IBMとの業務提携は何を生み出す?
iPhone導入企業が激増か、それでもAppleのビジネス市場開拓を心配する人々
IBMとの業務提携はまだ成果が具体化していないが、Appleはこの提携を通じて自社製品を企業に売り込みたい考えだ。ただし、Appleが十分なサポートやサービスを提供するのかどうかはまだ定かではない。
米Appleの製品は既に企業市場に浸透し、企業市場での需要拡大に向けた各種の取り組みも図られている。にもかかわらず、Appleによる企業向けサポートとサービスについては賛否が分かれている。
伝えられるところでは、Appleは専用の営業担当者と開発担当者を配し、主要企業への製品やサービスの売り込みを強めているという。これは米IBMとの提携に伴う動きだ。だが、両社が提携発表の際に約束した、業界に特化した100種類に及ぶ企業向けiOSアプリはまだ1つも提供されていない。
Appleが企業市場で成功するための必須条件
「企業市場への進出を成功させたいのであれば、Appleにはやるべきことがある」。そう指摘するのはITマネージドサービスプロバイダーでAppleリセラーでもある米Tech Superpowersの創業者、マイケル・オー氏だ。
懐疑的な見方の背景には、Appleから直接提供されるであろうサポートのレベルの低さがある。例えば、Appleの新しい企業向けサポートサービス「AppleCare for Enterprise」では「Pages」「Keynote」「Numbers」といったApple製iOSオフィスアプリのサポートが売りとされているが、これらのアプリをサポートするだけでは大半の企業には不十分だ。
「こうしたアプリをパッケージとしてサポートするといっても、相手は一般消費者ではない。企業が使っているのは(米Microsoftの)Officeだ。企業に提供すべきサービスに対するAppleの考えと、企業を取り巻く現実とには、まだずれがある」と、オー氏は語る。
Appleは、同社製品を使用する中小企業にエンタープライズ向けサポートを提供するためのサービス「Joint Venture」も用意している。これはAppleストアと同様のサポートを提供するビジネスサポートプログラムだ。ただしオー氏によれば、Joint Ventureで提供されるクロスプラットフォームのサポートは企業が期待するようなレベルには達しておらず、Apple製ではないアプリケーションに関してはなおさらだという。
「Joint Ventureを利用してみたが不満を感じているという顧客が当社にも複数いる。Appleがサポートの範囲をほぼ自社のエコシステムに限定していることが原因だ。企業にはアプリレベルのサポートを提供する必要がある。だが今のところ、Appleはそうしたサポートを検討していないようだ」と、オー氏は語る。
同氏の知る限りでは、AppleはまだTech Superpowersのようなチャネルパートナーと連携して企業市場への浸透を図ろうという動きを見せていないという。
だが一方で、Appleはチャネルパートナーとの連携を図りながら企業市場への注力を強めていると指摘する声もある。
「Appleはチャネルパートナーとの連携に非常に柔軟に対応しながら、企業市場でのシェア拡大方法を模索している」。そう語るのは、Apple製品の受注と導入、サポートサービスを提供する米En Pointe Technologiesでベンダー管理ディレクターを務めるナビード・カーン氏だ。
Appleは実際、En Pointe Technologiesなどのパートナー企業との提携を通じたプログラムも提供している。デバイス登録プログラム「Device Enrollment Program」(DEP)もその1つだ。DEPを使えば、会社所有の端末をデバイス管理プラットフォームに登録する作業を自動化したり、ワイヤレスでデバイスを監視したりできる。
Appleは、一般消費者向けの販売を主体とする企業から、チャネルパートナーを介して企業向けにも販売する企業へと移行する過渡期にある。「米Dellや米Hewlett Packardとは違い、Appleにはエンタープライズ市場での長い歴史がない」と、カーン氏は語る。
「この市場をチャネルパートナーにとって収益性の高いものとし、パートナーの支持を得るにはどうすればいいか。Appleはその答えを模索している」と、同氏は続ける。
En Pointe Technologiesは、オー氏が指摘したようなサポート面での問題に直面している企業顧客にはまだ遭遇していないという。En Pointeのカーン氏は、ハードウェアとソフトウェアに関しては大半の企業のIT環境が異種混在であることも認めている。
iPhoneを購入予定の企業が増加
Appleの企業向けサポートへの懸念が企業にiOS端末の購入を踏みとどまらせるということにはなっていないようだ。従業員に支給予定の端末について企業に尋ねた最新の調査では、iPhoneが大きな伸びを示している。
米調査会社451 Researchが2014年8月に企業のIT意思決定者1544人を対象に行った調査では、2014年10~12月期に従業員にiPhoneの購入を予定しているとの回答が全体の75%を占めた。
451 Researchのモバイル&ワイヤレス担当調査ディレクター、クリス・ヘイゼルトン氏によれば、この数字は1年前の同様の調査と比較して12%増加しており、2008年11月に調査を開始して以来、どのスマートフォンよりも高い数値だという。
調査では、回答者の39%が韓国Samsung Electronicsのスマートフォンを購入予定だと答え、19%がカナダBlackBerryの端末を購入予定だと答えている。
カーン氏によれば、企業は従業員が自分の希望の端末でどれだけ生産性を上げられるかをよく理解しており、その生産性をさらに向上させたいと考えているのだという。
「企業はコンシューマライゼーションを受け入れつつあり、Appleは間違いなくその波に乗っている」と、同氏は語る。
AppleはIBMとの業務提携により、自社製品を企業に直接的に販売する上で、実績ある企業に支援してもらえることになる。ヘイゼルトン氏によれば、私物端末の業務利用(BYOD)であれ会社支給の端末であれ、既にIBMの他、米VMware、米Citrix Systems、米MobileIron、米Good Technologyなど、主要ベンダーの既存のエンタープライズモバイル管理(EMM)プラットフォームは全てiOSをサポートしているという。
「Apple自身が企業市場に参入しようとしまいと、この分野にはApple製品を採用する企業をサポートしようと各社が参入している」と、同氏は語る。
詳細な情報が何もないので、IBMとの業務提携の影響を評価するのは顧客には難しい。オー氏によれば、Tech Superpowersにも、この業務提携がもたらす成果に関心を寄せている顧客がいるという。
「スクリーンショットも何もなく、情報がほとんどないのでは、発表としては失敗だ。単なるプレスリリースにすぎない」と、同氏は語る。
アプリケーションをめぐる提携の他にも、IBMはAppleの法人向けアプリケーション一括購入プログラム「Volume Purchase Program」(VPP)を使ってiOSアプリを購入するIT担当者の手間を軽減すべく、傘下の米Fiberlink Communicationsのモバイルデバイス管理(MDM)製品「IBM MaaS360」の機能を強化する方針だ。
Appleにコメントを求めて問い合わせたが、返答は得られなかった。
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