだろう。コンバージェンスは、20年前にグループウェアによって可能になると思われていたことをついに実現するかもしれない。
本稿筆者のポール・ギリン氏は技術ライター兼コンサルタントで、TechTargetの元編集人。同氏のWebサイトは、www.gillin.com。
(この記事は2006年1月3日に掲載されたものを翻訳しました。)
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