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自社に適したインフラはどれ? 4種類のクラウドを比較クラウドファースト時代に考えるITインフラ選定のツボ【後編】

オンプレミス、クラウドなど多様なITインフラ形態が存在する中で、どれを選べばいいのか。後編では、パブリッククラウドやプライベートクラウドを比較する。

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 本稿では、クラウドよりも広く「ITインフラ」全般を捉え、それらの特徴を比較する。ここでいうITインフラは、「サーバ」と「サーバ設置場所」を併せた概念とご理解いただきたい。

 今回は、前編「オンプレミス、ホスティング……従来型インフラのメリット/デメリットをおさらい」に続く後編である。念のため、このシリーズで取り上げているITインフラの類型について下記に列挙する。前編と併せて読んでいただければ幸いである。

前編 1.従来型オンプレミス
2.ハウジング
3.ホスティング
後編 4.プライベートクラウド(オンプレミス型)
5.プライベートクラウド(ホスティング型)
6.プライベートクラウド(パブリッククラウド型)
7.パブリッククラウド

 また、比較のポイントとして、次の項目を考えることとする。

  項目 意味
a サーバの所有権 ハードウェア(サーバ類)の所有権。自社/他社で区別する
b 場所の所有権 ハードウェアの設置場所が「誰の土地か」という点。自社/他社で区別する
c 安全性のコスト セキュリティ、可用性、災害対策などの点をコスト面から評価する。絶対的コストの算出は困難なので、本稿内では相対評価とする
d リソース伸縮のコスト リソース(仮想サーバ含む)の追加(増設)および縮退(廃棄)のコストを比較する。本稿内では相対的に高い/低いで表す
e 障害コントロール 障害が発生した場合に、利用者側が事態をどこまで把握できるかを考える。本稿内では相対評価とする

 その上で、1〜7を一覧表にすると以下のようになる。


《クリックで拡大》

 では、上記4〜7について見ていこう。

4.プライベートクラウド(オンプレミス型)

  項目 内容
a サーバの所有権 自社
b 場所の所有権 自社
c 安全性のコスト リスクを抑えようとすると高コストになる
d リソース伸縮のコスト エンドユーザーにおいては低コスト。管理者には1.従来型オンプレミスと同様に高コスト
e 障害コントロール ほぼ掌握できる

 クラウドとオンプレミスは、正反対の概念だと理解している人も多いだろう。筆者もその1人だった。しかし世の中にはこの項のように「オンプレミス型のクラウド」がある。「(狭義の)プライベートクラウド」と呼ばれるものだ。「これぞ究極のクラウド」といわんばかりの大ベンダーも複数存在するので、前編の冒頭で紹介したようにIT利用者において混乱の元となっているようだ。

 プライベートクラウドという用語も注意が必要だ。この章「4.プライベートクラウド(オンプレミス型)」と、後で紹介する「5.プライベートクラウド(ホスティング型)」「6.プライベートクラウド(パブリッククラウド型)」があり、いずれもその本質において根本的に異なっている。本記事を参考にするなどして、その正体を見極められるようにしたい。

特徴

 ここで紹介するプライベートクラウド(オンプレミス型)は、本質的に1.従来型オンプレミスとほとんど変わらない。実体としては自社の施設(計算機室やデータセンターなど)に自前で調達した(リース含む)コンピュータリソースである。従って、冒頭の表に掲げた評価ポイントは、1.従来型オンプレミスとほぼ同じになる。1.従来型オンプレミスとの違いは、「A.豊富なリソースと仮想化技術の採用」、そして「B.エンドユーザーへのリソース配賦方法」だ。この2点が「いかにもクラウドっぽい」点であり、ベンダーもこの点を(特にBを)アピールしていると見受けられる。

メリット

 上記のBは、1.従来型オンプレミスにはないメリットがある。まず、エンドユーザーから見ればリソースの配賦をごく短時間で受けられる点だ。早ければ数十分、遅くとも数日で可能だろう。1.従来型オンプレミスの手法で、従来は数週間〜数カ月かかっていたことを考えると圧倒的に短い。エンドユーザーの費用負担(費用配賦)も「使っただけ」というルールにすることが可能だ。短期の開発や、実験的なサーバ利用などが可能になり、エンドユーザーのメリットは大きいといえる。また、この裏返しとして、リソース全体を管理する管理者にもメリットがある。エンドユーザーのリクエストに応じてリソースをデリバリーする負荷が著しく低くなる。また、エンドユーザーへの課金(費用配賦)も納得が得やすい。全体としてリソースを効率的に利用できる可能性が高まり、エンドユーザーの要望のまま野放図に調達する場合と比べ、ハードウェアの費用も抑制できるかもしれない(ただし、そう楽観的になるべきではない。詳細は後述する)。

デメリット

 しかしメリットの分だけ費用が必要なのも事実だ。まず仮想化技術の導入と習熟に一定のコストが必要だ。この点は1.従来型オンプレミスとの比較で追加の負担となる。また、運用上の余裕と可用性を担保しようとすればするほど、過剰なリソースをあらかじめ確保しておく必要がある。当然、コストは高くなり、逆に稼働率は低くなる。さらに、そのリソースすら不足するような状況に陥った場合、リソースの追加は従来型のサーバの追加購入と同様かそれ以上のコストの作業となることが予想される。

 4.プライベートクラウド(オンプレミス型)のクラウドにおいて、オンデマンドかつエラスティックにリソースを調達できるフレキシビリティがメリットとして強調される場合も多いが、そのメリットはあくまでもエンドユーザーのものであって、システム全体の管理者やオーナーにとっては期待できない点を理解しておきたい。全体としては1.従来型オンプレミス同様のオンプレミスであり、NISTのクラウドの定義に合致するようなメリットをオーナーが享受することはできない。

 無駄な投資を避けるために一定以上の稼働率を確保しようとすれば、リソース全体の量は抑制気味に考える必要がある。しかし、エンドユーザーが自由自在に利用しはじめればリソースが足りなくなってしまう可能性もある。このタイプのITインフラのメリットを最大限享受するためには、ハードウェア調達時点で、いわば「無計画を計画」する必要があり、困難を伴うことは間違いないだろう。

5.プライベートクラウド(ホスティング型)

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