事例で分かる、中堅・中小企業のセキュリティ対策【第3回】
「ランサムウェア」に感染するとどうなる? 最低限ながら有効な対策とは(1/2 ページ)
ランサムウェア被害が企業規模も地域も問わず急増しています。特に中小企業の場合は、被害に遭遇してしまうと泣き寝入りしてしまうケースも。実際にどんな被害が起き、早急に取り組むべき対策は何なのでしょうか。
連載について
情報セキュリティ対策をしたくても、ITに詳しい人が社内外にいなくて困っている中堅・中小企業は多いのではないでしょうか。「知識不足」と「ヒト、モノ、カネ不足」の問題が目の前にあっても、対策は待ったなしの状況。予算を握る上司を説得するために、サイバー攻撃の事例を紹介しながら、その効果的な対策につながる情報セキュリティ製品を分かりやすく解説します。
身代金要求型マルウェア「ランサムウェア」が全国的に猛威を振るっています。
ランサムウェアは、PCの画面をロックしたり、内部に入っているデータを暗号化したりして使用不可能にし、その上で「身代金と引き換えにデータを元に戻す(復元する)ための鍵を受け渡す」と要求するマルウェアです。データを元に戻すためには攻撃者が保有している復元用の鍵が必要になりますが、身代金(「ビットコイン」などの仮想通貨を要求する場合がほとんど)を払ったとしても攻撃者が鍵を渡してくれるかどうかは不明です。そのため被害に遭遇してしまうと対処のしようがなく、バックアップがない場合は泣き寝入りしてしまうケースも見受けられます。
併せて読みたいお勧め記事
中堅・中小企業のセキュリティ対策の課題
- なぜ中小企業の経営者は、情報セキュリティ対策を後回しにしてしまうのか?
- 「中小企業はサイバー攻撃に狙われない」と思い込んでいる上司をどう説得する?
- 中堅・中小こそ必要なセキュリティ対策、今すぐ使える11のチェックリスト
身代金要求型マルウェア「ランサムウェア」について詳しく
日本のセキュリティ問題の情報窓口であるIPA(情報処理推進機構)に寄せられたランサムウェアに関する相談件数は、2016年第一四半期(1~3月)は124件でした。2015年同期の相談件数は6件でしたので、約20倍に激増しています。トレンドマイクロの調査でも同様に、2016年第一四半期(1~3月)のランサムウェア検出台数が2015年同期比の約9倍と激増しているというレポートが発表されました。
かくいう筆者も、全国各地でランサムウェア被害の実態を耳にしたり、相談を受けたりした数が2016年に入ってから急増しています。エリア(北海道から沖縄まで)、企業規模(上場企業である大手企業から中堅・中小企業まで)に関係なく、隅々にまで被害が拡大していることを肌感覚でも実感しているため、非常に強い危機感を覚えます。
ランサムウェア、特に暗号化型ランサムウェアに非常に強い危機感を覚える理由は、これが「データ破壊型」のウイルスである、ということです。特に中小企業の場合、データのバックアップを手動で行っていたり、担当者が忘れてバックアップをしていない状態であったり、ということは少なくありません。この状態のまま被害に遭遇してしまった場合に、データの復旧が不可能になり、業務運営上の大ダメージを受けているケースが現実的に発生しているのです。
例えば実際に、ある企業で次のようなケースが発生しました。
事例:ファイルに変な拡張子が付いていて、身代金を要求されている
従業員30人の製造業。担当者宛のメールボックスに、1通のメールが届いた。送信元には自分の名前が記載されている。
「あれ? お客さまに送ったメールが宛先不明で返ってきたのかな?」
担当者は疑いもなく、メールに添付されていた圧縮ファイルを解凍した。
突然、PCの中にあるデータが書き換えられ始めた。今まで作ってきた「Microsoft Word」や「Microsoft Excel」形式のファイル、設計図面データや生産経過を示す情報、工場現場の写真や動画、販売管理データなど、PCの中にある全てのファイルの名前が書き換えられ、今まで見たことのない「locky」という拡張子が付加されていく。直感的にウイルスに感染したことが分かったが、解決方法が分からなく、書き換えられていく状態をぼうぜんと見ているしかなかった。
その後、デスクトップ画面上に「!!!重要な情報!!!! 全てのファイルはRSA-2048およびAES-128暗号で暗号化されています……あなたのファイルの復号は秘密鍵でのみ可能であり、私たちの秘密のサーバにあるプログラムを復号します」というテキストメッセージが表示された(写真)。どうやらデータの復元のためには、ビットコインで5万円分ほどの身代金を支払い、復号鍵を入手しなければいけないらしい。
データが暗号化されてしまったPCは、販売管理システムのサーバをファイルサーバ代わりにしてネットワークドライブでデータを共有していた。まさかと思い、販売管理システムを起動してみるとエラーが表示されてしまい、伝票発行などの販売管理業務ができなくなってしまった。
