やはり目指すべきは“保護”より“解放”
SQL Server on Linuxプレビュー版公開で探るMicorosoft“オープン化”の本気度
MicrosoftはSQL Serverの導入を促そうと、「SQL Server Enterprise Edition」機能を幾つか「Standard Edition」にも広げ、「SQL Server on Linux」を投入する。
Microsoftは2016年11月、「SQL Server 2016 Service Pack 1」をリリースすると同時に、Linuxで実行するSQL Serverで最初のパブリックプレビュー版も一般公開した。どちらも最新機能を追加しているが、その目的は同社の主力データベース製品であるSQL Serverのさらなる普及にある。
SQL Server 2016 Service Pack 1では、同ソフトウェアのさまざまなエディション間で一貫性のあるプログラミングモデルを追加している。このプログラミングモデルのアップデートにより、以前は最上位モデルのSQL Server Enterprise Editionに限定していた高度な機能の一部が「SQL Server Standard Edition」でも何らかの形でサポートされるようになる。「SQL Server Express Edition」を使用する開発者も、この幅広いプログラミングモデルがこのエディションのプラットフォームも含むようになったため、高度な機能を利用できるようになる。
一方、プレビューモードで一般公開した「SQL Server on Linux」のサポートにより、OSにLinuxを採用しているシステムでもSQL Serverデータベースが利用できるようになり、全く新しい分野への導入が可能になる。
併せて読みたいお薦め記事
MicrosoftとOSSの微妙な関係
- AppleとMicrosoftのオープンソース戦略がコミュニティーに支持される理由
- MicrosoftのLinux Foundation加入に驚きの声、OSS開発への貢献を加速か
- Linuxとコンテナを受け入れるMicrosoft、Windows管理者は頭を抱えることに?
SQLサーバ最新事情
SQL ServerのEnterprise/Standard/Expressの全エディションで新たにサポートされる機能には、データウェアハウスのパーティション分割、データ圧縮、行レベルのセキュリティ「Always Encrypted」およびデータマスキングがある。
SQL Serverはエディション間で圧縮機能や暗号化機能のサポート方法が異なることから、あらゆる種類の開発部門がEnterpriseとStandardという異なるエディションに取り組むことを余儀なくされている。この問題は独立系ソフトウェアベンダー(ISV)で特に顕著だとStraight Path IT Solutionsの創設者兼オーナーであるマイク・ウォルシュ氏は話す。
「多くのベンダーが圧縮を使用している。だが、顧客がその圧縮機能を利用するにはSQL Server Enterpriseエディションを購入しなければならない。ISVも自社に同ソフトウェアの2つのエディションを用意する必要がある」(ウォルシュ氏)
だが、この問題を抱えているのはISVだけではない。SQL Serverのこの状態はユーザーにも影響する。Enterpriseエディションの高いスケーラビリティを必要としないユーザーでも、コンプライアンスの重要な要素である行レベルの暗号化のような機能を利用するにはEnterpriseエディションを購入しなければならないと同氏は言う。
SQL Serverの細部に踏み込む
注意すべきことがある。「AlwaysOn可用性グループ」「マスターデータサービス」「Data Quality Services」など、MicrosoftがSQL Server Enterpriseエディションに導入した、高可用性、データ管理、ビジネスインテリジェンスのさまざまな機能は、StandardエディションとExpressエディションにはまだ含まれていない。
全エディション共通の開発モデルにより、プログラマーがSQL Serverの広範な機能セットを利用できるようになったのは事実だ。だが、高いスケーラビリティを必要とする作業は、依然としてSQL Server Enterpriseエディションが担う分野だ。
開発者は、Rによるデータベース内分析、インメモリOLTP(オンライン トランザクション処理)、列のストアデータウェアハウジングジョブのプログラミングが可能だ。これらは全てSQL Server 2016の機能とされている。だが、サポートされるプロセッサコアの最大数は、Expressエディションで4コア、Standardエディションで24コアとなっている。これに対し、SQL Server Enterpriseエディションでサポートされるプロセッサコア数には制限がない。
とはいえ、ウォルシュ氏にとっても他の開発者にとっても、共通プログラミングモデルのサポートは大きな前進だといえる。
「企業は、列のストアやインメモリOLTPに取り組み始めていて、今後増えていくだろう。このような機能があれば、データの取得や分析が向上する。実際のところ、どれだけ多くのコアが使用されるかではなく、暗号化やテーブルのパーティション分割のような実用的な機能を直接幅広く使用できることに魅力を感じる」(ウォルシュ氏)
SQL Serverで新しいアプリが生まれる
