Windowsとクラウドの新時代【後編】
クラウドでWindowsを動かすのに“見なかったふり”はできない問題
企業のIT部門が社外サーバにWindowsベースのワークロードを積極的に移行しようとしている。そこで問題になるのがWindowsのライセンスと既存パブリッククラウドとの“相性”だ。
クラウド環境においてWindowsのライセンスはどうなるのだろうか。当然のことながら、クラウドプロバイダによってその扱いは異なる。
例えば、「Amazon EC2」でWindowsソフトウェアを動作したいAWSのユーザーは、関連するWindowsライセンス料金を総合価格に組み込んでいるインスタンスを実行できる。また「SQL Server」や「SharePoint」などのWindowsソフトウェアの場合は、既存のMicrosoftライセンスをAWSに持ち込める。
だが2nd Watchのブリースナー氏によると、ユーザー企業が保有するWindows ServerライセンスをAWSに移行するための現実的な選択肢があるとは限らないという。
「100本のWindows Serverライセンス用のEA(エンタープライズアグリーメント)を保有していて、50個のオンプレミスサーバをAWSに移行する場合、しばらくの間は二重払いをしなければならない。Microsoftとの契約ライセンス数を縮小するには時間がかかるからだ」とブリースナー氏は語る。
AWSはユーザーが保有するWindows Serverライセンスの持ち込みを認めているが、そのためには使用するCPUのコアとソケットを確認できる必要があるが、AWSは必ずしもこの要件に対応していなかった。だが2015年11月の「AWS EC2 Dedicated Hosts」のリリースで状況が改善した。
EC2 Dedicated Hostsでは、ユーザーは専用のAWSサーバをきめ細かくコントロールでき、AWSサーバの可視性も高まった。これにより、ユーザーは保有するWindows ServerライセンスをAWS EC2に持ち込めるようになった。「これはユーザー専用のホストだ」とブリースナー氏は説明する。「保有しているOSライセンスを移行し、そこからインスタンスを幾つでも好きなだけ切り出せる」
EC2 Dedicated Hostsや「Dedicated Instance」の外側では、ユーザーが保有するWindows ServerライセンスのAWS持ち込みは事実上不可能だ。Dedicated Instanceは2011年にリリースしたサービスで、ユーザーが使用するAWSハードウェアへの可視性を提供するが、Dedicated Hostsほど徹底しているわけではない。ブリースナー氏によると、専用ホストに飛びついたAWSユーザーはまだそれほど多くないという。
Microsoftも2015年10月、同社の「Bring Your Own License」(BYOL)プログラムを通じてライセンスの移動が既に可能だったSQL Server、SharePointと同様に、ユーザーが保有するWindows ServerライセンスのAzure持ち込みを可能にする計画を明らかにした。
「Google Compute Engine」のユーザーも、一部のMicrosoftアプリケーションについてはユーザーが保有するライセンスを流用できるが、Windows Serverについてはその権利を認めていない。ライセンス規定を説明したGoogleのWebサイトによると、GoogleのユーザーはGoogle Compute EngineでWindowsベースのインスタンスを利用してWindows Serverを実行する必要があるとしている。
Windowsの世界は続く
451 Researchのブルックス氏によると、「クラウドで動作するWindowsの進化において、Microsoftにはまだ課題が残っているが、Azureはパブリッククラウド市場のリーダーであるAWSに対抗できる実力を備えている」という。Microsoftによると、2016年の第1四半期におけるAzureの売り上げと稼働数は前年比で2倍以上に増加し、同社の商用クラウドの売り上げは年換算で82億ドルを上回った。
「売り上げという視点からAzureの動向を見れば、Microsoftが1年前よりも積極的にこうした数字を公表している理由が分かる」とブルックス氏は話す。「MicrosoftがAWSと十分に競争していると主張できるくらいの勢いを、ついに、つけたからだ」
「もちろんこれは、企業市場におけるMicrosoftの巨大なインストールベースによるところが大きく、今後もこの要因は変わらないだろう」とIDCのギレン氏は話す。
「企業市場には膨大な数のWindowsが存在する。Linuxや次世代のアプリケーションなどが大きく注目されているが、インストールベースを実際に支配しているのはWindowsだ。今後も長い間、Windows中心の世界が続くだろう」(ギレン氏)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
技術文書・技術解説
[アトラシアン株式会社] なぜAIを導入しても効果が出ない? 組織全体で使いこなすための仕組みとは -
製品資料
[プログレス・ソフトウェア・ジャパン株式会社] ネットワーク全体を見える化、フロー分析で実現する広域監視と迅速な異常検知 -
製品資料
[プログレス・ソフトウェア・ジャパン株式会社] SNMPより詳細で、パケット解析より簡単な「トラフィック可視化・分析」の方法 -
製品資料
[プログレス・ソフトウェア・ジャパン株式会社] 重要性を増す“侵入後の可視化” どのように実現すればよいのか? -
市場調査・トレンド
[クラウドストライク合同会社] 回避型攻撃が急速に拡大、連鎖する攻撃を防ぐためのアプローチとは?
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
NVIDIA「一強体制」の終わりか データセンターを襲う“電力の壁”
-
2
PHP脆弱性「PHP2Shell」で2260万件に影響 情シスの緊急チェックリスト
-
3
半数がブルーカラー転向を視野に? ベテランエンジニアを追い込む“54歳の壁”
-
4
岐阜県庁が7000人規模でも重くならないテレワークを「Prisma Access」で実現
-
5
「セキュリティ運用と侵入後の初動防御」に関するアンケート
-
6
SAPクラウド移行の「その先」とは? 先行企業が明かす周辺投資の実態
-
7
jinjerが進める「適材適所」のデバイス活用
-
8
「アップグレードできないJava」をどう守る IBMとRed HatがAIで400件超修正
-
9
「パスワード使い回し8割」の衝撃 なぜ“パスキー移行”が必要か
-
10
Claude Codeで開発生産性は本当に上がったか? 3社の取り組みに学ぶ次なる手段
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
AI駆動攻撃にどう対抗する? 超速の攻撃からエンドポイントを保護する方法
-
2
「IT史に名を残すシステム障害」8選
-
3
10G回線の真価をフルに享受するには? 導入前にチェックしたいポイント
-
4
SCS評価制度時代の「SASE選定」ガイド
-
5
顧客対応自動化の要点:RAGとデータ連携で“業務で使える生成AI”にする方法
-
6
マンガで解説:情シスの負担を減らす「MDRサービスのインシデント対応」の中身
-
7
「EDR」選定ガイド:比較・検討フェーズで整理すべきポイントを解説
-
8
なぜAIは組織で定着しないのか? 全社展開を阻む「3つの壁」と突破のヒント
-
9
ランサムウェア攻撃“究極の対策”はこれだ
-
10
情報セキュリティ対策早分かりガイド:25の自社診断で弱点と解決策を理解
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー