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モバイルSaaS選びで失敗しないための6カ条市場が注目、「モバイルSaaS」の選び方【後編】

スマートフォンやタブレットなどのモバイル端末で利用できる「モバイルSaaS」。多様化するモバイルSaaSをどう選べば失敗しないのか。選定のポイントをまとめた。

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 前編「クラウドで最もホット 多様化する『モバイルSaaS』」では、モバイル端末向けのSaaS(Software as a Service)である「モバイルSaaS」の市場動向を解説。モバイルSaaSの現状とクラウド市場に与える影響について解説した。後編は、モバイルSaaSの種類の違いを整理しつつ、モバイルSaaS選定のポイントを示す。

モバイルSaaSの種類の違い

 モバイルSaaSにはさまざまな種類があり、それぞれにメリットとデメリットがある。大手SaaSベンダーの大半は、Webブラウザ経由でアクセスするアプリケーション、ネイティブコンテナ経由でアクセスするアプリケーション、この2つを組み合わせたハイブリッドアプリケーションという全3種類のモバイルSaaSを提供している。

 Webブラウザ経由でアクセスするモバイルSaaSは、モバイル端末にアップデートをダウンロードする心配をしないで済む。この種のアプリケーションは、ベンダーのクラウドで実行し、モバイル端末のWebブラウザからアクセスする。デスクトップPCからSaaSへアクセスするのと同じだが、速度はモバイルSaaSの方が遅いかもしれない。

 端末機能を活用した洗練されたインタフェースを求めるなら、モバイル端末にネイティブのインタフェースを置くモバイルSaaSを選ぶことになるだろう。一方、モバイル端末の機能を利用しながら幅広いユーザーを獲得したい場合、ハイブリッドのアプローチが適しているかもしれない。

 モバイルSaaSを活用するためのWebブラウザの必要性をめぐっては、SaaSプロバイダーとデベロッパーとの間で意見の食い違いがある。前述の通り、SaaSベンダーの一部は、モバイル端末でネイティブに実行できるクライアントソフトウェアを顧客に提供している。

 SaaS用のネイティブアプリケーションを含むこうしたクライアントソフトウェアは、SaaSを運用するクラウド環境などにデータを必要に応じて保存できる。モバイル端末のWebブラウザの代わりに、クライアントソフトウェアを通じてSaaSを利用する。クライアントソフトウェアは、ユーザーがアプリケーションストアからダウンロードする。クライアントソフトウェアが更新されると、ユーザーは通知を受け取り、時間が許すときに更新版をダウンロードできる。

 モバイル端末のWebブラウザを、さまざまなモバイル端末の最小公倍数だと見なすデベロッパーも存在する。Webブラウザにおける生産性は、ネットワークへの継続的な接続性に依存する。たとえ端末がネットワークに接続している場合でも、モバイル端末のWebブラウザが提供するコントロールは、端末で実行される専用のネイティブアプリケーションと比べて限定的だという論理だ。

モバイルSaaSのハードウェアの制約

 モバイルSaaSを利用する上では、ハードウェアの制約が多数あり、その全てが従業員の生産性に影響する。例えば、以下のような制約がある。

  • SaaSクラウドサーバとの間でデータをやりとりするための帯域幅
  • 不安定な接続
  • バッテリー寿命
  • メモリ
  • CPU処理性能

ベストプラクティス

 モバイルSaaSの購入や開発を検討している組織は、ある程度のベストプラクティスを念頭に置くことが望ましい。主要な6つのポイントを示す。

端末の対応状況を見極める

 モバイルSaaSベンダーやモバイルSaaSソフトウェア開発キット(SDK)の選定に当たっては、自社の顧客や従業員が使っているモバイル端末に対応したベンダーや製品かどうかを見極める必要がある。私物端末の業務利用(BYOD)の戦略を持つ企業では、このことは特に重要だ。一部のモバイルSaaSベンダーやSDKは、限られた数のモバイル端末しかサポートしていないからである。

運用方法や利用ケースを確認

 モバイル端末にネイティブインタフェースを持つモバイルSaaSは、極めて洗練されている。ただし、クライアントソフトウェアはユーザーがダウンロードしなければならず、忘れずにアップデートを適用し続けなければならないという認識は必要だ。

 さらに、WebブラウザベースのモバイルSaaSが組織内の全ての利用ケースをサポートできるかどうか、自問する必要もある。

ライセンス体系の理解

 モバイル端末に導入するアプリケーションのライセンス料金について理解することも重要だ。3種類のモバイルSaaSでライセンス料金に違いがあるかどうかを確認したい。

導入効果の明確化

 自社の社風も無視できない。モバイル端末の利用は、会社の業務をこなす上でのプロセスと戦略に、直接的な影響を及ぼす。従業員にとってのモバイルSaaSのメリットをはっきりと位置付けることが必要だ。

オフライン利用の検討

 オフラインのSaaS機能を提供する価値についても理解しておきたい。ネットワーク接続が不安定だったり、時間によっては利用できない場所で仕事をするモバイルSaaSユーザーもいるかもしれない。こうした従業員は、たとえネットワークが利用できなくても生産性を維持しなければならないだけでなく、データを後で同期できるようにする必要がある。

セキュリティ手順の実装

 最後に、モバイル端末のセキュリティ手順の実装を忘れてはならない。モバイル端末で実行されるSaaS用アプリケーションや、モバイル端末のWebブラウザ経由でアクセスするSaaSの多くは、重要なビジネスデータを端末とSaaSベンダーのクラウドとの間でやりとりしているからだ。

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