一体何ができる? 新しい「Office 2016」は今までとどう違うか:「Office 2016」の解体新書(2/2 ページ)
2015年9月に日本マイクロソフトは「Office 2016」をリリースしました。今までのMicrosoft Office製品とはどのような点が違うのでしょうか。
IT管理者におけるOffice 2016
Office 2016は、Officeアプリケーションだけでなく、運用/管理面でも新機能があります。例えば、IT管理者は、Office 2016を社内のクライアントPCにインストールしたり更新したりする際、「バックグラウンドインテリジェント転送サービス(BITS)」という機能を使うことで、ネットワークトラフィックの制御ができます。
BITSは、ネットワークのパフォーマンスを低下させることなく、大量のデータを転送できる機能です。ネットワークの未使用の帯域幅を利用し、データを少量ずつ転送して、転送先でデータを再構築することにより、大量データの転送を実現します。管理者はこの機能により、Office 365 ProPlusの更新プログラムの展開やライセンス認証など、さまざまな場面でネットワークトラフィックの制御ができます。
Office 2016は、Officeの既存のカスタマイズとの互換性を維持するために、マクロやアドインに関するシステムを変更していません。そのため、Office 365 ProPlusを使用していた企業はOffice 2016でも、バージョンを管理、展開するためのツールやプロセスの大半を同様に利用できます。
Office 2016のインストール
Office 2016をインストールしてみて次の点に気が付きました。
Office 2013からアプリケーションストリーミング展開技術「クイック実行」のプロセスを使用したインストールとなりました。クイック実行の特徴として、必要なコンポーネントがインストールされれば、インストールの途中でもOfficeアプリケーションが起動できることが挙げられます。しかし、Office 2016は全コンポーネントのインストールが完了するまでは各アプリケーションの起動ができませんでした。
それでもクイック実行プロセスなので、従来のmsiファイルを使用したインストールより十分に早くインストールが終了します。
IT管理者がユーザーごとにOffice 2016をダウンロードする場合
Office 365 ProPlusでもOffice 2016が利用できます。そのため、Office 365 ProPlusを使っていた企業の担当者はエンドユーザーが使っているアプリケーションの更新計画を考えていく必要があるでしょう。現状では、Office 365 ProPlusのエンドユーザーが、利用中のOffieアプリケーションをOffice 2016ベースにアップデートするには、IT管理者がOffice 365の管理ツールである「Office 365管理センター」でエンドユーザーもしくは組織全体に対して先行リリースを設定する必要があります。
IT管理者がOffice 2016のインストールを一元管理する場合、日本マイクロソフトがOffice 2016用の展開管理ツール「Office 2016Deployment Tool」を提供しているので、それをダウンロードして使用する必要があります。
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Windows 10と同様のアップデートモデルを採用
Office 2016は、Windows 10が採用しているアップデート方法と同じ方法を採用しています。Windows 10のアップデート方法は従来までのメジャーバージョンアップのような、名称変更を伴うバージョンアップをなくす方針になりました。それにより、Windows 10のコンシューマーのユーザー向けアップデートは「Current Branch(CB)」という機能更新方式を採用しています。年に2、3回程度やってくる比較的大規模なアップデートでWindowsの機能強化や更新をする仕組みになる予定です。
このCB方式が今回のOffice 2016にも採用されました。そのため、年に2、3回程度、Office 2016アプリケーションの比較的大規模なアップデートがあります。しかしながら、企業では事前検証の負荷を考慮し、頻繁なアップデートを避けたいことがあるでしょう。そこで、CBよりも少し時間をおいたタイミングで適時アップデートが可能な「企業向け最新化モデル(Current Branch for Business:CBB)」も用意しています。
新しい仕組みを備えているOffice 2016
Office 2016は今までの Office 2013の機能を網羅し、かつ新しい仕組みを備えたOfficeアプリケーションとなります。企業で利用されるMicrosoft Officeは、バージョンアップや端末/OSのリプレースにより最終的には、全てこのOffice 2016に統一されていくことでしょう。これにより、長年課題となっていた Officeのバージョンの管理やトラブルに終止符が打たれるかもしれません。次回は、Office 2016を構成する各アプリケーションの新機能に着目して解説していきます。
執筆者紹介
阿部直樹(あべ なおき)
三井物産セキュアディレクションに所属し、セキュリティコンサルタントとして活動。元マイクロソフト認定トレーナーで、 トレーナーアワード(2010年)およびMicrosoft MVP - Cloud and Datacenter Management(2010年4月〜2016年3月)6年連続受賞。個人ブログ『MCTの憂鬱』でMicrosoft関連情報を発信中。
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