長期サポートを確約
「Amazon Corretto」はOpenJDKディストリビューションの本命に躍り出るか
AWSは、Javaのオープンソース実装である「OpenJDK」の独自ディストリビューション「Amazon Corretto」を発表した。Correttoは、Oracleが配布するOpenJDKよりもサポート期間が長い。
Amazon Web Services(以下AWS)は、Oracleが提供するJavaの無償オープンソース開発環境「OpenJDK」の独自ディストリビューション「Amazon Corretto」(以下Corretto)を2018年11月に発表した。CorrettoはOpenJDKより長期にわたるサポート期間を設定し、AWSを使用する多数のJava開発者への強力な支援を約束している。
Correttoは複数のプラットフォームで利用でき、本番環境に導入できる無償のOpenJDKディストリビューションで、2018年11月時点でプレビュー版として提供されている。OpenJDKは「Java Platform, Standard Edition」(Java SE)のオープンソース実装だ。AWSがOpenJDKディストリビューションのサポートを無償で継続すると確約したことは、AWS開発者の間でJavaの人気が高いことを示している。
ここでのキーワードは「確約」と「無償」だ。OpenJDK バージョン8に相当するCorretto バージョン8は、本体であるOpenJDK バージョン8のサポート期間を超える4年以上の長期サポートが予定されている。これによりOpenJDKは少なくとも4年間の無償サポート期間があることになる。
CorrettoはOpenJDKの“完全な”代替品になり得る
Oracleは、OpenJDK バージョン8の商用ユーザーに対するサポートを2019年1月に終了する。一方で「AWSは少なくとも2023年6月までCorretto バージョン8をサポートする」とブログで述べるのは、AWSの主席オープンソーステクノロジストであるアルン・グプタ氏だ。
Correttoは、OpenJDKで提供されない機能(有償のデバッグツール「Java Flight Recorder」など)を使わないのであれば、全てのJava SEディストリビューションの完全な代替品となるように設計されている、とグプタ氏は説明する。例えばコマンドラインオプションの実行から、パラメーターのチューニング、モニタリングまで、従来のシステムと同じように動作するという。
AWSは数千の自社サービスの本番環境でCorrettoを使用しており、パフォーマンスやスケーラビリティに対する要求を満たすべく、頻繁にCorrettoへパッチを適用している。AWSはこうしたパッチや改良を、バグ修正プログラムやセキュリティパッチとともに、四半期ごとのアップデートを実施する予定だ。
AWSはCorrettoの各リリースで、Java実装が仕様を満たしているかどうかを確認する検証キット「Java Technical Compatibility Kit」(TCK)を使い、Java SE標準との互換性を保証する。Corretto バージョン8は2018年11月現在、AWSが提供するクラウド環境「Amazon Elastic Computed Cloud」(Amazon EC2)で稼働するLinuxイメージ「Amazon Linux」のバージョン2、Windows、macOSで利用できる。2019年1~3月に正式提供が開始され、その際にはUbuntuとRed Hat Enterprise Linuxでも利用可能になる見込みだ。
OpenJDKコミュニティーに大きな追い風
Java バージョン8は広く採用されているリリースである反面、多くのユーザーがそれより新しいバージョンへのアップグレードをためらっている。こうした新しいリリースには、物議を醸している不安定な「モジュール機能」が加わっているからだと、Sun MicrosystemsでJavaの開発をリードしていた一人であるジョシュア・ブロック氏は語る。同氏はカーネギーメロン大学ソフトウェア研究所の教授を務めており、Javaコミュニティーで精力的に活動を続けている。OracleによるJava SEの実装である「Oracle JDK」は、「Oracle Binary Code License Agreement」という形態でライセンスが提供されているが、これはプロプライエタリライセンスであり、オープンソースではない。
Java バージョン8のオープンソースディストリビューションを提供し、それらのアップデートを約束している企業は他にもある。例えばJava関連の技術を扱うAzul SystemsはOpenJDK実装「Azul Zulu」を提供している。だがAWSが多大なリソースを投入し、4年間のサポートが確約されたCorrettoは、大きな存在となるだろう。
「AWSの取り組みは、Javaに未来を賭けている多くの人にとって、大きな助けになるのではないか」(ブロック氏)
「Correttoは、OpenJDKが本番用の有力なランタイムだというメッセージを後押しする」と、ロンドンを拠点にするJavaのコミュニティーLondon Java Communityの共同代表であるマーティン・バーバーグ氏は語る。同氏は、Javaアプリのパフォーマンス分析およびモニタリングツールを提供する企業jClarityのCEOを務めている。「多くの保守的な組織が、今回のAWSの動きを見てこう言うだろう。『IBMやRed Hatだけでなく、AmazonもOpenJDKを使っているなら、もう心配は要らない』」(バーバーグ氏)
AWSは、OpenJDK実装「AdoptOpenJDK」を管理する団体AdoptOpenJDK Foundationと協力し、同団体のスクリプトやノウハウを利用した。WindowsおよびmacOSインストーラの不具合を解決した他、工程を増やすことでテストプロセスを改善したと、バーバーグ氏は語る。同氏は、パッチの開発や寄贈についてAWSが力を入れることも期待している。
AdoptOpenJDKは、AWSを含むOpenJDKベンダーと手を組み、断片化に対する懸念を軽減する取り組みを進めてきたと、バーバーグ氏は説明する。例えばAdoptOpenJDKは、6万種類以上のテストに対応したオープンソースのテストスイートやテストパイプラインを備える。任意のバイナリをこれらのテストにかけることが可能だ。こうしたテストが、全てのOpenJDKベンダーで共通する品質基準の基礎になる可能性があるという。
「Corretto」という名前は、イタリア語の「caffe corretto」に由来する(英語では「corrected coffee」となり、これは直訳では「修正コーヒー」)。caffe correttoは、エスプレッソにグラッパか類似の蒸留酒をワンショット加えたイタリアの飲み物を指す。伝統的に、漁師などの労働者が一日の重労働の前に飲んでいたものだ。AWSはCorrettoにより、Java開発者にささやかな「軌道修正」を提案しているのではないかと、ブロック氏は指摘している。
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