「アイスバケツチャレンジ」に学ぶ次世代ビジネスコラボツールの在り方:社内と社外をどうつなぐか
ビジネスコラボレーションソフトウェアは企業内の課題を重視することが多い。だが、企業はグローバルでモバイルにも対応した社外とのコラボレーションを実現する方法を受け入れ、プロセスを統一する必要がある。
コラボレーションソフトウェアの真の目的は、居場所にかかわらず、チームが共有するインテリジェンスを集積し、アイデアをクラウドソーシングすることだ。これを実現するには、社内外の境界を行き来することが可能な、より柔軟性の高いコミュニティーを作る必要がある。社内の情報をセキュリティで保護しながら、社内外でアイデアをやりとりできるコミュニティーだ。最終的には、そのアイデアをビジネスの手法に盛り込めるのが理想だろう。
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グローバルなチームをつなぐ
次世代のコラボレーションでは、組織的な共通点があるかどうかにかかわらず、世界中のグループが参加することが求められている。事実、多くの技術分野では、アイデア、コンセプト、アプローチがさまざまな場所からもたらされている。特に薬学研究や技術開発などの分野でこのような動向が見られる。例えば、米Googleは2013年にイスラエルのナビゲーションツールプロバイダーWazeを買収した。その結果、地球の裏側にいるチーム同士が協力して「Googleマップ」や「Waze」を開発・強化できるようになった。
英TechNavioが2013年5月に実施した調査では、組織間の情報共有がコラボレーションを促進する大きな原動力となることが明らかになっている。企業はグローバルにビジネスを拡大している。そして、情報を共有するためのグローバルな通信設備の需要が高まっている。
企業はグローバルなコミュニティーを認識するコラボレーションプロセスとツールを開発する必要に迫られている。次世代のコラボレーションツールは、さまざまな条件に対応し、国際色豊かな従業員に使われるものにする必要がある。具体的には、言語の違いや地域によって異なる法規制(データプライバシーや知的財産権など)に対処することが必要になる。
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モバイルな従業員
モバイルは、コラボレーションの分野では特に新しい概念ではない。少なくともここ10年間で、コラボレーションツールは、増加する従業員のモバイル利用に対応し始めている。
スマートフォンに関しては、まだ画面サイズや帯域幅、操作性など、さまざまな面で改良が必要なので、頻繁に移動する多忙なビジネスパーソンにとって、タブレットが最も有力な選択肢となることは間違いない。高性能な(そして大型の)スマートフォンは、その補助的なデバイスとして使われることになる。
もちろん、今もなおモバイルデバイスとPCの間でコラボレーションツールのエクスペリエンスには大きな格差が見られる。米Microsoft、Google、英Huddle、米Boxなどの製品は大きな発展を遂げているが、モバイルデバイスからの作業には問題がある。スマートフォンからドキュメントを編集したことがある人ならよくご存じのはずだ。
だが、モバイルデバイスで仕事をするための機能は進化している。米Amazonの「Fire Phone」は、操作性がモビリティによってどのような影響を受けるかを考えて、不便な点を解決することに取り組んでいる好例だ。例えば、「ダイナミック・パースペクティブ」と呼ばれる機能を導入し、Fire Phoneがユーザーの持ち方や動きに対応して画面の表示を変えるなど、使いやすさの向上を狙っている。
モバイルは、次世代のコラボレーションにおける重要な要素だ。ほとんどの人がモバイルデバイスを持ち歩くようになっているのは紛れもない事実である。そのため、次世代のコラボレーションの手法やツール、プロセスは、モバイルに関連する主な懸念事項に対応しなければならない。具体的には、複数のデバイスとOSに対応したセキュリティ、インタラクティブ性、データのライフサイクル管理(作成/編集/処分)、データセキュリティ、権限管理といった課題に対応する必要がある。
一枚岩ではない世界
社内外の参加者のコラボレーションによって問題を解決しようとする組織が考えるべき問題として、「アイスバケツチャレンジ」の例を挙げておきたい。筋萎縮性側索硬化症(ALS)と闘うための資金を集めるこのキャンペーンでは、ある団体が資金を調達するために協力を呼びかけることに尽力していた。その団体は資金調達という目的を達成するために、外部の協力者からなる巨大なコミュニティーに依存していた。だが残念ながら、団体内部で行われてきたキャンペーンの定義、成功基準の体系化、データの収集、進捗の管理、ナレッジの収集といった作業は、効果的なツールで管理されていなかった。そのため、この団体は、キャンペーンに対する反応をほとんどコントロールすることができなかった。これが一般消費者と企業の両方が関与するコラボレーションの実情だ。
次世代のコラボレーションでは、上述のようなまとまりのない活動を企業がしっかりコントロールしなければならない。完全な接続性が確保されたコラボレーション環境が整うことは難しい。だが、コラボレーションツールやプロセス、テクノロジーは、さまざまなコミュニティーで展開するパッチワークのような活動について、もっと認識しやすいものであるべきだ。例えばキャンペーンが社内のMicrosoftの「Microsoft SharePoint」上で考案され、Googleの「YouTube」ビデオの一部として拡散され、米Twitterの「Twitter」上で大きな話題になっていくような場合にも、企業はこれらの動きを一貫した方法でつなげる必要がある。
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次世代のコラボレーションを実現する
本稿で紹介した問題を、1つのテクノロジーやツールで効率的に解決することは恐らくできない。もっともらしく言えば、コラボレーションをサポートするテクノロジーの世界は細分化が進み、企業にとってはコントロールが難しくなる。だが、このような課題は、プロセスとテクノロジーによって対処し、軽減できる。
グローバルなチーム、モバイルな従業員、一枚岩ではない世界は、それぞれ課題を抱えている。だが、その課題を軽減することは可能だ。自動翻訳や洗練されたアプリケーションの開発、検索技術などのテクノロジーによって、それぞれの課題をコントロールすることはできる。また、コラボレーションのガイドラインと原則の統合と確立によって、技術格差は縮まるだろう。さらに、適切な教育を受けた従業員は、直感力を働かせて、具体的な方法で企業に次世代のコラボレーションをもたらす環境を構築できるだろう。
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