SQL Server 2016 Service Pack1でのMicrosoftの取り組みにより、高度な機能が使いやすくなり、開発者がこれまで直面してきた障害が取り除かれるだろうと、同社のクラウドとエンタープライズテクノロジーグループでエグゼグティブバイスプレジデントを務めるスコット・ガスリー氏は話す。同氏はニューヨークで開催されたMicrosoftによる開発者向けカンファレンス「Connect(); // 2016」で、SQL Serverの機能強化と他のさまざまな製品イニシアテブについて述べた。
「インメモリデータ分析サポートやAlways Encryptedサポートのような、プログラミングモデルの優れた機能は、SQL Server Enterpriseエディションでしか利用できなかった。常に最も高価なエディションを購入する必要があり、それが開発者やISVの障害となっていた」(ガスリー氏)
同氏は、新しいイニシアテブの中でもSQL Server向けのDockerサポート、「Azure Data Lake Analytics」と「Azure Data Lake Store」の一般提供、「Visual Studio for Mac」のプレビューを高く評価している。特にVisual Studio for Macのリリースは、Microsoftが約束したオープン化の実現に向けての取り組みを明確に示している。
オープン化に向けたSQL Server on Linux
だが、オープン化に最も効果があるのはLinuxへの移植かもしれない。同カンファレンスで、Microsoftは待望のSQL Server on Linuxのパブリック プレビュー版をリリースした。同製品は現在「SQL Server v.Next」と呼ばれる次期SQL Serverに含まれるようになる。「SQL Server on Linuxは、新しいデータアプリケーションの開発を促す全く新しいビジネスチャンスをもたらすだろう」(ガスリー氏)
Gartnerのアナリスト、マービン・エイドリアン氏によると、SQL ServerのLinuxへの参入により、Microsoftが以前は他の企業に譲っていた分野に同製品の活用が広がるという。
「Windowsを使用しないユーザーにとって、理由はともあれ、SQL Serverは信頼性があり、優秀な選択肢になる。両方の環境を使用しているユーザーにとっては、今までに培ったスキルを生かして移植性を高める機会が得られる」(エイドリアン氏)
ウォルシュ氏にとっては、SQL Server on Linuxが他の製品の代替となる手頃で多機能な製品になり、Microsoftが幅広いユーザーのニーズを満たすために調整を行う準備ができていることを証明していると考えられる。
「こうした動きは、Microsoftがあるユーザーの条件を満たすと宣言したら、それが現実になることを意味する」(同氏)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
技術文書・技術解説
[Jamf Japan 合同会社] MDMだけでモバイルセキュリティは十分? 不足する対策を16項目でチェック -
事例
[Wrike Japan 株式会社] 世界的な家電メーカーが実践する「クリエイティブプロセス効率化」の方法とは? -
事例
[Wrike Japan 株式会社] 世界的テクノロジー企業に学ぶ、プロセス標準化とプロジェクト納品自動化の秘訣 -
事例
[Wrike Japan 株式会社] ソニー・ピクチャーズ テレビジョンに学ぶ、次世代サービスデリバリーのヒント -
事例
[Wrike Japan 株式会社] ソミック石川に学ぶ、ICT浸透後に直面した「工数管理」の課題と解決策
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
脱VMwareの前提が崩れる BroadcomのVDDK公開停止で確認すべき点
-
2
「Copilot」はなぜ放置される? “議事録要約止まり”を脱する処方箋
-
3
「データストレージの活用方法」に関するアンケート
-
4
AIが本番環境を削除し復旧に13時間 「暴走」ではなかったAWS事例
-
5
IT人材の42%が転職予備軍 辞めさせない組織の4つの共通
-
6
ANAが専用回線から移行した「NaaS」の全貌 ネットワーク準備が数カ月から数週間に
-
7
「Microsoft一択」で本当にいいのか 知らぬ間にライセンス費用が膨らむ真相
-
8
「Microsoft 365」が乗っ取られる 跡形もなくMFAを破る手口
-
9
エンジニアが選考を辞退する本当の理由 7割が隠す“面接の違和感”とは
-
10
膨らむAIコストに歯止め GitHubのマルチモデルルーターは何が違うのか
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
マンガで解説:「ゼロトラスト」「SASE」の必要性とメリット
-
2
5回聞くだけじゃ足りない? トヨタ式「なぜなぜ分析」の正しい実践方法
-
3
インシデント対応工数を約3割削減、東京ガスの事例に学ぶ監視体制刷新のコツ
-
4
AIエージェントで多様な日常業務を効率化するための入門ガイド
-
5
JR西日本ITソリューションズが「監視業務の属人化」を解消した方法とは?
-
6
国税庁の次世代基幹システム「KSK2」稼働開始に向けて、対応すべき変更点とは?
-
7
5分で分かる「セキュア大容量ファイル転送サービス」の機能とメリット
-
8
ドラマで分かる、標的型攻撃メールの被害を受ける企業と回避できる企業の分岐点
-
9
「脱Excel」か「Excel快適化」か? 現場にやさしい業務改善の進め方
-
10
少額減価償却資産が40万円未満へ拡大、令和8年度税制改正で押さえるべき変更点
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー