「iOS 11.3」が病院の患者情報と直結、iPhoneとモバイルヘルスの未来予想図:次世代標準仕様「FHIR」は何を変えるか
「iOS 11.3」に搭載する機能の1つとして、Appleはヘルスケアアプリを刷新する予定だ。これによって米国のiPhoneユーザーは自分の健康記録にアクセスできるようになる。他の企業もこの流れに追随する可能性がある。
AppleやSamsung Electronicsなどのスマートフォンメーカーによるこの新しい動きは、患者が自分のデバイスを使って医療健康記録を閲覧することを奨励するものだ。その意図は、競合他社と自社の差別化を図る新機能が利用できることを強調する点にある。Appleは、患者がモバイルデバイスを使って自発的に健康記録の管理をするように誘導しようとしたものの幾度か失敗したために、戦略を変更しつつある。患者自身が各自のデータを入力、管理する方法ではなく、病院のシステムから患者データを引き出して表示する方法へと変更する。Appleのヘルスケアアプリが成功すれば、他の企業もAppleの手法に倣う可能性が高い。患者にとっては自身の健康記録の閲覧方法や、データとの関わり方が変わる可能性がある。
Appleは、所定の病院からしかデータを引き出せてこなかった。というのは、ヘルスケアデータへのアクセスに関しては、主要な電子健康記録(EHR)ベンダーが合意して採用した標準化方式しか利用できなかったからだ。Fast Healthcare Interoperability Resources(FHIR:迅速な医療情報相互運用のためのリソース)による情報の相互運用性への取り組みのおかげで、Appleは、患者データをモバイルアプリへ取り込む際に多くの企業がこれまで経験してきた、幾つかの大きな障害を克服できるようになった。機密医療情報(PHI)へのアクセスやその管理方法に対してAppleがイノベーションを起こしたことで、患者が各自のヘルスケアデータに関わる方法や閲覧方法が良い方向へと変わり、その道を遮るものはほとんどない。
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Appleは新しいヘルスケアアプリを「iOS 11.3」のプレリリース、β版の一部として発表した。この新しい機能は、特定の加盟病院における各自の健康記録とユーザーを結び付け、その情報をモバイルヘルスケアアプリに送信する。このモバイルアプリは病院のシステムにあるデータを閲覧できる。このモバイルアプリで参照できるデータには患者のアレルギーや生体情報、予防接種、検査結果、服用薬、手術歴に関するデータが含まれている。
「利用者がより良い生活を送れる手助けをするのが目標だ。何年もの間、誰もが欲しかった体験を生み出すために、ヘルスケア関連のコミュニティーと緊密に連携してきた。例えば『iPhone』ですぐに診療記録を容易かつ安全に閲覧することなどだ」とAppleの最高執行責任者(COO)であるジェフ・ウィリアムズ氏は声明で語り、次のように付け加えた。「ユーザーがヘルスケア全般のデータを閲覧できるようにすることで、自身の健康状態をより良く理解し、より健康的な生活を送れるように手助けをしたい」
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