AI推進担当者の苦悩と本音
「生成AI全社導入」の無理難題で疲弊する情シス 大事故を防ぐ“防衛策”は?
経営層からのお達しでAI導入を進める情シス部門やDX推進部門。一方で現場はセキュリティリスクや人材不足など、さまざまな課題に直面している。調査から見えた推進の阻害要因と、解決への道筋を解説する。
経営層からのトップダウンによる「AI(人工知能)技術の全社活用」の指示を受け、情報システム部門やDX推進室が旗振り役となるケースが増加している。しかし、プロジェクトの推進に当たっては、ガバナンスや投資対効果など、クリアすべき課題が山積しているのが実態だ。
ITコンサルティング企業Ragateは2025年12月、AI推進を担当する情報システム部門やDX(デジタルトランスフォーメーション)推進室所属の505人を対象に調査を実施した。その結果からは、多くの担当者が情報漏えいなどの技術的なリスクを最も重く受け止めていることが明らかになった。背景には、会社が管理していないAIサービスを従業員が独断で利用する「シャドーAI」によるデータ流出への強い懸念がある。
「上からの無理な要求」と「下からのセキュリティリスク」の板挟み。AI活用を阻むさまざまな課題に対し、担当部門はどのようなアクションを起こすべきなのか。
「シャドーAI」をどう統制する?
調査において、42.2%の回答者が最重要課題として挙げたのが「情報漏えいなどのセキュリティリスク」だ。外部のAIサービスに機密情報を入力することによるデータ流出や、入力データがAIモデルの学習に利用される懸念が背景にある。
この問題に対して情報システム部門が講じるべきアクションは、入力データが学習に使われない法人向けのセキュアなAIサービスを導入することだ。機密情報の送信を検出、ブロックする情報漏えい対策ツールの導入や、インターネットを介さない閉域接続の構築といった技術的な仕組みが有効になる。
情報システム部門とDX推進室にまたがる課題として「社内ルール/ガイドライン整備の遅れ」(19.4%)も挙げられた。技術的な対策だけではなく、組織的なルール作りが必要不可欠だ。利用可能なツール、機密レベルに応じた入力データの範囲、AI生成コンテンツの取り扱いなどを明文化し、段階的にガイドラインを整備することが推奨される。
DX推進室の重点課題になっているのが「従業員のスキル不足」(24.9%)への対処だ。AIツールは導入するだけでは効果を発揮しないため、適切な指示の出し方や出力物の品質管理など、体系的な研修プログラムの実施が求められる。各部門から推進者を選出するとともに、社内でノウハウを共有する仕組み作りも必要だ。
AI投資の正当性を示すための「費用対効果(ROI)算出の困難さ」(17.6%)も、経営層の理解を得るために避けて通れない壁だ。企業はAIツール導入の効果を「時間を短縮できたかどうか」などの定性的な観点で評価しがちだが、コンテンツの作成時間や生成したソースコードのバグ率など、領域ごとに測定可能な指標を設定して効果を可視化することが欠かせない。
「経営層、現場の理解が得られない」(10.7%)という課題に対しては、先行企業の事例や投資対効果の試算を提示することで合意を形成する手法がある。現場に対しては、AIツールが「人間の能力を拡張して支援するツール」だというメッセージを発信し、成功体験を積み重ねることが重要だ。
AI推進を成功させるには、セキュリティ要件の整理やガイドラインの策定といった基礎の整備から着手すべきだ。その後、小規模な範囲での検証を経て、全社的な利用に拡大する段階的なアプローチが成功の鍵になる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。
TechTarget ニュースプラス
国内のIT業界ニュースを迅速に報道します。企業動向から導入事例、市場トレンドまで幅広く取り上げ、実務に直結する情報をタイムリーに提供する連載です。
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[o9ソリューションズ・ジャパン株式会社] 「改正物流効率化法対策」徹底解説 総物流費を抑制するサプライチェーン戦略 -
製品資料
[o9ソリューションズ・ジャパン株式会社] 「サプライチェーン最適化」実践ガイド:効果的な意思決定を実現する秘訣とは? -
製品資料
[株式会社リンプレス] 非デジタル/IT人材を「自走するDX推進者」に変えるための育成ロードマップ -
市場調査・トレンド
[ワンアイルコンサルティング株式会社] AI時代の組織設計:「判断と責任」を人に残すための2つの原則とは? -
技術文書・技術解説
[ワンアイルコンサルティング株式会社] システムの保守がモダン化を阻む? 「変えない判断」から脱却する方法とは
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
1200万円のSaaS導入を回避 スギ薬局「運用費10万円」のAIエージェント構築術
-
2
「完璧な設計」なのに3000万円溶けた AWSの失敗事例から学ぶ3つの教訓
-
3
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
4
高額な「AI PC」を一般従業員も使えたら? 費用のハードルを一気に下げる方法
-
5
「コピペ運用の限界」に直面するAI活用 7割超が“別画面”のまま使う理由は?
-
6
LLMの「過学習」、正しく説明している文章はどれ?
-
7
「AIバブル」は崩壊するのか? 熱狂の後に来る“尻拭い”と4つの防衛策
-
8
IT調達担当者が知るべき「IT機器 大インフレ時代の前向きな選択肢」
-
9
クラウド資格コレクターは評価されない? 年収1000万を分ける“OSの理解度”
-
10
2035年までに1億4500万台、急拡大する「フィジカルAI」市場の勝者は誰か
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
インシデント対応工数を約3割削減、東京ガスの事例に学ぶ監視体制刷新のコツ
-
2
JR西日本ITソリューションズが「監視業務の属人化」を解消した方法とは?
-
3
Windows PCとMacの選択制で生産性向上 LINEヤフーが実践する運用管理方法とは
-
4
DX/AI投資の壁を突破、現代の最高財務責任者が直面する課題と克服のヒント
-
5
「Google Workspace」活用事例34選、先進の生成AIによる組織変革の全貌
-
6
生成AIで文書活用を進めるには? 効率化と安全性をどう両立する
-
7
「人員を増やす」という選択肢はない 情シスが負の連鎖から抜け出すには?
-
8
「問題が深刻化しやすいプロジェクト管理」から脱却する方法とは?
-
9
Linuxのスキルを証明する“激推し”の認定資格はこれだ
-
10
NTTドコモが実践したクラウド統合監視 業務量2倍でも残業削減を実現できた理由
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー