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復興後の医療ITはリモートバックアップが鍵に:地域医療福祉連合協議会リポート
地域医療福祉連携協議会が2011年7月21日に開催したシンポジウムでは、東日本大震災の被災地における復興後の医療IT体制への提言に関する講演が行われた。
東日本大震災からの復興に向けた指針策定を有識者が議論する「東日本大震災復興構想会議」は2011年6月25日、「復興への提言〜悲惨のなかの希望〜」を発表した。被災地の復興に向けたさまざまな施策の中には、ITを活用した医療提供体制に関する内容が含まれている。
「復興への提言〜悲惨のなかの希望〜」の医療提供体制に関する記載内容(抜粋)
- 「保健・医療、介護・福祉・生活支援サービスが一体的に提供される地域包括ケアを中心に据えた体制整備を行う」
- 「情報通信技術なども活用し、保健・医療、介護・福祉の連携を図るとともに、今後の危機管理のためにカルテ等の診療情報の共有化が進められねばならない」
- 「医療、教育等の地域社会を支える分野のデータが震災により滅失したことを踏まえ、これらの分野において、情報の一層のデジタル化を進め、クラウドサービスの導入を強力に推進すべきである」
具体的にどのような医療IT体制を実現すればいいのか? 全国各地で地域医療情報連携を推進している団体である「地域医療福祉連携協議会」は7月21日、「震災復興に、地域医療ITは何ができるか?」をテーマに掲げたシンポジウムを開催した。同シンポジウムでは、同協議会の会長である田中 博氏(東京医科歯科大学大学院 疾患生命科学研究部教授)が、復興後の医療IT体制のモデルへの提言に関する講演を行った。
復興後の医療IT体制の3つの基本原則
東日本大震災による津波の影響で紙カルテを紛失した医療機関があったことを踏まえ、田中氏は、まず医療情報を紙媒体に記録することの脆弱性を指摘した。
また、医療機関や介護施設における情報共有基盤となる「地域医療情報ネットワーク」や全国民を対象とする「EHR(Electronic Health Record:生涯健康医療電子記録)」を早期に実現する必要性が高まったと説明した。その上で、復興後の医療IT体制の3つの基本原則を掲げた。
- 復興後の地域医療計画に基づく医療提供体制の構築
- 災害にも強靭な地域医療情報連携システムの構築
- 圏域階層的な地域包括ケアに向けた情報連携の実現
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