ワイン醸造業者が出した答え【後編】
ワイン醸造所がオンプレミス回帰でストレージも刷新 譲れなかった条件とは?
ワイナリーのPalmaz Vineyardsは、いったんオンプレミスからパブリッククラウドに移したワイン発酵プロセス監視システムのインフラを、オンプレミスに戻した。ただし単純に以前と同じ構成に戻したわけではなかった。
米国のワイナリー(ワイン醸造所)Palmaz Vineyardsは、「TensorFlow」などのオープンソースの機械学習ライブラリを利用して、ワインの発酵プロセスを監視するシステム「FILCS」(Fermentation Intelligence Logic Control System)を独自に開発した。同ワイナリーは当初、PROMISE Technology製のストレージシステムを使って、オンプレミスでFILCSのインフラを構築していた。FILCSが生み出すデータ量が膨大だったため、拡張性のあるパブリッククラウドへの移行を進めたが、高額なコストとネットワークの遅延が問題になった。そこでインフラをクラウドからオンプレミスに戻すことにした。
Palmaz VineyardsのCEO(最高経営責任者)を務めるクリスティアン・ガストン・パルマス氏は、オンプレミスにインフラを戻すに当たって、ある問題に直面した。オンプレミスに導入していたPROMISE Technologiesのストレージシステムが、データのバックアップを効率的に取得する機能を搭載していなかったことだ。「ストレージシステムを導入する際は、この点が重要だとは思わなかった」(パルマス氏)。
PROMISE Technologiesのストレージシステムは、ディスクの冗長性を確保するRAID(Redundant Array of Independent Disk)を構成するための機能は備えていた。だがバックアップ取得に活用できるデータのレプリケーション(複製)機能は搭載していなかった。パルマス氏は再びストレージシステムを調査し、NetApp、QNAP Systems、Synologyの製品を検討した後、NAS(ネットワーク接続ストレージ)としてSynologyの高負荷環境向けオールフラッシュストレージシステム「FlashStation」(FS)シリーズを2台と、中規模環境向けラックマウント型ストレージシステム「RackStation」(RS)シリーズを3台購入した。
Palmaz Vineyardsは自らの主要データセンターにFSシリーズ、データのアーカイブ用の拠点にRSシリーズを導入した。両拠点の接続にはダークファイバー(通信事業者が敷設した光ファイバーのうち、未使用のもの)を使用した。FSシリーズに格納するデータのバックアップにSynologyのバックアップソフトウェアを導入し、RSシリーズのバックアップにはVeeam Softwareのバックアップソフトウェアを導入した。
IOPS性能だけじゃない、ストレージシステム選定の決め手は
パルマス氏はストレージシステムの見直しに当たってIOPS(データの読み書き)性能の高さを重視した。その中でSynologyのストレージシステムを選定したのは、運用管理が簡単で、最も扱いやすかったからだという。Synologyのストレージシステムの導入はパルマス氏自身でできるほど簡単だった。「企業向けの大規模なハードウェアを導入するには、専門のスタッフを雇う必要があるのではないかと不安だった」と同氏は振り返る。
オンプレミスに新たにストレージを導入したものの、Palmaz Vineyardsは完全にパブリッククラウドから離れたわけではなかった。オンプレミスの主要データセンターには過去7日分の日次バックアップのコピーを保存し、それより古い一年分のバックアップデータはアーカイブ用のストレージシステムに格納する。さらに古いデータは、Amazon Web Services(AWS)のアーカイブ用ストレージサービス「Amazon S3 Glacier」の仮想テープライブラリ(VTL)に保管している。VTLはディスクを仮想的にテープドライブとして活用する仕組みのことだ。同ワイナリーは、VTLに約280TBを超える長期保管用のデータを格納しているという。
「生み出すのに苦労したデータを削除するのは間違っている。削除したら永遠に戻らない」とパルマス氏は語る。「データを保管する方法はある。当ワイナリーにとって、こうしたデータはずっと必要なものだ」
