DeNAが「AWS IoT」を使った配車サービスの裏側を公開:リアルタイムデータ収集処理基盤をAWSで構築
モビリティーサービス(MaaS)事業に取り組むDeNAは、多数のAWS機能を駆使し、配車サービス「タクベル」を開発している。IoTの事例としても参考になる。
自動車やタクシー、バスなどの乗り物を所有せずに、使いたいときだけお金を払って利用するモビリティーサービスの通称「MaaS(Mobility as a Service)」。このMaaSに積極的に乗り出す企業の一社がディー・エヌ・エー(以下、DeNA)だ。ゲームの共通機能開発で培ってきた、アプリケーション間の“差分”を吸収する技術力を強みに、ユーザーが車両やタクシー事業者などの違いを意識することなくMaaSを利用できるよう、利便性に優れたユーザー体験の開発を目指している。
2018年5月に開催されたイベント「AWS Summit Tokyo 2018」では、DeNAのオートモーティブ事業の開発責任者である小林 篤氏が事業の方針を説明するとともに、タクシー配車サービス「タクベル」を例に、そのインフラとして採用したクラウドサービス群「Amazon Web Services」(AWS)の活用について詳しく紹介した。
本事例のポイントは2つ。1つは、自分たちのビジネスドメインに関する開発にリソースを多く割くために、スクラッチ開発を極力減らし、AWSの機能をうまく組み合わせてやりたいことを実現している点だ。次に、IoT(モノのインターネット)の要素を多く含む点も特筆したい。MaaSは、エッジ(末端)側の物理端末とサーバ側のクラウドの両方を組み合わせてシステムを構築する。MaaSだけでなくIoTに取り組む幅広いユーザー企業にとって参考になるはずだ。
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DeNAがオートモーティブ事業で対象とする領域は、車両とつながるサービス全般、すなわちコネクテッドカー(インターネット接続機能を備えた自動車)で利用する付加価値サービスに当たる。車両の開発や制御、自動運転技術の開発などハードウェアに関する領域は自動車(OEM:相手先ブランドによる生産)メーカーに任せ、あくまでも得意領域であるITサービスで勝負する。小林氏は「コネクテッドカーに対し、いかに利便性を加えるかが、われわれにとっての価値」だと説明。車両から受け取ったデータを活用してタクシー事業者やディーラーなどと連携しながら、ユーザーに付加価値の高いサービスを提供する。「車両や事業者の違いを意識せずに、決済やマッチング、検索、需給予測、管理ができる共通機能を作る」と、同氏は方針を語った。
こうした概念を実現したサービスがタクベルだ。タクベルは特定のタクシー事業者に限定せず、タクシーを配車できる。タクシー事業者や車両によってユーザー体験を変えないことがコンセプトだ。小林氏は既存のタクシー配車サービスの課題として「インターネット決済(以下、ネット決済)ができない車両がある」「配車確定から到着までの時間の目安が分からない」といったさまざまな課題を挙げた。タクシー事業者がタクベルを導入すれば、どの車両でもネット決済ができるようになり、配車目安時間も事前に明示することが可能になるので、ユーザーの不便が解消されるという。
そのためにDeNAは、リアルタイムにデータを受け取り、処理をするデータ収集処理基盤や人工知能(AI)技術を活用した需要予測システム、高精度の交通シミュレーターをはじめとした実証実験(PoC)を展開している。特にデータ収集処理基盤が重要だという。今回AWSで構築したのもこの部分だ。
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