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メルカリ、はてなは「物理サーバ」も使う、巨大サービスを支えるインフラ事情クラウドファースト時代にあえての決断(1/2 ページ)

クラウドファースト時代にあえて物理サーバを選択する企業がある。さくらインターネットの専有物理サーバを利用するメルカリ、はてなが、その理由や使い勝手を語った。

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パネルディスカッションの風景《クリックで拡大》

 「クラウドファースト」という言葉が浸透し、今やユーザー企業の多くがクラウドを当たり前のように検討・利用する時代となった。一方のクラウド事業者も、市場をリードするAmazon Web Services(AWS)を意識する事業者は、独自の強みを打ち出すのに必死だ。今回紹介するさくらインターネットも、日本国内ではAWSと競合する事業者の1社であり、さまざまなクラウドサービスを開発している。

 IaaSやPaaSといったパブリッククラウドは基本的に、ユーザー企業がハードウェアやハイパーバイザーを管理しない。インフラを覆い隠すことで、運用管理負荷を減らし、リードタイムを短縮する効果を発揮する。ところが最近、主要なクラウド事業者が、物理サーバに注目し、仮想マシンと同様の使い勝手で物理サーバを利用できるベアメタルクラウドの提供へ相次いで乗り出している。ベアメタルクラウドといえば「IBM Bluemix Infrastructure」(旧IBM SoftLayer)やリンクの「リンク ベアメタルクラウド」が有名だが、2016年後半から2017年にかけて、AWSやOracle、Microsoftといった大手事業者がサービス提供を開始したりコメントを出したりしている。2016年12月にはPacketがARMチップを採用したベアメタルクラウドの国内提供を開始し話題になった。クラウド全盛期の今、なぜ「物理サーバ」に再び注目が集まっているのか。ホスティングサービス「さくらの専用サーバ」を提供するさくらインターネットは2017年3月末、「クラウドファースト時代に、物理専有型サーバを選択する意味」について考えるセミナーを開催。さくらの専用サーバを利用しているメルカリとはてなが参加し、物理サーバの導入事例を語った。

スパコンにも利用される「さくらの専用サーバ」

 物理サーバのメリットは、共用環境のパブリッククラウドと比べて安定して高いパフォーマンスを維持できることにあるだろう。その上で断っておくと、物理サーバのホスティングサービスと、ベアメタルクラウドはサービスの中身が異なる。ベアメタルクラウドは、仮想マシンを利用するような感覚で物理サーバをGUI(グラフィカルユーザーインタフェース)から手軽に追加(利用開始)/削除(利用終了)ができる従量課金モデルのサービスだ。ホスティングサービスの場合は、物理サーバの調達に数日〜数週間かかることが一般的だが、ベアメタルクラウドであれば、数十分〜数時間といった短い時間で調達が可能。物理サーバを専有するため仮想マシンほど低価格かつ俊敏ではないものの、セルフサービス、スケールアウトといったクラウドならではのメリットは享受できる。

 その意味でさくらの専用サーバは、ベアメタルクラウドに比較的近いホスティングサービスと位置付けられるだろう。月額9720円(価格は全て税込)より利用でき、申し込みから最短10分で利用可能、OSインストールやサーバ再起動などはWebブラウザで利用可能な「コントロールパネル」から操作できる。ただし初期費用(8万6400円〜)が掛かる、時間単位の従量課金ではなく月額固定の料金体系であることなどから、名称通りホスティングサービスの色が濃い。リソース変動の激しいサービスには仮想マシンベースの「さくらのクラウド」の方が適しているといえる。この2つは相互接続することでハイブリッドクラウドも可能だ。また、さくらの専用サーバは、ハードウェア故障時にサービス停止のリスクが伴う、サーバのスペックアップ時にダウンタイムが発生するといったことから、システム側で冗長性を高め、障害のシングルポイントを排除する工夫も必要になる。

 さくらの専用サーバは2012年の提供開始から5年がたち、実績が豊富だ。最近では、産業技術総合研究所と先端素材高速開発技術研究組合が共同運営するスーパーコンピュータシステムに採用された。規模はサーバ台数が1024ノード、CPUは1サーバ当たり32コアで合計3万2768コア、メモリは262TB、総理論演算性能は約1153ペタフロップス(PFLOPS)に及ぶ。加えて100GbpsのInfiniBandでつながれ、高速な並列計算が行われている。

 これまで事業主体や開発主体が、自前でインフラを構築して運用することが当たり前だったスパコンの世界で、どうしてホスティングサービスが利用されることになったのか。さくらインターネットで専用サーバチームのシニアプロデューサーを務める加藤直人氏は、以下の点が評価された結果ではないかと説明する。

  • InfiniBandによる高速なインターコネクトが専用環境で利用できる
  • 機器の新規購入や保守運用で発生するコストを低減できる
  • PUE(データセンターのエネルギー効率を表す指標)が1.11と低い石狩データセンターを利用することで電力消費を抑制できる
  • さくらインターネットの経験豊富なエンジニアが運用要員として付き、障害の発見や復旧に迅速対応する

 さくらの専用サーバは、ハイパフォーマンスが求められるスパコンのような用途だけなく、Webサービスを提供するIT企業でも利用されている。さまざまなクラウドサービスがある中で、さくらの専用サーバに魅力を感じ、利用している企業がメルカリとはてなだ。セミナーでは、この2社とさくらインターネットによるパネルディスカッションが行われた。

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