悪いことは重なった。かつてはバックアップを手動で取得していたが、業務の繁忙さにかまけてここ何カ月も取得していなかったのだ。まさかPCやサーバ(販売管理システム)が故障してデータがなくなることはないだろう、と高をくくっていたのが悪かった。結局、破壊されたファイルを元に戻すことができず、データの復旧を諦めるしかなかった。通常業務に戻るまでに3カ月の期間を要するほどに大きな損失を被ってしまった。
このような状態になった場合、業務が停滞してしまい、通常業務に戻るまでに無駄な時間や労力をかけてしまうのみならず、取引先に迷惑をお掛けする状況を作ってしまいます。それよりも懸念されるのは、重要情報の破壊です。今まで蓄積していた重要情報は、れっきとした経営ノウハウであり、重要な経営資産です。これらがランサムウェアによって一瞬のうちに破壊されてしまい、資産そのものを失ってしまう脅威に、現実的にさらされている事実に気付かなくてはいけません。
特にサイバーセキュリティの場合は被害に遭遇してから、ことの重要性に気付くことが多いものです。データを失ってから被害の甚大さに気付き「バックアップをしっかりと取っておけばよかった」などと後悔するのです。痛い目を見ないと改善する気にはならない、ということは人間の心理として仕方がないかもしれません。ですが、今回のようなケースでデータを喪失した場合、失ってしまった後の代償が大きいことに注意が必要です。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
事例で分かる、中堅・中小企業のセキュリティ対策
情報セキュリティ対策をしたくても、ITに詳しい人が社内外にいなくて困っている中堅・中小企業は多いのではないでしょうか。「知識不足」と「ヒト、モノ、カネ不足」の問題が目の前にあっても、対策は待ったなしの状況。予算を握る上司を説得するために、サイバー攻撃の事例を紹介しながら、その効果的な対策につながる情報セキュリティ製品を分かりやすく解説します。
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社うるる] 「入札市場」攻略ガイド:効率的に落札するためのポイントを徹底解説 -
製品資料
[株式会社うるる] 入札情報に特化した「販路拡大」「効率化」のためのサポートツールとは? -
市場調査・トレンド
[株式会社うるる] 公共入札に成功する企業と失敗する企業の「5つの違い」 -
製品資料
[日本ビジネスシステムズ株式会社] 専門家が教える、Microsoft 365の「テナント統合/分離」を成功に導く秘訣 -
製品資料
[rakumo株式会社] Microsoft 365での情報埋没を防ぐ、社内ナレッジを資産化する情報ポータル活用
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
PHP脆弱性「PHP2Shell」で2260万件に影響 情シスの緊急チェックリスト
-
2
「テザリング依存」に潜む落とし穴 “遅いVPN”を解消するネット構築術
-
3
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
4
「Windows」の不要なファイルを安全に消して容量を空ける方法
-
5
半数がブルーカラー転向を視野に? ベテランエンジニアを追い込む“54歳の壁”
-
6
「Microsoft 365」が乗っ取られる MFAを破る“本物の画面”の恐怖
-
7
Claude利用8割のGMO、AI人材の評価軸が「トークン管理」に変わった
-
8
被害額は過去最高額 それでも「サイバー犯罪者が捕まらない」3つの理由
-
9
ChatGPTは“検索しまくり”でGeminiは“淡泊”? データが明かすAIの裏側
-
10
「IT運用・情報システム業務」に関するアンケート
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
AI駆動攻撃にどう対抗する? 超速の攻撃からエンドポイントを保護する方法
-
2
2026年のサイバーセキュリティには何が必要か? 最新データに学ぶ傾向と対策
-
3
経験豊富な即戦力人材に直接アプローチできる、「攻めの採用」への転換術
-
4
「IT史に名を残すシステム障害」8選
-
5
最速72分でデータが流出? 最新の脅威トレンドや侵入手法から分かった防衛策
-
6
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
7
AI駆動開発のスピードと安全性を両立 「品質・セキュリティ管理」の実践ガイド
-
8
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
-
9
「標的型攻撃メール」事例・サンプル集
-
10
Microsoft 365のメールセキュリティ、3つの“死角”と追加で検討すべき対策とは
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー