NVMe over Ethernetがこじ開けるネットワーク対応ストレージ主役への扉:データ転送ボトルネックの解消が急務(1/2 ページ)
2014年にリリースされているにもかかわらず、ネットワーク対応ストレージのパフォーマンスに不安を覚えるユーザーは多い。「NVMe over Fabrics」のイーサネット版が、この状況を変えるかもしれない。
ネットワーク対応ストレージ製品を最も早い段階でリリースしたベンダーの1つがSeagate Technology(以下Seagate)だ。2014年に製品を発表している。その数カ月後には、Western Digital(以下、WD)傘下のHGSTがネットワーク対応ストレージ製品を発売している。ただし、この2モデルはネットワーク対応ストレージでありながら異なるサブクラスの属しており互換性はない。Seagateの「Seagate Kinetic HDD」がビッグデータをターゲットにしているのは明らかで、キーとデータのアドレス方式を採用している。一方、WDの製品にはHDD収容ユニットで動作するLinuxサーバを導入している。
発売から2年が過ぎたにもかかわらず、依然として市場はさらなる発表を待っている状態だ。Supermicroなどのベンダー数社は、SASやSerial ATAではなくイーサネットによるネットワーク対応ストレージとの接続をサポートできるJBOD(Just a Bunch Of Disks)を使用するアプローチをサポートしている。Seagateも2015年9月に発表した容量8TBのKinetic HDDで採用テクノロジーを最新に保っている。だが、それでも1年以上が過ぎてしまった。Kinetic HDDについて続くモデルの発表がない状態が続いている。
この問題の一因は、HDDベンダーがHDDだけを熟知していることにある。これは、採用するインタフェース規格の体系化を他業種ベンダーやオープンソースコミュニティーに任せる傾向があることを意味する。
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その具体的な例をKinetic HDDで確認してみよう。Kinetic HDDではRESTインタフェースを採用している。RESTインタフェースはオブジェクトストレージ市場に適合しているが、オブジェクトストレージはREST経由でHDDにアクセスできない。そのため、オブジェクトストレージはREST経由でまずアプライアンスにアクセスする。アプライアンスは、典型的なオブジェクトストレージのベースとなる複数のHDDの構造と複雑な冗長システムをユーザーから隠している。このような事情からKinetic HDDは分散ストレージ技術の「Ceph」やその他のパッケージなど、ごく一般的なオブジェクトストレージに適合しない。
WDのアプローチは、HDDのインタフェースでより高度なソフトウェアを使用するサービスに適している。例えば、ユニットの接続にiSCSIやCephを使用できる。だが、Kinect HDDで発生したドライブストレージの問題とは対照的に、WDが提供するLinuxベースのネットワーク対応ストレージの展開を阻んでいるのはシステムデータ配布の問題だ。
WDの研究部門になるWDLabsは、最近になって504台のHDDを用いた実験用のCephクラスタを構築し、ネットワーク接続ストレージの利用目的や利用場面を探っている。なお、ここでCephのクラスタを構成する各HDDでは、Cephオブジェクトストレージのデーモンコードを実行している。これは、現在運用しているネットワーク対応ストレージにはない種類だ。加えて、WDLabsは、AMDが64ビット対応ARMプロセッサをベースに開発した「ARM64」というサーバ用CPU向けアーキテクチャを採用した。AMDではこのアーキテクチャをベースにしたSoC(System on Chips)を開発してサーバ向けチップとして投入する。そのSoCでは10Gbit イーサネット(10GbE)インタフェースをデュアルで搭載している。このインタフェースがCephでボトルネックが発生する主な原因となるという意見がある。そして、このことがネットワーク対応ストレージ全般で出遅れている理由の1つになっている可能性という見解もある。
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