電力管理が変えるネットワーク管理者の役割【前編】
クラウドが普及を後押し? 「ネットワーク電力管理」最新動向
ITを利用したネットワークベースの電力管理技術が充実しつつある。米Cisco Systemsなどのネットワークベンダーは、技術開発や提携を急ぐ。最新動向をまとめた。
ネットワークのことだけを心配し、その他のことには気を配らなくてよいのであれば、大半のネットワーク管理者は幸せだろう。だがネットワーク管理者の責任範囲が、市場の力によって拡大させられるのは珍しいことではない。エネルギー消費量を管理して省エネを実現する技術の登場により、こうした変化が今まさに起こりつつある。
ITを利用したネットワークベースの電力管理は、Power over Ethernet(PoE)技術が市場に登場し、データネットワークが新たにパワーグリッドと呼ばれる電力供給網としての役割を担うようになって以来、常に有望視されている分野だ。PoE技術の電力供給能力は、世代ごとに進歩を重ねてきた。それに伴い、ネットワークから受電できる端末の数も増加している。
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米Cisco Systems(以下、Cisco)は、ネットワークで従来比2倍の60Wの電力を供給できる「Cisco Universal Power Over Ethernet(UPOE)」技術を最近発表した。UPOEによる電力供給能力の増加分を活用すべく、同社は目下、LED照明のベンダーなども含め、パートナーエコシステムの拡大を推進中である。
これからは、ネットワーク管理者が電力を管理する時代だ。
ネットワークから受電する端末が増加し、ITによって電力消費量がますます厳しく精査されるようになる中、企業がネットワーク管理者に対し、ITを活用したエネルギー管理と省エネに力を入れるように要請するのは当然のことだ。
「今や電力管理はネットワークチームの管轄下にあり、ネットワーク担当者の専門知識が必要とされる分野になっている」と指摘するのは、米ソリューションプロバイダーCurrent Analysisの主任アナリストであるマイク・スパンバウアー氏だ。「ただし、幾つか変化している点もある。米国企業のネットワークチームは依然として、電力収支の管理について直接の責任を負っていない。だが英国など省エネに積極的な一部の国や地域では、会社が社内の全てのチームに対して、電力収支の改善に関する報告を義務付けている。炭素税が導入されている英国では、電力コストが米国より3~4倍高い」と同氏は言う。
また同氏によれば、米国ではIT部門の省エネ意識はそこまで高くはないが、今後はクラウドが意識向上に寄与することになるかもしれないという。
「ネットワーク担当者にとって今後重要となる新しい要素の1つが、クラウドの経済モデルにおけるエネルギープロファイルである。社内でアプリケーションをホスティングするのと、クラウドでのホスティングを比較検討する際、電力コストに関する正確な見通しを得ることが非常に重要となる。クラウドの経済的側面を明確にするのは実に難しい」(スパンバウアー氏)
ネットワーク管理者のためのIT電力管理技術
ネットワークベンダーは、ネットワーク管理者にITエネルギー管理ツールを提供すべく、PoEの他にも技術開発や提携を進めている。米Juniper Networks(以下、Juniper)とCiscoはそれぞれ、エージェントレスのエネルギー管理製品を手掛ける米JouleXと戦略的提携をしている。
JouleXのエネルギー管理製品は、ITインフラなどの要素ごとにエネルギー消費量を監視し、分析や制御を実施する。JouleXは、Juniperの開発環境「Junos Space SDK」と連係し、ネットワークにあるあらゆる端末のエネルギー消費量を監視、分析する。
さらに、JouleXのエネルギー管理製品はCiscoのシステムと連係し、ネットワークからPoE電力を受電する全ての端末も含め、ネットワークのエネルギー消費量の監視と分析、制御ができる。JouleXとCiscoの連係には、Ciscoのエネルギー管理プロトコル「Cisco EnergyWise」が採用されている(参考:シスコ、セキュリティや電源管理を強化したLANスイッチ「Catalyst」新シリーズを発表)。
「EnergyWiseは、エネルギープロファイルを作成する機能の他、端末とポートの電力消費量やトレンドを捕捉する能力を備えている。さらに、管理システムを介した高度なスクリプトコントロールによる電力制御も可能だ」とスパンバウアー氏は語る。
ITエネルギー管理技術の採用を促進する
Ciscoは、EnergyWise技術の採用を強く推進している。同社は先日開催したイベント「Cisco Live」において、「Cisco EnergyWise Fast-Start」プログラムを発表した。このプログラムに参加すると、「Cisco Catalyst 3000シリーズ」スイッチと「Cisco Catalyst 4000シリーズ」スイッチの購入者は、JouleXの製品を無償で入手できる。
「Fast-Trackプログラムの無償オプションを使えば、Ciscoの顧客はスイッチに接続されたPoE端末やスイッチの監視と制御が無料でできる。ただし、サーバやプリンタ、コピー機、クライアントPC、ストレージなどの監視や管理をしたい場合には、アップグレードが必要となる」と、JouleXの社長兼CEOであるトム・ヌーナン氏は説明する。
一方、エージェントベースのPC電源管理ソフトウェアを手掛ける米Verdiemは、EnergyWiseとの連係でネットワーク端末の電力消費の監視と管理を可能にするなど、エネルギー管理ビジネスを拡大している。Fast-Start EnergyWiseプログラムにより、上述のCatalystスイッチのユーザーは、Verdiemの電源管理ソフトウェア「Verdiem Surveyor」の1年間の無償ライセンスを入手し、ネットワークとクライアントPC(最大1000台まで)双方の消費電力を管理できる。
このように、IT電力管理技術は充実しつつあるものの、米国企業では採用が進んでいない。後編「ネットワーク電力管理の企業導入はなぜ進まないのか」はその背景について、組織や文化といった側面から分析する。
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