可能性が広がる人工知能【後編】
人工知能の時代がすぐそこに CIOが解決すべき10の課題
米IBMの「Watson」をはじめ人工知能(AI)技術が発達し、今後次々と生まれる新たな可能性は非常に巨大だ。本格的にAI時代がくる前に備えておくべき10の課題を紹介する。
ハイプサイクルに追加すべき「特異点」
私も多くの人々と同じく、人工知能(AI)技術は今、変曲点にあると考えている。米Googleの「Google Search」の辞書の定義によると、「Singularity」(特異点)という用語は、ある関数が無限大の値を取る点を意味し、時空間ではブラックホールの中心のように物質の密度が無限大となる点を指す。ムーアの法則を信じるかどうかにかかわらず、AI技術の進歩が急速に進んでおり、その機能の重要性が高まっているのは疑問の余地がない。特に人間とのつながりという部分では極めて重要性が高い。生体工学で作られる人体部品はもはや、SFの世界の話でもなければ、学術的研究の領域に閉じ込められているわけでもない。人間とコンピュータとの間のインタフェースはもはや、マウスを動かしたり、自撮りをしたり、腕や足を動かしたりするといったことだけにとどまらない。電気機械部品やシリコンベースの技術を人体に接続したり埋め込んだりするようなことも現実となっているのだ(前編記事:挫折を重ねてきた人工知能研究が今注目される“歴史的な理由”とは)。
機械がいつか知性を持つようになる可能性について懐疑的になるのは、合理的な態度だろう。だが、機械が人間に近い知性を備えた段階で進歩が止まると考えたり、ウィットや知恵の競争では人間は機械に決して負けないと考えたりするのは非合理的だ。われわれが機械に対するコントロールを維持できるかどうかにかかわらず(われわれがそれを望むと仮定した場合だが)、人間より優れた知性を持った存在が出現することによって、われわれの活動と願望の性質はすっかり変わってしまうだろう
マービン・ミンスキー『Matter, Mind and Models』、IFIPS(国際情報処理学会国際連合)会議議事録(1965年、Spartan Books、65:Vol. I)
米Gartnerのハイプサイクルには、「特異点」という6番目の段階を設けるべきではなかろうか。
AI時代に向けてCIOが実行すべき10の作業
最高情報責任者(CIO)にとって、AI技術から既に生まれた可能性および今後次々と生まれる新たな可能性は非常に巨大だ。これらの可能性がどんな結果をもたらすかは、今のところ想像に頼るしかないが、CIOをはじめとするIT幹部が、こうした可能性の方向をコントロールし、最大限の影響を及ぼすための方策を以下にまとめた。
- AIの基本的な概念と原理をまだよく知らないのであれば、本を読んだり、セミナーを受講したり、同僚から話を聞いたりして、AI分野に精通する必要がある。
- AI分野に精通しているかどうかにかかわらず、AI技術の今後の発展を常に注視すべきだ。この分野は急速に変化するからだ。
- 社内にイノベーションを担当する部署が既に存在するのであれば、AI技術をテストと開発の対象に含める。イノベーション担当部署が存在しないのであれば、新たに設立する。
- AI分野の担当者には特に優秀な人材を採用する。経費を惜しんではならない。
- どんな新技術についてもいえることだが、AIを利用した製品やサービスを開発するに当たっては、投資に対して妥当な利益が確保できるように商業化の可能性を重視する。
- AIアプリケーションに関する情報を社内および社外のステークホルダーに公開する。この分野では情報を正しく伝えることが極めて重要であり、それが競争での差別化にもつながる。
- AI技術の開発や配備が既存の従業員の仕事を奪う可能性がある場合、適切な人事方針/計画を策定する。影響を受ける従業員に十分な説明と再トレーニングを行うことが、従業員の抵抗や妨害工作を最小限にとどめ、最終的に配置転換を受け入れてもらえることにつながる。
- 営業やサービス、製造、予測などの業務に対する専門的アドバイスを得るためにAIを活用する場合は、影響を受ける従業員に対しAIツールを導入する目的を理解してもらうことが大切だ。従業員の仕事を支援し、従業員の生産性と価値を向上させ、顧客満足度を高めることが目的であり、これは従業員の満足と定着率の向上にもつながることを説明する。
- AIアプリケーションがビッグデータや個人データを扱う場合には、データの流出や不正利用を防ぐために、情報のセキュリティとデータプライバシーに関するポリシーや手続き、方法およびツールを活用しなければならない。ビッグデータとAIの組み合わせは極めて強力であり、これを防護するには相応の方法と手段が必要になるからだ。
- 経営幹部、最高経営責任者(CEO)や最高技術責任者(CTO)などの責任者および従業員とともに、AIを利用した新しい製品やアプリケーションの倫理的およびモラル面での潜在的影響を真剣に検討する必要がある。これにはデータをどのように収集、保存、検索、利用するのかという問題も含まれる。これは特に医療や公共インフラに関連したアプリケーションで重要だ。文字通り人間の命が懸かっており、意図せぬ結果が生じたときに、大きな経済的・社会的混乱が起きる恐れがある。
最後に:ミスター・ポテトヘッド
現在、機械がわずからながらの意識を持ち始めている事実を見れば、機械的意識の究極的発展を押しとどめるのは不可能かもしれない。暗い地下室の中にあるポテトでさえも、生き延びるためにある程度のずる賢さを持ち合わせているのだ
――サミュエル・バトラー『Erewhon』(1872年発表、New Zealand Electronic Text Centre)(バトラー氏は英国の作家)
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