“Excel職人”がいなくなる日に備えて後任を育成する「スキル定義」のコツ:“脱Excel”か“活Excel”か
頼れる“Excel職人”がいなくなる日は来ないでほしいものですが、その日が来たら後任者への引き継ぎが必要です。「こだわりの機能」と「最低限必要な機能」を切り分けて、スキルとツールを引き継ぐコツとは?
重宝されるExcel職人
Microsoft Excel(以下、Excel)の高いスキルを持つ、「Excel職人」と呼ばれるような従業員に、社内のさまざまなExcelツールの開発依頼が集中してしまうのは決して珍しいことではありません。Excel職人に開発を依頼する側にとっては、ところどころに職人的なこだわりがあったとしても、依頼した期日までに要求した通りの、もしくはそれ以上の機能を有するツールを開発してくれるExcel職人は、社内で非常に重宝される存在です。Excel職人にとっても、社内で頼りにされ、途切れることなく依頼が舞い込むような状況は「自己のスキルが評価されている」と感じますし、やりがいにもつながります、一見ウィンウィン(Win-Win)の関係にも思えますが、このようにExcel職人にExcelの開発業務が集中することに、本当に問題はないのでしょうか。
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スキル差の拡大と、Excel職人のこだわりが、後継者の育成を阻む
いくらお互いにWin-Winの関係といっても、その関係が永遠に続くとは限らないものです。企業がWin-Winの関係を維持するために、何かにつけてExcel職人に配慮していて、Excel職人も現状の業務に満足していたとしても、例えばExcel職人が仕事以外の個人的な事情で企業を辞めざるを得なくなる可能性もあり得ます。もしもExcel職人が突然いなくなってしまった場合、Excel職人に依存する状況が長ければ長いほど、その影響は大きなものとなります。
なぜなら、Excel職人と他の従業員のスキル差が開き過ぎてしまうからです。後任者を任命しても、後任者は大したスキルを身に付けていない状態で、Excel職人によって開発されたツールのコードを理解することから始めなければなりません。Excel職人が、いつか引き継ぎをするときのためにツールの仕様書を作成してくれたり、コード内に適切なコメントを残してくれたりしていれば、それほどコードの理解に時間を要することはありません。しかしExcel職人は独力でExcelのスキルを身に付けてきたケースがあるため、このようなプログラマーであれば当たり前ともいえる対応をしないことも珍しくないのです。
また、Excel職人が個人的なこだわりで実装した機能にどう対処するかも問題となります。Excel職人のこだわりは、本来必要な機能以外の箇所で発揮されることが多いものです。Excelシートのレイアウトを複雑にしたり、Excelマクロを実行するためのボタンにデフォルトのボタン画像ではなく個別の画像を用意したりといった、見た目に関するこだわりであれば、それほど大きな問題にはなりません。しかしマクロを使用した付随機能を必要以上に実装している場合もあります。このような付随機能は、ツールを使用する側から見ると便利な機能であることも多く、ツールの評価を上げる要因になります。一方で機能の利点を上回るほど開発工数がかかったり、その機能を実現するためだけにスキルを身に付ける必要があったりするため、後任者の負担を余分に増やすことにつながってしまうのです。
こうした状況に対して、後任者が時間をかけてなんとか前任のExcel職人と同レベルのスキルを身に付け、前任のExcel職人と同様の開発ができるようになったとしても、それは以前の状態を再現したにすぎず、結局はExcel職人が辞めてしまった場合のリスクを企業は抱え続けてしまうことになります。
Excel職人にさせないExcel人材をどう育てるか
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