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IoT活用で気を付けたい個人情報収集の問題、顧客の信頼を損ねない収集方法は個人情報と引き換えだけでは不信感(1/2 ページ)

IoTテクノロジーがデジタルな形で消費者の自宅、自動車、衣服に取り入れられていくにつれて、企業がユーザーとの間に築く関係は、これまでにないほど親密で個人的なものになる。

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信頼される企業になるためには何が必要か

 自社で販売する製品が所有者の声を聞いたり、日常生活に関するデータを収集したり、自動車の運転の手助けをしたり、眠っている子どもを見守ることができたらどうだろうか。価格、品質、耐久性という要素は、それほど重要ではなくなるだろう。最も重要なことは、製品を販売している企業が信頼に足るかということだ。

 最近、ワイヤレスホームオーディオを扱う米企業Sonosが、同社のプライバシーポリシーとデータの収集方法に関する変更を発表した。そして、世間は、新興分野であるIoTで企業がセキュリティとユーザーのプライバシーのバランスを取ることの難しさを目の当たりにすることになった。同社が発表した変更は無難なものに思えた。というのも、これらの変更は、基本的に製品のパフォーマンスを向上して、個人に合わせて製品をカスタマイズする目的で使用する種類のデータに関連するものだったからだ。実際、Sonosの対応は、プライバシーポリシー更新の標準的な慣例からいい意味で大きく外れた丁寧なものだった。同社は事前にブログで詳細な告知を行い、新しいプライバシーポリシーを明確にするために熱心な取り組みを行っていた。重要な文は下記の通りだ。

 「これらの変更を行う際、弊社ではプライバシーコミュニティーの専門家と作業をする時間を設けた。ベストプラクティスを理解し、使用する言葉が分かりやすく、将来においても的確であるようにし、混乱を招く法律用語の使用をできる限り避けた」

 だがSonosが誠心誠意対応したにもかかわらず、多くの顧客とメディア関係者は、新しいプライバシーポリシーのより厳しい面に目を向けていた。特にSonosがデータの収集範囲拡大に際して、オプトアウトの選択肢(利用者の意思でデータ収集をやめる)を用意しなかったことに注目が集まった。新しいプライバシーポリシーの条項に同意しない顧客は同社のソフトウェアを更新する権利を失う。そしてその顧客は、高額なハイエンドのシステムの機能を年月の経過と共に使うことができなくなっていくのだ。

全く新しいIoTの世界

 Sonosのプライバシー部門と広報部門は、このような反発があることを予期すべきだったのだろうか。そうではない。現在はIoTのあらゆる分野で競争が繰り広げられている。その目的は、より優れた機能と利便性を備えた新しい製品を提供することだ。コネクテッドホーム(家庭内IoT)、コネクテッドカー、デジタルヘルスケア、スマートシティーは幾つかの例にすぎない。世界にはIoTに対する需要であふれている。Sonosは反発を恐れず、顧客のニーズに応えて競争力を維持するために革新を続けなければならない。

 この原動力はSonosの新しいプライバシーポリシーにも反映されている。というのも、同社の新しいプライバシーポリシーは、ユーザーが音声コマンドによって音楽の再生を制御できる待望のボイスアシスタント機能と併せて発表されているからだ。このボイスアシスタンスの機能は、Amazonの「Amazon Alexa」で利用できるものと同様である。新しい音声機能の導入に伴うデータ収集は、適切な機能を確保して、その機能を向上するために不可欠だったとSonosは指摘する。

 ここで忘れてはならない事実がある。それは、Sonosがサードパーティーのストリーミングサービスに接続しなければならないワイヤレスメディアデバイスで安全な操作性を提供するというビジネスを展開しているという事実だ。これらのデバイスのセキュリティを確保して、顧客の個人データを保護することは、Sonosにとって当然の行動で、最大の関心事である。だが、IoTのビジネスモデルを展開している企業がIoTの限界に挑もうとすると、新たな規制の枠組みと対立する可能性もある。

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