このようにしてパルマス氏はストレージシステムとバックアップの問題を解決した。だが災害復旧(DR:ディザスタリカバリー)計画については自信を持てずにいる。主要なサーバで障害が発生したときには、バックアップ拠点で仮想環境を構築して運用を継続する必要があると同氏は話す。この仕組みによって、FILCSは主要データセンターで障害が発生してもデータの記録を継続できる。だが高度な機能を使うための処理能力は失ってしまう。
Palmaz Vineyardsは災害に対処するためのワークフローは用意している。だが「洗練されたものではない」とパルマス氏は明かす。「正直に言うと、一度もテストしたことがないため、機能しない恐れもある」
パルマス氏は今後の計画について「DRよりも主要データセンターの機能とデータバックアップに投資したい」と語る。災害に備えるには冗長性が欠かせない。ただしだが冗長性を確保するには、ハードウェアの設置スペースとコストが余分に必要になる。それよりも「設備一式をアップグレードしたい」というのが同氏の考えだ。
機械学習ライブラリに関する調査も終わっていないとパルマス氏は語る。同氏は最近、Appleの機械学習フレームワーク(特定の設計思想に基づくライブラリなどのソフトウェアやドキュメントの集合体)「Core ML」を使用してFILCSのプロトタイプを作成した。このプロトタイプでFILCSの処理能力が向上するかどうかを評価する計画だという。「これは機械学習ライブラリの戦いになる」と同氏は話す。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
ワイン醸造業者が出した答え
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
事例
[株式会社ラクス] どうすれば「変革を楽しむ組織」になれるのか? 事例に学ぶ、未来への一歩 -
製品レビュー
[デル・テクノロジーズ株式会社] 変化するサイバー脅威に備える、これからのストレージの選び方 -
事例
[サイボウズ株式会社] 受注約1.5倍と年間2万3000時間超の業務時間を削減、日機装に学ぶDX実践術 -
製品レビュー
[サイボウズ株式会社] 人材不足にどう挑む? ものづくり太郎が語る、製造現場でのAI活用成功の鍵 -
市場調査・トレンド
[グーグル・クラウド・ジャパン合同会社] 金融機関はAIエージェント導入でどう変わる? 7つの変化から19の事例まで解説
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
RAGで「データをAIに送る」運用が限界を迎えている理由
-
2
迫る“データセンターの危機” 「液冷」への移行は避けられないのか?
-
3
Microsoft 365侵害企業の9割はMFA導入済み 1002人調査で見えた盲点
-
4
「収入ゼロの恐怖」におびえながらも正社員に戻らない? フリーランスのリアル
-
5
村田製作所が1000台のサーバをAWSに移行 キンドリルの「AIOps」でどう変わる?
-
6
なぜストレージ不足は長引くのか? 77%が「12〜18カ月続く」と予測
-
7
通話録音の個人情報を自動で無音化 専用端末を無償貸与
-
8
「Windows 10 Mobile」でスマホOSの地殻変動が起きるこれだけの理由
-
9
セキュリティ担当者“試練の1週間” 「PHP」脆弱性と認証局の失態が同時発生
-
10
「技術屋」で終わらないために 情シスが今取るべき認定資格5選
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
「IT史に名を残すシステム障害」8選
-
2
本当に使える「会議翻訳ツール」を見極める4つの選定基準
-
3
有識者が語る、中堅中小企業に求められる最新のサイバーセキュリティ対策とは
-
4
パスワードレスへの移行で失敗しないためには? 導入・運用上の注意点を解説
-
5
10G回線の真価をフルに享受するには? 導入前にチェックしたいポイント
-
6
自社のセキュリティ対策は大丈夫? 自己診断リストで対策の優先順位が分かる
-
7
Microsoft 365のメールセキュリティ、3つの“死角”と追加で検討すべき対策とは
-
8
「テスト内製化&自動化」事例集:ディー・エヌ・エーなど9社に学ぶ実践のコツ
-
9
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
10
ランサムウェア攻撃“究極の対策”はこれだ
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー