テクノロジーを使いこなす企業に必要な文化と組織構造
デロイトが示す、デジタル時代の経営体制「symphonic C-suite」とは?
変革的なビジネスをしたいなら、いずれ縦割りの組織構造を見直さなければならない日が来るだろう。その時、重要な役割を担うのはCIO(最高情報責任者)だ。デロイトが提唱する次世代の経営体制「symphonic C-suite」とは?
テクノロジーの急速な進歩によって影響を受けるのは、業務に利用するプラットフォームやデータストアのサイズだけではない。社内で従業員が一緒に働く方法にも影響は及ぶ。経営幹部の役職にも、今に至るまで徐々に影響が表れている。
将来の仕事は経営幹部チームが大きな変革を実現できるかどうかにかかっているとコンサルティング会社Deloitteは考えている。つまり、経営幹部が縦割りの管理体制から脱して、戦略的な取り組みに基づいて他の経営幹部と簡単に連携できる体制に変われるかが問われる。Deloitteでは、この変革された状態を「symphonic C-suite」(専門家が調和して演奏する交響曲のような、経営幹部のチームワーク) と呼んでいる。
Deloitteの会長兼CEOのジャネット・ファウティー氏は、2018年6月に開催したカンファレンス「EmTech Next」で、「一歩引いて、米国における政府と企業幹部の地位変遷を考えてみる。すると、3段階の変遷を経てきたことが分かる。今は、この3段階目にあたるsymphonic C-suiteに突入しようとしている」と発言した。
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経営幹部と将来の仕事
ファウティー氏は経営幹部の従来の構造を、CEOから明確な命令指示を受ける指揮統制機構と表現した。第一段階(C-suite 1.0)では、経営幹部の地理的な場所が経営に関与する上で重要であることが多かった。CEOに近いほど、強い権限があった。
第二段階(C-suite 2.0)では、職能の専門性と知識の深さに重きを置いた体制になり、現在の多くの経営幹部体制がこの段階に該当する。最高情報責任者(CIO)、最高財務責任者(CFO)、最高マーケティング責任者(CMO)といった経営幹部として採用されたら、「担当分野において最も有能で聡明(そうめい)」であると見なされる、とファウティー氏は述べる。
ファウティー氏によれば、経営幹部の役職名が増殖し続ける原因となっているのが、このように専門性を重視する慣習だという。デジタル最高責任者(CDO)を例に考えてみよう。会社がデジタルビジネス戦略の策定を開始すると、その責任者としてCDOの役割を作ることがある。
だが、CDOの役割は大きなトレンドに対応するための一時しのぎの役割にすぎず、将来の仕事に悪影響を及ぼすというのがDeloitteの見方だ。デジタルであれ、人工知能(AI)であれ、ロボティクスであれ、テクノロジーによってもたらされるのは、もはやバックオフィスの近代化でも、グレードアップでもない。テクノロジーによって、顧客や従業員を奪い合う方法は変化している。
EmTech Nextに登壇したDeloitteの米国人材開発リーダーであるエリカ・ボリーニ氏は次のように話した。「AIやロボティクスは単なるテクノロジーの枠に収まらない。従業員に大きな影響があるため、影響をうまく管理する必要はあるが、それを1つの役職や、1人の担当者に委ねることはできない」
ここで登場するのが、第三段階の経営幹部体制(C-suite 3.0)だ。この体制では、経営幹部チームが全ての分野の説明責任を共に負い、企業が現在直面している課題に共同で取り組む。ボリーニ氏は、重要な存在として、人事責任者、財務責任者、リスク責任者、(当然ながら)IT責任者を挙げた。テクノロジーによってビジネスが受ける影響を管理する能力を経営幹部全体が獲得するうえで、IT責任者の助けが必要となる。
それと同時に、経営幹部は、新しいテクノロジーを活用したり、リスクを管理したり、新しいビジネスモデルを立ち上げたり、雇用/定着の慣習を見直したりするために必要な企業文化と企業構造を確立できる。
人材とテクノロジー
間違いなく、将来の仕事には新しいスキルが必要だ。Deloitteでは、現代の職場は、従業員に継続的な学習機会を提供する方法を見つけるべきだと考えている。「組織的なトレーニングや学習を自身のキャリアの途中で止めてはいけない。継続的に自己改革できる能力は非常に重要だ」(ファウティー氏)
このような戦略は人事の管轄と見なされることが多いが、人事だけではこれを実行する十分な権限がない、とファウティー氏とボリーニ氏は主張する。このようなプログラムを実施するにはテクノロジー専門家や財源だけでなく、戦略が成功するかどうかの信頼性が必要となる。
ファウティー氏は、個人的な例として、自身の率いるチームを「テクノロジー対応」にしようと取り組んでいることを紹介した。この取り組みは全社的な戦略として実施しており、参加者は深い専門知識を持ったIT専門家から、テクノロジー知識のない従業員まで多数に及ぶ。各人のテクノロジーレベルはさまざまだ。それぞれに、ジェネラリストになることを求めたり、テクノロジーに精通することを求めたりしている。
実際、人材とテクノロジーを個別の問題だと捉えずに、これら2つを関連付けて考えられる企業および取締役会は、最新テクノロジーの導入速度が遅くても、高い競争力を得ることができるだろう。
ファウティー氏とボリーニ氏はこれをウサギとカメの話に例えて説明した。性急に最新のテクノロジーを導入すると、テクノロジーが人材と文化に波及効果を及ぼしていることを確認できず、導入が成功かどうかを判断できない。
ファウティー氏は次のように述べた。「当社のクライアントは人材とテクノロジーをどのように引き合わせるべきかを調査し、ビジネスのあらゆる側面に対処する方法を根本的に見直そうとしている。これは人材に関係があることで、間口が広い。デジタル時代の創造的破壊と実用的なテクノロジーの観点から見直すのが、成功の秘策だ」
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